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2017年9月 4日 (月)

自由診療で行われる、「いわゆる免疫療法」にはまる人々

このところ各方面で利用者が増えていると言うことでしょうか、ネットで癌治療と検索すれば必ず出てくる治療法が悪い意味で注目されるようになってきています。

「夢の治療法」「副作用なし」 怪しい免疫療法になぜ患者は惹かれるのか?(2017年9月2日Buzzfeed)

手術、抗がん剤、放射線ががんの3大療法として知られるが、これに近年、「第4の療法」として期待が高まっているのが患者の免疫に働きかける「免疫療法」だ。しかし、免疫療法には、治療効果が科学的に証明されたものと、明らかになっていないものがある。
だが、効果が証明されていない「免疫細胞療法」などの免疫療法が日本では高額な自由診療で提供され、広く宣伝されている。それに患者が飛びついてしまうのはなぜなのか。BuzzFeed Newsは、効果不明な免疫細胞療法を受けて亡くなった、すい臓がん患者の遺族に話を聞いた。【岩永直子 / BuzzFeed Japan】

告知の時からこじれた主治医との関係

静岡県磐田市に住み、膵臓がんの患者・家族会「パンキャンジャパン」静岡支部長を務める石森恵美さん(55)が、中学校校長だった夫、茂利さん(当時57歳)の異変に気づいたのは2010年5月のことだ。夜、風呂上がりに着替えていた夫の皮膚が異様に黄色くなっているのに驚いた。
本人に痛みなどの自覚症状はなかったが、翌日行ったかかりつけのクリニックで「深刻な病状だと思う」と告げられた。その翌日には紹介された地元の大きな総合病院に即入院。精密検査を受け、入院3日目には肝臓や十二指腸にも転移した末期のすい臓がんと告知を受けた。
(略)
当時、すい臓がんには2種類の抗がん剤しかなく、1種類ずつ使っていく治療方針が決まった。二人の息子はまだ中学1年生と受験を控えた3年生。子供達には病状を伏せ、告知された日の夜、自宅に帰った石森さんは、一人インターネットで「すい臓がん 末期」などの言葉を検索し、何かできることはないか必死に探した
(略)
風水や「遠隔気功」も試した。そして、ネット検索で上位にあらわれる免疫療法を調べ始めた時、偶然、テレビのワイドショーで効果が証明されていない「免疫細胞療法」が「夢の治療法」として紹介されているのを見た。
「番組では医師も登場して効果があると話していました。紹介されていたクリニックをネットで検索すると、ホームページに効果があったというがん患者の事例が掲載されています。すい臓がん患者は一人しか挙げられていなかったのですが、『でも一人は治ったんだ』と都合よく受け止めました」
(略)
効果はなくても、後悔はしていない

夫が通った免疫細胞療法は、患者から血液を採取して免疫細胞を培養し、がんを狙い撃ちする機能を強化して体に戻し、がん細胞を攻撃させるとうたうものだった。臨床試験を行って効果が証明された治療ではなく、保険も適用されていない
クリニックの医師は、「数十回分は培養した免疫細胞を注射することができます」と説明したが、結局、体調が悪化する方が早く、3回しか打つことはできなかった。3回でも合計約300万円。途中から、石森さんも「これは効果がないだろう」と薄々気づいていたが、「後悔はしていない」と話す
「夫は免疫療法のクリニックに行くのを楽しみにして、帰る時はいつもニコニコしていました。こうした怪しい免疫療法を批判する医師は、『そんなお金があったら世界一周旅行でもしたらいい』とよくおっしゃるのですが、患者や家族が求めているのは、普段と変わらない日常が続くこと。免疫クリニックは医師から受付の女性まで皆、夫の日常を支えるという姿勢を見せてくれました
(略)
絶対に人には勧めない治療 押しとどめるために何ができるか

夫が亡くなって7年。石森さんは、免疫細胞療法について「効果はない」と冷静に判断し、相談に来る患者や家族に絶対に勧めることはない
悪徳商売をやっているからせめてもの罪滅ぼしに優しく対応をしようという医師もいるでしょう。支払えなくなった患者に、『もうやることはないから出て行って』と見捨てたという話も聞きます」
しかし、高額な治療だからこそ、患者は自分たちなりに納得の上で選んでいるという。なぜ科学的に根拠があり、その時点で最善と評価されている「標準治療」より、そちらを信じてしまうのか。
今、冷静になって振り返ると、その頃は、突然末期のがんと宣告され、「抗がん剤治療だけでは不安。もっと治療を受けたい」という焦りや不安があった。そして、今、石森さんが治療の相談に乗っているすい臓がんの患者や家族も、そうした不安から、「上乗せの治療」「特別な治療」を懸命に探すという。
「『もしかしたら自分にだけは効くかもしれない、ここでできることを全てやらないと後悔する』と藁にもすがるのが患者の心理です。主治医が反対するだろうからと内緒でやる人もいますが、すぐに決断できずに私たちのように主治医に相談する人も多い。その不安に主治医が応えてくれなかったら、患者や家族はよそに救いを求めてしまう」
そして、石森さんは、患者が怪しい免疫療法に流れていくのを押しとどめるためにまず、国が効果の証明されていない治療に規制をかけることが必要だと考えている。さらに、主治医や医療者が患者や家族の不安に寄り添うことが大事だと訴える。
(略)
がんの薬物療法を専門とする日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之さんのもとには、免疫細胞療法に何百万円もつぎ込み、病状を悪化させて駆け込んでくる患者が後を絶たない
「科学的根拠のない治療で患者さんから貴重な時間や金を奪い、心身にダメージを与える行為はもはや医療ではなく、医師としての倫理観に欠けた人体実験であり、詐欺的な商売です。保険がきかないのは効果がないからで、効果があると主張するなら臨床試験で証明してから行えばいい。臨床試験なら患者の自己負担は原則ありませんから、高額な費用を支払わせて行うことがいかに問題かわかるはずです」と強く批判する。
こうした状況に対し、日本臨床腫瘍学会は昨年12月、「がん免疫療法ガイドライン」で効果のある免疫療法とそうでないものを明示した。がん対策情報センターも、がん情報を提供するサイト「がん情報サービス」で、「免疫療法、まず、知っておきたいこと」「免疫療法、もっと詳しく知りたい方へ」を公開し、患者が惑わされないように情報提供を始めている
(略)
患者に届くコミュニケーションとは?

ここ数年、根拠のない免疫療法の相談が増えたという卵巣がん体験者の会「スマイリー」代表の片木美穂さんも、「標準治療は臨床試験で効果が証明された最善の治療ですが、言葉の響きから『並みの治療』と捉え、お金さえ出せば他にもっと良い治療があるのではないかと考えるのが患者の心理です」と指摘する。
そして、そんな心理状況にある患者に対し、科学的根拠を数字で示して理論で納得させることは難しいと片木さんは言う。
「患者は『大勢の誰かにとって良い治療』を求めているのではありません。『私にとって良い治療かを考えてくれていますか?』と主治医に問い、自分にとって最善と感じられた時に治療に納得します。医師は、完治ができない状況であっても、『目の前にいるあなたのことを考えていますよ』というメッセージを患者に伝えてほしい」と願う。

しかし一見真っ当な医療情報を掲載しているかのようなサイトでも、まともな治療法と並んで当たり前のように免疫療法を併記している辺り罪が深いと言えますが、投資について説明されたサイトに当たり前のようにネズミ講が掲載されていればどうなのかで、中には確かに儲かる人もいる!と言われて納得出来るでしょうか。
話がややこしいのはこのところ超高価な抗癌剤として話題になっている新薬(免疫チェックポイント阻害剤)なども(広義の)免疫療法と呼ばれていると言うことなのですが、この方々が行っているのはそれとは全く異なる免疫細胞療法と言うものなので混同してはいけませんね。
免疫細胞療法の方は30年も前から行われながら、未だに何ら効果が立証されていないものですが、一応は真っ当な施設でも研究的に行われているものの、さすがにこうした施設では病勢進行など標準的治療の対象とならない患者だけを相手に行っているようで、信仰などが救済になりにくい日本ではこれはこれで有りなのかも知れません。
他方で市中の小さなクリニックなどで行われているものは大抵がかかりつけ病院での治療と並行して実施するスタイルですが、問題なのは記事にもあるように病勢進行やお金が尽きたなどの理由で、結局最後には放り出されてしまうと言う点で、かかりつけ医からすれば無責任に思えるのも当然でしょうね。
もともと命に関わる大病の治療を行うのですから何かあって当たり前なのですが、治療中に体調が悪化したり何かトラブルが起こった場合きちんと対応してくれるかと言う点は十分確認しておくべきで、少なくとも「何かあった場合はかかりつけに行って」などと無責任なことを言う施設で治療を受けるべきではないでしょうね。

この種の効果の全く証明されてはいない治療法は様々にあって、特に一部で見られるような治療とも到底言いかねるようなものに引っかかる人も少なくありませんが、何ら役には立たないと知っているはずなのに溺れるものはついつい藁をも掴んでしまうものなのでしょうか。
それでも免疫療法などは比較的真面目に行われている場合も多く、やっている医師本人がこれは効果があるはずだ!と信念を持ってやっていることならばまだしもですが、中には高い治療費を取ることだけが目的ではないかと言う詐欺紛いの施設もあると言うのですから穏やかではありません。
興味深いのはこうした施設はテレビ等マスメディアも動員して大々的な宣伝を行っている場合もあると言うことなのですが、番組内容はスポンサーに大きく依存するとは言えテレビ局等も道義的社会的な責任を問われないで済むものなのか、疑問に感じる人も少なくはないようです。
もともと医療法による厳しい広告規制もあって真っ当な医療機関は宣伝などしていないもので、内容に多大な疑問符がつく宣伝紛いの番組でもしょせんテレビだから信じる方が馬鹿なのだと言うことなのか、命に関わる重大な病気であるほど正しい知識に基づいて医療を受けていただきたいものです。

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コメント

患者から「主治医を替えてくれ」と言われたら素直に要望に応じたほうがお互いに幸せになれると思う。

投稿: JSJ | 2017年9月 4日 (月) 08時51分

本人家族が納得してるならまあいいのかなって気も。
ガラクタのツボを高い金で買わされるのに比べたら…

投稿: ぽん太 | 2017年9月 4日 (月) 08時52分

>本人家族が納得してるならまあいいのかなって気も。

よくはないですね。詐欺師の養分になるって事は次の被害者作成の為の資金源を提供する事に他ならないわけですから…。

>ガラクタのツボを高い金で買わされるのに比べたら…

まるっきり一緒かと。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年9月 4日 (月) 09時36分

一番怖いのは、標準的な治療により長期生存が期待できる患者さんがこういうのにだまされて命を縮めることです。
ただ、医者の立場としてはこの手のあやしい治療を受けたい患者さんを説得するのって疲れるだけなんですよね・・・説得すればするほど悪者になる感じで。

投稿: クマ | 2017年9月 4日 (月) 11時00分

記事中にある膵癌を始め標準治療で相応に目に見えた効果も得られるようになってきたので、将来的には効果がはっきりしない疑似治療は淘汰されていくのではないかと期待しています。
ただ癌に限らず根治不能で余命の限られた疾患に対する対応は、結局のところ各個人の価値観の問題に帰結すると言う気もするので、どのような結論であれ正しく十分な情報を得た上での判断であることを願うばかりですね。

投稿: 管理人nobu | 2017年9月 4日 (月) 12時08分

https://wired.jp/2017/08/31/alternative-medicines-toll-on-cancer-patients-death-rate-up-to-5x-higher/

それでもやる奴は単なるアホか自殺志願

投稿: | 2017年9月 4日 (月) 22時36分

医療費と年金と介護費が削減できて社会全体にとってはいい事だと思いますよ。
ただし説得するフリをするのと相手をするのとカルテを詳しく書くのが面倒ですけどね。
無駄な時間は省いて他の患者さんに使ってあげましょう。

投稿: | 2017年9月 4日 (月) 23時17分

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