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2017年9月11日 (月)

膀胱炎で一刻も早い専門病院での診察を求め病院を駆け巡る患者

良くも悪くもありがちなシチュエーションではあると言うのでしょうか、読売新聞に先日掲載されていたのがこちらの記事ですが、御覧になったでしょうか。

お粗末な受付対応 東京都葛飾区 主婦 59(2017年8月29日読売新聞)

 84歳の義母がぼうこう炎の症状を訴えた。総合病院での診察を望んだので、付き添った。あいにくその日は休診。翌朝出直したが「診察は午後。急ぐなら系列の別病院を」と紹介され、30分車を飛ばした。診察券を作るなどして待っていたが、またも「診察は午後から」。受付が新人で「教えるのを忘れた」そうだ。

 連日の猛暑。義母はつらそうだった。結局、別の専門病院を訪ねた。気さくで親切な医師に、義母は明るい表情になった。最初から、こちらにすればよかった。

まあしかし急ぐなら系列病院にとわざわざ案内するくらいですからそちらの診療時間を知っていてしかるべきだと思うのですが、この辺りはタイトルにあるようにお粗末な受付の対応であったなと言う気がしますね。
一方で多くの人が気になった様子なのが別に重症でも何でもなく、単に膀胱炎症状を訴え飛び込みで総合病院を受診する、そして特に急ぐようでもない症状であるのに病院のハシゴをしてでも専門病院に行きたがると言う、一市民の受診行動の是非でしょうか。
ただ多忙を極める医療現場から見ると「そんなものそこらの町医者にかかれば30分で終わっていたものを」とリソースの無駄遣いのように思ってしまう行動ではあるのですが、医療の中の人においてもこうした行動を是とする声が未だにあるようです。

日病会長、「医療続けられるのか」と危機感 診療報酬改定、機能転換など会員懸念(2017年8月29日医療維新)

 日本病院会会長の相澤孝夫氏は8月28日の定例記者会見で、「2018年度は大きな曲がり角の同時改定といわれ、下手をすると病院を閉じなければいけない、あるいは大きく機能を変えなければいけないような事態になるのではないか、今までやってきた医療を続けていけるのかという意見が上がってきている」と述べ、診療報酬のマイナス改定や、地域医療構想をはじめとした病棟、病床機能の見直しなどによって経営や先行きへの不安を訴える会員が多くいるとして危機感を示した。

 相澤氏は、そうした事情を抱えているところに「医師の働き方改革」の議論が加わり、さらに不安が大きくなっていると指摘。日本の病院では当直医が救急患者に対応することが現実に行われているが、その場合に当直ではなく超過勤務となって手当を支払わなければならず、また休みを与えるためには医師をさらに雇用する必要がある。相澤氏は「今の経営状況の中で超過勤務手当を出せ、もっと医師を雇えということになると、経営が全くできないという意見もある」と述べるなど、会員病院の苦境を訴えた。

 このような状況の中、「保険証1枚でどこでも自由に病院に行って診療を受けられるような、安心で安全な医療を守れるのかということも含め、病院長たちにとって将来像が見えなくなっていると強く感じている」との問題意識を明らかにし、国や病院だけでなく、受診行動の面など国民も含めた議論をしていく必要があると述べた。

何と言いますか医師の働き方改革議論を全くの逆風としか捉えていないらしい辺りに、この種の経営団体のトップらしい発想だなとは感じるのですが、この調子ですと超過勤務手当を出すことももっと医師を雇うこともしないで済ませたいのが本音なのでしょうね。
それはさておき、ここで注目すべきは「保険証1枚でどこでも自由に病院に行って診療を受けられるような、安心で安全な医療を守れるのか」と言うコメントで、日病としては受診の自由を金科玉条として考えているのでしょうね。
一方でそうした自由が「今までやってきた医療を続けていけ」なくなってきている大きな要因の一つになっていると思うのですが、特に昨今医師の超過勤務解消が急務である中で、いつでも好きに受診出来る自由を担保していては医療現場は保たないでしょう。

医療評価の三要素と言われるコストとアクセス、クオリティについて、現状では程度の差はあれ相応にコストに配慮しながらクオリティは保ちたいと言う考えが主流だと思いますが、そのために何が犠牲になるのかと考えた場合アクセスの制限が現実的な解決策だろうと言うことです。
その方法論も様々なものが議論されていますが、昨今開業医などから地域の外来医師は過剰であると言う声が非常に増えていることから、英国のNHSほど厳密ではなくとも地域の開業医を初診担当兼ゲートキーパーにすると言う考え方もあり、実際国はこうした方向で開業医の総合診療医化を推進したいようです。
一方で冒頭のケースのように患者がいきなり病院窓口に来た場合応召義務との絡みもどうするのかと言う問題も指摘されていますが、少なくとも軽微な症状で専門病院に飛び込み受診するような患者には高い特別料金を取ってもいいのではとも思うのですけれどもね。
ひと頃から選定療養加算の絡みで大病院への紹介状を書いてもらうだけのために開業医を受診する患者が出現するようになってきていますが、患者の受診行動をうまくコントロールするには病院窓口だけでなく病診連携での各段階で系統的・戦略的な価格設定も必要になるのでしょう。

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コメント

風邪って何科に行ったらいいんだろう

投稿: | 2017年9月11日 (月) 09時50分

地元の内科辺りを標榜してるホームドクター

投稿: | 2017年9月11日 (月) 12時24分

興味深いことに医者の金儲け主義を批判する傾向が強いアメリカンジョークにおいても、風邪の特別な治療などない(治療は無駄)と言う点でコンセンサスがあるように思います。

ある男がつらい風邪にかかってしまい、かかりつけの医者に診てもらいにいった。医者は、家に帰り風呂に入り、すぐに出て家の窓を全開にし、裸のまま部屋の中を吹き抜ける風に身をさらしなさい。と助言した。
「でも先生」男は抗議した。「そんなことしたら肺炎になってしまう」
「大丈夫」医者は言った。「私は肺炎なら治せますから」

投稿: 管理人nobu | 2017年9月11日 (月) 19時43分

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