« 今日のぐり:「小谷食堂」 | トップページ | 珍しい医師主導の待遇改善活動、出発点であっさり潰される »

2017年9月25日 (月)

「医師は労働者ではない」と言うトンデモ主張、全く相手にされず終了

先日紹介しましたように、今後の医師の労働環境を考えていく上でいわば叩き台を打ち出すことを期待されている厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」が開催されているのですが、なかなか興味深い流れになっているようです。

「医師は労働者」は自明、「高プロ」も対象外(2017年9月21日医療維新)

 厚生労働省は9月21日、第2回「医師の働き方改革に関する検討会(座長:岩村正彦・東京大学大学院法学政治学研究科教授)」を開き、今後の議論の進め方や論点を整理した。10月~12月にかけて、「医師の勤務実態について」、「勤務環境改善策について」、「働き方と医療の質や安全性、健康との関係」などについて議論し、2018年1月に中間整理をまとめて「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」の議論に反映。
 以降は具体的な医師の働き方改革について検討し、2019年3月を目途に、最終的な報告書を取りまとめる予定(第1回会議は『医師の時間外労働の上限規制、年明けにも中間整理』、医師需給分科会は『勤務医・開業医の地域別の多寡、「指標」で見える化』を参照。資料は、厚労省のホームページ)。
 21日の議論では、医師は労働者か、一部専門職を残業代支払いなど労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の対象かなどの質問が構成員から出た。これに対し、岩村座長は、「労働基準法上の労働者であることは争う余地がない」としたほか、「医師の仕事は『高度』で『プロフェッショナル』なもの」としたものの、勤務形態などから高プロには該当しないと回答した。今後、これらを前提に議論が進められる見通し

 厚労省が提示した主な論点は次の通り。

1.医師の勤務実態の正確な把握と労働時間の捉え方
・医師の勤務実態の精緻な把握
・労働時間への該当性
・宿直業務の扱い
・自己研鑽(論文執筆や学会発表等)や研究活動の扱い

2.勤務環境改善策
(1)診療業務の効率化等
・タスクシフティング(業務の移管)、タスクシェアリング(業務の共同化)の推進
・AIやICT、IoTを活用した効率化
・その他の勤務環境改善策(仕事と家庭の両立支援策等)の検討
(2)確保・推進策
・医療機関の経営管理(労働時間管理等)の在り方
・勤務環境改善支援センター等の機能強化
・女性医師の活躍支援
・その他勤務環境改善のための支援の在り方

3.関連して整理が必要な事項
・医師の応召義務の在り方
・病院の機能、医師の偏在、へき地医療等、適切な地域医療提供体制の確保との関係
・医師の労働時間の適正化に関する国民の理解

4.時間外労働規制等の在り方
・時間外労働規制の上限の在り方
・医療の質や安全性を確保する観点からの勤務の在り方
・適切な健康確保措置(休息・健康診断等)の在り方
(2017年9月21日医師の働き方改革に関する検討会資料より)
(略)
 社会医療法人ペガサス理事長の馬場武彦氏は、政府が成立を目指している改正労働基準法に含まれる、一部専門職を残業代支払いなど労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」については議論の対象にしないのかと質問。これについては、岩村座長が「高プロは職務の特殊性ゆえに勤務時間を自分で決められる制度だ」と指摘。本検討会の議論の対象は勤務医であり、診療時間、勤務時間は医療機関側で決定され、それに従う必要があるとして、「高プロは本検討会の議論にはなじまないと理解している。医師の仕事は『高度』で『プロフェッショナル』なものではあるが、それと労働時間の制度は別のものではないか」として退けた。
 また、福岡県済生会福岡総合病院名誉院長で日本病院会副会長の岡留健一郎氏は、「資料は医師が労働者であることを前提としているが、それに根拠はあるのか。医師は病院管理者のためでなく、患者のために働いている」と質問。
 「医師は労働者か否か」に関しては、医療界からは否定的な意見も表明されているが(『「医師は労働者か、抜本的議論を」横倉会長』、『勤務医は労働者」との決めつけ、乱暴すぎる - 邉見公雄・全自病会長に聞く◆Vol.2』などを参照)、これに対しては早稲田大学法学学術院教授の島田陽一氏が「勤務医は労働時間が決まっている。労働者かどうかという議論は閉めていただきたい」と反論。岩村座長も、勤務医と病院が時間外手当の支払などを争う裁判を例に、「病院側の代理人弁護士ですら『勤務医が労働者である』という点については、勝つ見込みがないため争わない。労基法上の労働者であることは争う余地がない。『患者のため』という意識は問題にならない」と述べた。

またぞろ日病あたりが医師は労働者ではない(だから労基法等に制約されず無制限に働かせて良い)などと無茶なことを言い出したものの、あっさりと一蹴されてしまう展開が笑えるのですが、ここで明確に法学畑から労働者であると断言されていることの意味は小さくないように思えます。
しかし「議論は閉めていただきたい」「病院側の代理人弁護士ですら(略)(勝つ見込みがないため争わない」とまで言われると言うのは、まともな有識者同士の議論の中では普通出て来ない強い発言で、よほどに論外な妄言だと認識されていると言うことでしょう。
それだけ一部の医療関係者の主張が世間離れした非常識なものであったと言うことですが、今後この考え方をベースにして医師の労働環境を議論していくと言うことになるのであれば、違法な労働環境が横行している現状は当然抜本的改善を要すると言う結論になりそうですね。

今回厚労省が示した論点の中で気になるのが「3.関連して生理が必要な事項」の部分で、特に応召義務の在り方などは日病などを始め医師の労働規制に反対している方々が必ずその根拠として挙げる部分であり、議論の聖域化していいものではありません。
この点で必要であれば法改正、少なくとも法律の解釈を変更することも求められていると思うのですが、反対勢力の立場として別に法的義務がなければ患者は見ないと言っているわけではありませんので、別に義務として課す必要性はないと言う点では一致出来そうです。
患者側からすれば応招義務がなくなれば救急たらい回しも増えるのでは…などと思われそうですが、たらいを回した医師や医療機関が何ら応招義務違反を問われていない点を見ても、この種の問題が応招義務とは全く無関係な話であることは明白ですよね。
この点で今後国民の理解を得ていく前提として、そもそも応招義務とは何なのかをまず明示する必要性がありそうですが、医師の側も健康保険法119条なども含め実質的に診療を拒否出来る場合はいかなるものかをきちんと把握しておく責務があると言えるでしょう。

|

« 今日のぐり:「小谷食堂」 | トップページ | 珍しい医師主導の待遇改善活動、出発点であっさり潰される »

心と体」カテゴリの記事

コメント

ここで出てきた法律家の先生方のような説明を我々が患者さんにしたら、説明義務違反に問われそうなほど説明が足りないような気がします。
実際には子供に諭すような説明をされたのを記事では省略されたのかもしれませんが。

投稿: クマ | 2017年9月25日 (月) 08時59分

特別扱いしろなんてぜいたくは言わないからせめて他の業界並みってわけにはいかないですかね。

投稿: ぽん太 | 2017年9月25日 (月) 09時05分

この場合より大きな説明義務が課されるのは、医師は労働者ではないと言う常識はずれの主張をする側ではないかと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2017年9月25日 (月) 14時03分

>医師は病院管理者のためでなく、患者のために働いている

病院へいけよ!アタマの方のな!!!

>特別扱いしろなんてぜいたくは言わないからせめて他の業界並みってわけにはいかないですかね。

何を弱気な…。医師は最強の労働者なのですからすべての労働者の範たる働き方を示す義務があります!すなわち、フツーに順法闘争なさればよろしいですしまたそうせねばなりません!!!!!

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年9月25日 (月) 16時36分

電通社長ですら違法な残業だったと認めていると言うのに

大手広告会社「電通」が社員に違法な残業をさせた罪に問われている事件の初公判が開かれ、山本敏博社長は、「間違いありません」と述べ、違法な残業だったことを認めました。電通は、新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が過労のため自殺したことをきっかけに捜査を受け、検察は非公開の略式の手続きで電通を起訴しましたが、裁判所の判断で正式な裁判が開かれました。
9月22日 11時14分NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170922/k10011151821000.html


投稿: | 2017年9月25日 (月) 17時37分

医師は患者のために働いてるって、他の労働者は顧客のために働いていない、学校の先生は生徒のために働いていないという、酷い選民意識。

法学側から詳細な説明がなくとも、自明。医師は労働であるという証明は必要なく(憲法に職業の貴賎なしの規定、労働法制に除外規定なし)、証明責任(及び最高裁まで争って確定させる義務)は労働者であることを否定する側に一義的にある。

投稿: おちゃ | 2017年9月26日 (火) 14時34分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/65831392

この記事へのトラックバック一覧です: 「医師は労働者ではない」と言うトンデモ主張、全く相手にされず終了:

« 今日のぐり:「小谷食堂」 | トップページ | 珍しい医師主導の待遇改善活動、出発点であっさり潰される »