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2017年9月 8日 (金)

国立循環器病センターの労使協定が斜め上過ぎると話題に

このところ働き方改革と盛んに喧伝される中で、先日は愛知労働局から月80時間を越える労働を強いていた運送会社が実名公表されましたが、国としてもこの問題に真剣に取り組むと言う意志の現れであると受け取れる話ですよね。
そんな中で先日報じられ幾ら何でも非常識すぎるだろうと話題になっていたのがこちらのニュースですが、まずは誤記載ではないかと多くの人が目を疑ったという記事をそのまま引用してみましょう。

国循「残業300時間まで」の労使協定 過労死基準3倍(2017年9月7日朝日新聞)

 臓器移植や救急など高度医療を担う国立循環器病研究センター(国循、大阪府吹田市)が、勤務医や看護職員の時間外労働を「月300時間」まで可能にする労働基準法36条に基づく労使協定(36(サブロク)協定)を結んでいたことが、弁護士による情報公開請求でわかった。国の過労死認定基準(過労死ライン)の「月100時間」の3倍にあたる長さで、国循は今後協定内容を見直す方針という。

 府内の主要病院が労働基準監督署に届け出た36協定の開示を、過労死問題に取り組む松丸正弁護士(大阪弁護士会)が国に請求。国循の36協定(2012年4月1日付)では、非常勤を含む勤務医や一部の看護師、研究職ら約700人について、特別な事情がある場合、「月300時間、年間2070時間」まで時間外の労働時間を延長できる(年6回まで)内容となっていた。

 病院側と「労働者過半数」の代表とが取り交わしたもの。ほかの病院は上限100時間前後までの協定が多かった。

 国循は取材に、実際の勤務は「(36協定の上限時間までに)十分余裕はある」と説明。長時間労働の場合は所属長に勤務の分担を求めたり、職員に産業医との面談を勧めたりしているとした上で、「国で議論されている(働き方改革の)内容を踏まえ協定内容を見直す予定だ」と明らかにした。


過労死の看護師の母「悲しみ再び誰かに…」国循労使協定(2017年9月7日朝日新聞)

 国立循環器病研究センター(国循、大阪府吹田市)で月300時間までの時間外労働が許容される労使協定が結ばれていたことに、医療関係者から驚きの声が上がっている。患者に寄り添う医師や看護師の勤務時間は長くなりがち。負担軽減を訴える声が上がっている。

 「娘の死の教訓が組織内できちんと共有されているのか疑問です」。国循の脳神経外科病棟に勤務していた2001年、くも膜下出血で倒れ、亡くなった看護師村上優子さん(当時25)の母加代子さん(67)はそう話す。

 優子さんの死を過労死と認定した08年の大阪地裁・高裁の判決によると、優子さんは患者の世話に加え、勉強会や研修会の準備で日常的に時間外労働を続けていたところに、新人指導係にもなった。

 優子さんの死後、両親は過労死認定と遺族補償を求めて提訴。倒れる前の時間外労働は過労死ラインを下回る月50~60時間前後だったが、1日の勤務を終えて次の勤務が始まるまでの間隔が5時間程度しかない日が月平均5回もあった事情などが考慮され、過労死と認められた。
(略)

ちなみに月300時間の残業をどのようにこなせるものかと多くの方々が計算しているようですが、いずれにせよ睡眠時間以外はほぼ働いているような状況には変わりないので、さすが国循ともなるとこんな環境でも人材が集まるのだなと感心するしかありませんね。
同協定は独法化した2010年から毎年無条件で締結されていたそうで、院内で過労死まで出しているにも関わらずこんな常識外れの労使協定を結んでいたと言うことで、それは進歩的な朝日新聞でなくとも突っ込みたくもなろうと言うものです。
同センターの人事担当者によれば実際に300時間働いているケースはないとのことですが、もちろんこれは残業代の支給対象となる労働時間ではと言う意味でしょうから、新潟市民病院的基準がこちらでも用いられているとすれば勉強会などは労働のうちには入らないのでしょうね。

医師については応召義務などを理由に働き方改革に基づく改正労基法の適用を5年間免除されることになったそうですが、そもそも月100時間と言う過労死レベルの残業が認められる予定であると言うことに違和感を覚える方々も多いようです。
先日は全国医師ユニオンがこうした点に反対する声明を出していましたが、応召義務が理由で真っ当な労働環境が構築出来ないと言うのであれば、時代にそぐわない法律の改正を求めていくべき時期ではないかとも思いますね。
ちなみにアメリカでは過労研修医の起こした医療事故を契機に労働環境の強い規制が敷かれていますが、どの程度の労働時間であればもっとも効率的なのかと言うこともデータに基づいて議論されており、日本においても議論の叩き台として客観的な事実は明らかになって欲しいですね。

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コメント

それにしてもなんで300時間って数字が出たんでしょう?

投稿: ぽん太 | 2017年9月 8日 (金) 07時55分

実態調査してみたら、最大が百時間超過だったらしい。
どんぶり勘定程度の配慮もしてなかった、
そんなこと考えてみることはなかった。
寝耳に水で指摘されて びっくり。
つまり 浦島太郎だった。

そういうのが 労使双方のトップだった。

投稿: | 2017年9月 8日 (金) 12時34分

1ヶ月の全時間から1日8時間を個人の時間として、週40時間の正規労働時間を引くとおおむね300時間ですので、上限300時間あれば院内での活動全てを超勤として加算出来ると言う好意的な?捉え方も出来るようです。

投稿: 管理人nobu | 2017年9月 8日 (金) 13時39分

それじゃ尾鷲の産科医さんですよ。。。

投稿: | 2017年9月 8日 (金) 15時08分

大丈夫
田舎病院と違って仕事には不自由しないから
暇を持て余すことなんてないよ

投稿: | 2017年9月 8日 (金) 15時50分

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