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2017年9月27日 (水)

珍しい医師主導の待遇改善活動、出発点であっさり潰される

医師の懲戒解雇とはあまりない話で、よほどのことをやらかしたのかと思ってしまうのですが、こちらそれが本当によほどのことだったのかどうかが問われていると言う裁判の話題です。

働き方改革に挑む医師が解雇、不当と提訴(2017年9月1日日経メディカル)

 病院の労働環境改善のために過半数代表者選挙に立候補し当選した医師が、代表就任後2カ月で解雇された。医師は不当解雇に当たるとし、地位確認などを求め鹿児島地方裁判所に提訴。8月29日に第1回口頭弁論があり、病院側は争う姿勢を示した。全国医師ユニオンと原告医師らが9月1日、厚生労働省で記者会見して明らかにした。

 訴えたのは、鹿児島県内の医療法人立の慢性期病院(約400床)に勤めていた50歳代の男性医師。2009年6月に同病院と常勤医として雇用契約を結び、勤務歴は8年だった。解雇時の役職は医局長で、労働基準法が定める過半数代表者だった。
 過半数代表者は院内の従業員の代表であり、労基法には、「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」を締結する際、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出し労働者側の締結当事者とする必要がある、と定められている。
 全国医師ユニオン代表の植山直人氏によると、原告医師は、従業員の選挙によって過半数代表に選出された。しかし、就任後約2カ月で病院から解雇されてしまった。被告病院側は、懲戒解雇の理由として8件の就業規則違反を挙げたが、原告医師はその全てを「不当と反論し得る」と主張している。特に原告側が問題視しているのは、被告病院側が指摘した就業規則違反は、全てが過半数代表者に就任する前の事案だった点。「代表就任前に、どれ1つとして懲罰委員会から指摘されたことはなく、代表就任後にいきなり解雇処分となったのは明らかに不当労働行為と言わざるを得ない」(植山氏)。

 会見した原告医師は、被告病院について「認知症や高齢者の神経難病などの診療で、現場は非常に良い医療を行っている。しかし、労働環境の面では改善点が多く、従業者の犠牲の上に成り立っていたのも事実だ。離職者も絶えないことから、労働環境を改めて、まずは離職者のない職場にしたいと思って経営者に改善策を要望してきた。しかし、このようなこと(解雇)になってしまった」などと語っている。そのうえで「今回は逃げない」とも発言し、病院で働く従業員の声が経営者側に認められるまで闘う覚悟を示している。
 植山氏は、今回の裁判について記者会見に踏み切った理由として、こう語っている。「一勤務医の不当解雇にとどまらず、36協定の過半数代表者のあり方、使用者のあり方を含め極めて大きな問題を含むと考える。過半数代表者が使用者によって簡単に解雇されるようでは、労働者側を代表する対等な交渉者とはなり得ず、使用者側の圧力に屈することになりかねない。使用者と労働者の合意を前提とする36協定の存在意義自体が失われかねない」。

「私はパンドラの箱を開けたのです」職場改善求めクビになった医師が、病院を提訴(2017年9月1日BuzzFeed Nwes)

医師や職員の職場環境改善を訴えていた勤務医のAさん(男性・50代)が、職場の「過半数代表」に選ばれた2カ月後に解雇された。男性は「解雇は無効だ」と鹿児島地裁に提訴したとして、9月1日に厚生労働省で記者会見を開いた。
(略)
Aさんは2009年6月、この鹿児島市内の病院に雇われた。Aさんは自身について、「いわゆるフリー医師として、各地の病院を渡り歩いてきた」と語る。
さまざまな職場環境を見てきたAさんは、勤務先の病院の職場環境を良くしようと考えた。そして、2012年9月に医局長に就任したころから、医師の時間外労働の改善や、看護・介護・一般職の賃上げなどを病院側に要求してきた。ただ、Aさんの提案が聞き入れられることは、あまりなかったという。

大きな転機になったのが2017年3月14日、職場の選挙で「過半数代表」に選ばれたことだ。この「過半数代表」は、残業などの取り決め「36協定」を結ぶ際、(職場に組合がない場合に)労働者側の代表として意見を出したり、サインをしたりする立場だ。
「36協定」は会社が従業員に残業をさせる際に不可欠な、労働者と会社側の取り決め。36協定を結ばないまま残業をさせると、それは「違法」となってしまう。
Aさんは過半数代表に選ばれた後、36協定の改定に向けて、ほかの従業員から意見・要望を聞こうとした。ところが、病院はこれを拒否。Aさんが抗議すると、病院は1人5分までなど、厳しい制限を付けてきた
36協定はこうしたやりとりの後、2017年4月20日に結ばれた。
しかし、そのわずか20日後の5月10日、Aさんは会社から就業規則違反を指摘された。そして5月31日、Aさんは「懲戒解雇通知書」を渡されたという。

病院側が挙げた解雇の理由は、たとえば、Aさんが2009年に就職した際に「経歴詐称」をしたというもの。しかし、Aさんは14の勤務先のうち、出向先だった2カ所を省略しただけだと反論する。
また、病院側は「(Aさんが)マスターキーを無許可で持ち出し病院内を2時間徘徊した」とする。しかし、Aさんはそれは業務に使うためで、許可も得ていたとしている。
解雇理由は、そのほかにも5つ挙げられているが、それらは半年〜1年前の出来事で、当時は懲戒されなかったものばかりだという。
(略)
「私にとって一番簡単なのは『こんな病院はいやだ』と言って次の病院に移ることです。私はこれまでそうしてきました。でも、私はもう逃げない」
こうしたことから、Aさんは「解雇は無効だ」として、6月30日に鹿児島地裁に提訴した。Aさんが支払いを求めた金額には、過去2年分の残業代の未払い分、約900万円も含まれている。
「私たち医師はこれまで、当直の残業代を我慢してきました。わざと病院側に残業代を請求しなかったんです。だけど、今回、彼らが一方的に私たちの協調関係を破るようなことをしました。だから、私はパンドラの箱を開けたのです」
BuzzFeed Newsは、病院側にも取材を申し込んでいる。

記事にもありますがこの過半数代表と言うもの、いわゆる労働組合的な活動をする場合にはいなければならないものと定められていて、ざっくり言えば院内労組を結成したと言うに近い状況なのでしょうね。
しかし過半数代表がいない以上三六協定を締結出来ないとなると、この病院は今まで違法残業をさせ放題だったと言うことになるのですが、こうまで公になってしまうと今後労基署も黙っているわけにはいかないのでないかと言う気もしますがどうでしょうか。
記事から得られる情報だけでも色々と考えるところはあるのですが、いわゆるフリー医師としてもすでに数年にわたって医局長を務め、院内各職種に推され過半数代表に就任したと言いますから被雇用者側の支持はあったのでしょう。
こうした場合に雇用者側から解雇を通告されると言うことはあってはならないのはもちろんですが、残念ながら世間一般では必ずしも珍しいことでもなく、医療の世界もこうした世間並みになってきたのかと感慨深くはありますね。

ただ病院とは今の時代医療スタッフからも評価される時代で、外聞の悪いことをして今後大丈夫なのかと他人事ながら心配にはなったのですが、ちなみに調査によれば労組加入の勤務医は10%ほどだと言いますから、かなり少数派ですよね。
聞くところでは院内労組があっても医師は管理職だとして加入を断られたり、仮に加入できる場合も何故か歓迎されない雰囲気があると言いますが、一方で医師に労組など必要ないと言う声も少なくないのも事実ですよね。
この理由として基本的に売り手市場であり、首を切られるような職場で働くつもりがないと言う理由が考えられますが、労組に興味がなくとも労働環境改善の必要がないと考える医師が必ずしも多いわけでもないでしょう。
労組以外の手段に訴えるにしろ、嫌なら辞める以外の待遇改善の道を模索することは悪いことではないのでしょうが、医師が増え好条件の勤務先が次第に埋まってくれば今後考え方も変わってくるのでしょうか。

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コメント

ニュースだけだと病院側が勝てる事例ではなさそうな気がしますが。
表には出ていない「そりゃ首だろ」って問題行動があったのかどうか・・・

投稿: クマ | 2017年9月27日 (水) 08時49分

キャリアはアレだけど一応職員にも支持されてるみたいですからねえ。。。。

投稿: | 2017年9月27日 (水) 11時29分

法律上必要な手続きを行うのに、医局長が代表になりますがいいですかと問われれば、一般には反対する人はそうはいない気もします。
もちろんこの先生がどのような先生かは何とも言いがたいので、単純に職員一同の信望あついのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2017年9月27日 (水) 18時23分

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