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2017年8月21日 (月)

誤嚥のリスクがある高齢者は施設では引き取れませんと言われる時代に?

時々妙なことが問題になるものだなと感じることがあるのですが、先日出ていたこちらの記事にも多くの方々が思わず突っ込んだと言います。

食物を誤ってのみ込む事故死 高齢者施設で続く理由とは(2017年6月28日yahooニュース)

高齢者施設で亡くなった母に本当は何があったのか。愛知県一宮市の自営業、神崎一彦さん(52)は、そこにこだわり続けている。食物を正常にのみ込むことができず、誤って喉頭と気管に入る「誤嚥(ごえん)」。母の死も誤嚥とされたものの、119番通報しないなど施設側の対応が適切だったとは思えないからだ。実は、人生を誤嚥で終える施設の高齢者は決して少なくない。施設でいったい何が起きているのか。いくつかの「誤嚥事故」をたどりながら、高齢化社会の隙間を見た。(本間誠也/Yahoo!ニュース 特集編集部)

「母親の死に際を想像するだけで、寝付けなくなるんです。苦しかっただろう、辛かっただろう、と」。神崎さんは自宅でそう語り始めた。
母の英子さんは愛知県内の特別養護老人ホームに入所していた。異変が生じたのは2014年11月4日夜。神崎さんが駆け付けると、英子さんは心肺停止状態で自室のベッドに寝かされていた。施設の医師がその後、死亡を確認。英子さんは夕食で食べた物を嘔吐し、吐き出したものを誤嚥して窒息死したとされた。73歳だった。
事故はなぜ起きたのか。神崎さんは直後から当時の状況を施設側に何度も尋ねたという。
英子さんは、以前に患った脳梗塞の後遺症で左半身が麻痺したままだった。重度の身体障がい者でもあり、要介護度は最も高い「5」。このランクは、排便や食事も1人ではほとんどできない。脳梗塞は咳や嚥下の反射に関わる神経活動が低下し、誤嚥に結びつきやすいとされる。英子さんも食後や夜間に吐くこともあったという。
事故時、英子さんの食事介助や食後の見回りは適切だったか。なぜ、119番通報して救急搬送しなかったのか。AED(自動体外式除細動器)で心肺蘇生に着手しなかった理由は何か。疑問はいくらでもあった、と神崎さんは振り返る。
神崎さんからの問い合わせに対し、施設側は介護ケアの内容を示した。当日のケア内容を時系列に並べた記録で、紙1枚。「夜勤の職員2人は電話で看護師の指示を受け、口に詰まっていたものを取り出し、酸素吸入を行いました」と言われたが、神崎さんはその説明に納得できなかったという。
(略)
誤嚥事故が刑事事件になった事例も取材した。
長野県安曇野市の特養ホーム「あずみの里」。施設からは、美しい北アルプスを眺めることができる。施設側の代理人、木嶋日出夫弁護士は「この刑事裁判には文字通り介護の未来、将来がかかっています」と切り出した。
その刑事裁判は、2013年末にあずみの里で起きた死亡事故が発端だ。誤嚥による窒息が原因とされ、遺族とは示談が成立済みだった。ところが、施設の女性准看護師が業務上過失致死(注意義務違反)罪で起訴されたのである。食事中の介助や見守りをめぐって、施設職員が刑事罰に問われた前例はない。
起訴状によると、「事件」の概要はこうだ。准看護師は自力でおやつが食べられない入所者の介助に気を取られ、85歳の女性入所者がドーナツを誤嚥したことに気付くのが遅れた。その結果、女性を窒息による心肺停止状態に陥らせ、約1カ月後に低酸素脳症で死亡させたという。
これに対し、木嶋弁護士は「おやつの時間に食堂にいた入所者の数や入所者それぞれの要介護の状態、おやつの配膳・介助を担った准看護師の多忙さ。検察側の主張はそれらを全く無視した内容です」と反論している。

検察側に反論するため、弁護団は当時の関係職員らから詳細な聴き取りを行い、事故時の現場を再現した。その反論のポイントを木嶋弁護士はこう説明する。
「事故当時、食堂には入所者17人が9個のテーブルに分かれて座っていました。17人のうち食事の全介助を必要とするのは2人です。死亡した女性は自力で食事が可能でした」
そこで何が起きたのか。
施設側で現場にいたのは2人。1人は介護職員で、もう1人が起訴された准看護師だ。「介護職員は亡くなった女性の様子をいったん(問題なしと)確認しました。そして(目を離して)、再び周囲を見渡して女性の異変に気付いた。その間、約28秒です
亡くなった女性は自力で食事ができたから、おやつの時も個別の介助を必要としない。そのため、この介護職員も女性の様子を目で確認したのだという。

では、准看護師はどうだったか。食事の介助は准看護師の本来業務ではないが、この日は、人手が足りないことから応援に入ったという。その際、たまたま座ったテーブルに死亡した女性がいた。
「准看護師は(普段と変わらぬ)女性の姿を見て、(何も問題ないため、その女性に)背を向ける形で、別の入所者のおやつ介助に取り掛かりました」。異変に気付いたのは、その約1分後だ。
人手が足りず、フル回転で業務に従事している中、わずか28秒や1分で刑事罰に問われるのでしょうか」
そうした施設側の反論に対し、検察側は公判で「准看護師は一口食べさせては振り返って、死亡した女性の無事を確認すればよかったのではないか」と答えたという。

思いもしなかった准看護師の刑事訴追。あずみの里を運営する社会福祉法人の塩原秀治事務局長は、その衝撃を忘れない。
「書類送検も在宅起訴も大きなショックでした。人手が足りない中、現場は過酷です。互いに支え合って日々の介護に力を尽くしているのに、通常業務の中で起きた事故で刑事責任を負わされるとしたら、施設は立ちゆきません
公判は今年5月現在、証拠調べの前段階で、結審の時期は見通せない。この間、支援の会もでき、全国の介護職員や医療・福祉関係者を中心に無罪を求める署名が約20万筆も集まったという。

介護職員で組織する日本介護クラフトユニオンも公判を注視している。染川朗事務局長は「どんなに手を尽くしても、お年寄りの誤嚥を100%防ぐことは不可能」と話し、続けた。
「介護作業は普通、チームでやっています。1人だけが刑事責任を負わされたら介護現場はやっていけません。普通に食事の介助をしていたのに、誤嚥事故が起きたからといって訴追されたのでは、入所者全員の食事を(チューブを使った)『経管栄養』にしよう、なんてことにもなりかねない。事故を恐れて入所者から食の楽しみを奪うことにもなります」
あずみの里側が「介護の将来がかかっている」という公判。日本社会事業大学(東京都)の壬生尚美教授も、自身の介護職員時代を踏まえ、「これがどうして刑事事件になるのか分かりません。示談も成立しているのに」との疑問を持つ。
「人員の配置基準を満たしていても、大半の施設は深刻な人手不足の中で膨大な介護業務を行っています。それが特養の現実。検察側が主張するように、食事時の利用者の状態把握や見守りを徹底するには、今よりもさらに多い人数が必要になります」
しかし、今の特養ではその実現は不可能に近い、と言う。
「介護の現場がどれほど人手不足の状態にあるか。その中で(利用者の生活の安全に向けて)職員がケアの質を確保するためどれだけ努力しているかを知ってほしいと思います」

この記事の興味深いところとして取材対象であったご遺族ご本人がコメント欄に登場していて、色々とコメントをつけていると言う点なのですが、遺族としては誤嚥云々よりもその後何故救急車をすぐ呼ばなかったのかと言う点を問題視しているそうです。
ただ脳梗塞後遺症で左片麻痺があったと言われれば、まあそれは誤嚥もするだろうと言うしかない状況だったのだろうと思いますけれども、こうした状態の方々にどの程度食事を食べさせるべきなのかと言うことは議論の別れるところだと思いますね。
高齢者の肺炎の8割以上が誤嚥性肺炎と言い、特に脳梗塞後には嚥下機能の低下や嚥下反射の鈍化などからリスクが高まると言いますが、これだけ重大なリスクが潜んでいるにも関わらず行為を継続させると言うのは、一般的には忌避されるべき行為だと思います。

実際に世界に冠たる福祉先進国であるスウェーデンなどでは高齢者に食事介助などしない、肺炎を起こそうが抗生剤投与なども行わないと言い、「寝たきり老人が存在しない国」として進歩的な方々の賞賛を集めていることは知られている通りですよね。
ちなみにスウェーデンにおいても高齢者の栄養摂取に関わる各種ガイドラインがありますが、食事の質や食器の工夫、口腔ケアなどは推奨されているものの、日本のように食事介助などは全く重視されていないようで、当然ながら人工栄養についても極めて抑制的であるようです。
また米国アルツハイマー学会による施設における認知症ケアの推奨によれば、病状が進行し口の中に入れた食べ物を飲み込めなくなった場合栄養補給を中止すべきであり、継続した場合窒息や誤嚥性肺炎を引き起こしかねないとされていて、まあもっともですよね。
そうした実態を知ると日本の介護スタッフが慢性的な人材不足に悩まされ、あまりに多忙を極めているのは事実として、その業務の内容については医学的に妥当なのかどうかの検証は必要でしょうし、妥当でない行為については医学的観点からは中止すべきと言う考えもあるでしょうね。
ただそうした医学的根拠の乏しい行為が漫然と継続されてきた背景には当然ながら社会的なバックグラウンドが存在しているものであり、その是正なり摺り合わせなりをいつ誰が音頭を取って行っていくべきなのかと言うことはなかなか難しい問題であるようにも思います。

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コメント

特養で現状維持はできても機能回復ってムリでしょう。
過剰な期待感があったのだとしたら不幸な行き違いですね。

投稿: ぽん太 | 2017年8月21日 (月) 08時02分

自分の意思を表現できる人の中で、認知症以外の人では、
経口摂取を拒絶した人にはまだ遭ったことがありませんし、
経口摂取ができなくなったときに経管栄養を断った人にも遭ったことがありません。
たぶん偶々遭っていないだけなのでしょうけれど、空腹を認識できる大多数の人にとって空腹は耐え難い苦痛なのではないでしょうか。
人工呼吸器を拒否した人には何人も遭ってきましたが。

投稿: JSJ | 2017年8月21日 (月) 09時16分

化学療法中や癌末期の人にはけっこういますよね>経口拒絶

投稿: | 2017年8月21日 (月) 11時44分

個人的な経験の範囲で言うと、空腹感には血統コントロールよりも胃酸抑制など胃粘膜ケアの方が有効に感じられます。

投稿: 管理人nobu | 2017年8月21日 (月) 13時29分

PPIの使い過ぎも誤嚥肺炎のリスクに挙げられています。管理人様のおっしゃる「胃粘膜ケア」に要る空腹感管理とは、多少の不快感を維持して食欲を減退させるという意図でしょうか。もちろん、皮肉でネタですとも。

投稿: | 2017年8月21日 (月) 19時47分

ケモで経口拒否は嘔気によるものでしょう。ターミナルとは前提が違う。嘔気止めも新薬が出てきているし。

投稿: | 2017年8月21日 (月) 19時50分

最初から他人に介護をブン投げるから何も実情を知らないのだろうな

投稿: | 2017年8月21日 (月) 20時10分

>最初から他人に介護をブン投げるから

それ自体は正解ですがね。先がない寝たきりや認知症老人の介護で子や孫が共倒れとか不毛すぎるしそもそも素人がやろうとするなんてそれこそ介護を舐めてます。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年8月22日 (火) 09時37分

誤嚥性肺炎を繰り返すために喉頭分離手術(喉頭摘出術)を勧めたことがあります。発声できなくなりますが、声よりも経口摂食を希望される人がほとんどでした。食事することは、生存本能の基本なのでしょう。今後、誤嚥をする人は、すべて喉頭分離術をしてから高齢者施設へ、になってしまうのでしょうか。

投稿: oldDr | 2017年8月22日 (火) 13時58分

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