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2017年8月 4日 (金)

国が地域枠医師に対する強力な強制力発揮の方針を公表

医師確保対策と言うものに関して各団体がそれぞれに知恵を絞っているところですが、文科省と並んで公的な立場からこの問題に責任を持つ厚労省によって、先日こんな通知が出たと報じられています。

「6つの医師確保対策」、第7次医療計画の厚労省通知(2017年8月1日医療維新)

 厚生労働省は7月31日、医学部地域枠の入学生は原則として地元出身者に限定したり、医師の配置が把握できるデータベース(DB)の構築など、計6つの柱から成る医師確保対策を盛り込んだ、医療計画に関する通知を都道府県に発出した。2018年度からの第7次医療計画の関連通知は2017年3月31日付で出されていたが、医師確保対策は盛り込まれておらず、社会保障審議会医療部会などで議論、了承された内容を今回の通知で追加した(『医学部地域枠は「地元出身者に限定」、例外も』を参照)。
 医学部地域枠の入学生については、修学資金を貸与する都道府県の地元出身者を原則とし、特に修学資金貸与事業における就業義務年限については、自治医科大学と同程度の就業義務年限(貸与期間の1.5倍)として、地域医療支援センターが当該医師のキャリア形成プログラムを策定する。社保審医療部会では、他の都道府県の大学医学部に地域枠を設ける場合の扱いが議論になった。通知では、こうしたケースも認めるものの、卒業後の臨床研修は出身地の都道府県で受けるほか、勤務地や診療科を限定するキャリア形成プログラムとする。
 都道府県は、地域医療対策協議会において、これらの点を踏まえた医師確保対策を議論、第7次医療計画で地域医療支援センターの事業内容を定めることになる。

【地域医療支援センター事業等の記載にすべき事項】
(地域枠およびキャリア形成プログラムについて)

ア:大学所在地都道府県の出身者が、臨床研修修了後、その都道府県に定着する割合が高いことを踏まえ、地域枠の入学生は、原則として、地元出身者に限定。特に、修学資金貸与事業における就業義務年限については、対象者間のばらつきを全国で是正するため、同様の枠組みである自治医科大学と同程度の就業義務年限(貸与期間の1.5倍)とし、これを前提として「イ」に規定するキャリア形成プログラムを策定

イ:地域枠医師の増加等に対応し、医師のキャリア形成が確保された医師確保が進められるよう、以下の点に留意して、キャリア形成プログラムを必ず策定
・医師のキャリア形成に関する知見を得ることや、重複派遣を防止するなど医師確保の観点から大学(医学部・附属病院)による医師派遣と整合的な医師派遣を実施することができるよう、キャリア形成プログラムを策定する際には、大学(医学部・附属病院)と十分連携すること。
・大学所在都道府県における臨床研修修了者は、臨床研修修了後、大学所在都道府県に定着する割合が高いことから、原則として、大学所在都道府県において臨床研修を受けることとするよう、キャリア形成プログラムに位置付けること。
・医師が不足する地域や診療科における医師を確保するという医学部定員の暫定増の本来の趣旨に鑑み、キャリア形成プログラムにおいて、勤務地や診療科を限定すること。
(略)

(医師の勤務負担軽減について)

ウ:医師の勤務負担軽減に配慮した地域医療センターの派遣調整等。
・グループ診療を可能にするよう、同一の医療機関に同時に複数の医師を派遣したり、他の病院から代診医師を派遣するよう斡旋したりすること。
・へき地以外でも代診医師の派遣や遠隔での診療が進むように支援すること。
・地域医療支援センターが医師を派遣する医療機関における勤務環境改善を進めるため、例えば次のような方法により、地域医療支援センターと医療勤務環境改善支援センターが連携すること。
 派遣前:医療勤務環境改善支援センターが、派遣候補となっている医療機関の勤務環境を確認し、勤務環境の改善につながるような助言等を行うこと。
 派遣後:地域医療支援センターが派遣医師から継続的に勤務環境等について聴取し、課題等を把握した場合は、医療勤務環境改善支援センターが勤務環境を再度確認し、その改善につながるような助言等を行うこと。

(へき地の医師確保について)

エ:地域医療支援センターによるへき地医療支援機構の統合も視野に、へき地に所在する医療機関への派遣を含めたキャリア形成プログラムの策定など、へき地も含めた一体的な医師確保を実施。

(その他)

オ:詳細な医師の配置状況を把握できる新たなデータベースの医師確保への活用

カ:地域医療支援センターの取り組みの認知度向上や医師確保対策の実効性向上のため、SNS等の活用や、医師確保対策に若手医師の主体的な参画を促すなど、若手医師へのアプローチを強化

前段では医学部地域枠学生の取り扱いについてかなり踏み込んだことが書かれているのですが、特に「キャリア形成プログラムにおいて、勤務地や診療科を限定すること」と明記され、勤務地だけではなく診療科制限にまで踏み込んだ点が注目されます。
これが配慮するだとか努力目標だとか言うものではなく、「以下の点に留意して、キャリア形成プログラムを必ず策定」と書かれていることから、地域枠に進んだ以上少なくとも御礼奉公期間については勤務地や診療科が勝手に指定されると言うことになりそうですね。
実際にはある程度選択肢が提示される中から選ぶ余地があるものなのか、それとも成績等の客観的指標なりを元に機械的に指定されることになるのかは判りませんが、全く本人に選択の機会がないとなればかなり厳しい内容と言えそうです。
これに対して後段は僻地医師確保策や医師配置状況の把握などやや散漫な内容に感じられますが、これについてはやはり地域枠上がりの医師以外に対しては強制配置や診療科制限などの強制力が発揮しがたいと言う現実的な側面もありそうです。

今春発表された文科省の調査によれば、ペナルティ覚悟で地域枠の義務を放棄した人は3%程度であったそうで、義務も承知の上で入学したはずの制度に対して多いのか少ないのか微妙なところですが、うち2/3ほどは奨学金等をきちんと返済して卒業したそうです。
そうした場合契約違反に問うのはなかなか難しいのでしょうが、この対策として厚労省では学生にではなく卒後の雇用先となる病院に対してペナルティを科すことを検討しているとも報じられていて、これはこれでよく考えたものだと思いますね。
他方で先日旭川医大が来たるべき医師過剰時代に備えて地域枠を削減すると発表したそうですが、興味深いのはこれに対して北海道だけでなく国も定員を維持するよう説得を続けた結果、医大側も折れて削減枠を幾らか減らすことにしたそうです。
面白いのは同大ではこの削減分に相当する定員で新たに海外での活躍を目指す国際医療人枠を開設するそうで、医学部定員自体は減るわけではないのですが、道や国にとって強制力も発揮出来ず海外雄飛してしまう人材などお呼びではないと言うことなのでしょうね。


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コメント

でもまあ納得ずくで受験してるのだろうから……

投稿: ぽん太 | 2017年8月 4日 (金) 08時46分

ぽん太さまへ
納得づくとは言えど、契約書を作成した時点では未成年であることがほとんどでしょうから、
そのあたりでこのようなペナルティありの労働契約が有効なのかかなり疑問ではあります。
奨学金返せばそういうの無いよ、ってことにしておいた方が各方面が平和であるかと。

投稿: クマ | 2017年8月 4日 (金) 09時10分

たしか島根の地域枠は出願前に、県内のへき地医療機関で適性評価を受けた上で、
出身地のつまり島根の中のどこぞの市町村長等による面接を受ける形だったような。
これだけ地縁で雁字搦めにされれば、クールな現代っ子もそうは脱藩できないんでしょうね。

>契約書を作成した時点では未成年

選挙権取得も18からになりましたから
その辺りを根拠に擁護するのはチト。。。

投稿: | 2017年8月 4日 (金) 10時44分

↑そもそも公序良俗に反する契約は無効かとw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年8月 4日 (金) 11時59分

自治医大は医学生の時に貸与された形になっている数千万円を返せば義務年限は消失することになっていますから、
それより貸与される額の少ない地域枠が奨学金を返してもだめって話になるのはおかしな話だと個人的には思います。
返済したらだめなら最初から奨学金は貸与型では無く給付型にすればいいのに。

投稿: クマ | 2017年8月 4日 (金) 13時00分

基本的には自治医大を今まで問題視されることがなかったので、今になって地域枠だけ問題視するのは片手落ちと言われるかも知れません。
ただ自治医大はそうしたものとして募集をかけてきたのに対して、地域枠がどの程度説明の上で募集されているのかが争点かなと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2017年8月 4日 (金) 13時29分

今現在働いている医者を強制配置しなければそれでいいと思ってしまいます。
もう老害の仲間入りですかね。

投稿: | 2017年8月 4日 (金) 19時17分

人間の医療と医師では、医学部新設したり含め、是非は別として
この記事のように偏りや不足について議論を数十年に渡ってやっているのに、
昨今問題になっている獣医師はどうするつもりなんですかね。
全く同じ構造の問題なのに、
師会は足りると強弁して金銭的に癒着した議員を使って工作を行っているだけで、
地方の深刻な不足に対しては知らんぷりで全く対処しない。

もし足りると強弁して獣医師を増やさない決定をするなら、
この記事に書かれている以上に権利侵害的な強制的配置を実施しないといけなくなる。
つまり、医師でもあるような地方配置のという意味だけでなく、
小動物ペットを診る獣医師に、大型産業動物を強制的に診させねばならない。
「足りている」というのはそういうことだ。

多すぎる薬剤師、完全に不足する獣医師、その間ぐらいの医師と、
それぞれがどのようになるか、楽しみですね。
余っても足りなくなっても瀕死になるので、
どの職種も最終的には地獄絵図になるんでしょうが。

投稿: | 2017年8月 9日 (水) 18時52分

獣医学部新設なんて言いだそうものならマスコミに寄ってたかって潰されるぞw

投稿: | 2017年8月 9日 (水) 19時32分

>もし足りると強弁して獣医師を増やさない決定をするなら、
>この記事に書かれている以上に権利侵害的な強制的配置を実施しないといけなくなる。

ならないよ。あんた基本的人権って知ってる?
なんで、定数問題と人権制限がリンクすると思うのでしょか?

投稿: | 2017年8月10日 (木) 08時53分

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