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2017年7月18日 (火)

国が医療費抑制の成功報酬で自治体間の競争を煽る

都道府県が地域内の医療提供体制を計画的に整備していく地域医療計画の策定が原則的に昨年一杯が年限とされていましたが、今後はいよいよ計画に従って各地で独自の医療提供体制が整えられていくと言うことになります。
その結果これまで国民皆保険制度の建前であった、全国どこでも同じ医療を同じように受けられると言う非現実的な前提が制度上も崩壊することになる理屈ですが、当然ながら自治体間での差異と言うものも嫌でも目立ってくるようになるはずです。
特に医療費削減とも絡めて全国の平均的水準から各地域の医療コストが高いか低いかと言ったことが明らかになれば、それに従って国が何らかのペナルティーなりで是正してくると言う予想は以前からあったのですが、先日こんなニュースが出ていたことが注目されます。

医療費抑制で1千億円配分 国保支援、成果に応じ(2017年7月7日共同通信)

 厚生労働省は6日までに、国民健康保険(国保)の運営主体が来年4月に市町村から都道府県へ移るのに合わせ、医療費抑制の成果などに応じて来年度、都道府県と市町村に500億円ずつ、計1千億円を配分して財政支援する方針を決めた。自治体側に5日付で通知した。

 加入者1人当たりの医療費が低かったり、メタボリック症候群の該当者を減らしたりした自治体に報奨としてお金を配ることで、医療費抑制と住民の健康づくりを促す狙い。医療費の地域間格差の是正にもつなげる。

 都道府県分の500億円の内訳は(1)年齢構成を調整した後の1人当たり医療費が全国平均よりも低い、または前年度より減らした場合に150億円(2)市町村への指導状況や糖尿病などの重症化予防の取り組みに応じて150億円(3)管内市町村のメタボ健診実施率や、ジェネリック医薬品(後発薬)の使用割合などにより200億円。これまでの成果や来年度の取り組み態勢などを考慮して傾斜配分する。

 運営移管後も保険料収納や住民の保健事業を担う市町村分の500億円については、医療費抑制への取り組みに加え、保険料収納率なども評価し配分を決める。

 運営移管に当たってはこの1千億円とは別に、急激な保険料上昇の緩和などに約800億円を交付する。

 国保は低所得の加入者が多く2015年度の実質赤字総額は約2800億円に上る。保険給付費は約9兆5500億円、加入者は約3200万人。

国保と言うものは加入者の割合に地域差があり、失業者や高齢者なども含まれることから地域の高齢化率や経済力などとも無関係ではなく、この点で全国一律で比較して判断すると言うことは良いのかどうかと言う議論はあるでしょう。
現在の支出に対して幾ら幾らを減らしましたと言う削減率で判断すればいいと言う考え方もあるでしょうが、この辺りは炭酸ガス削減の議論と同じですでに努力して目一杯削減してきた自治体ほど損をすると言うことになりかねませんよね。
ただいずれにせよ国が各自治体の医療費削減の努力を横並び比較で競争させようとしているとは言える話で、今後どこまでこうしたアメとムチによる医療費削減努力の半強制化が進んでくるものなのかと興味深いところです。

実際のところ地域医療にどれほどの違いが出てくるものなのかと言うことも気になるのですが、健診実施率や予防医療の推進、ジェネリック使用の促進などについては特に誰が困ると言うことでもなく、さらに強く推し進められていくと言うことになろうかと思います。
問題は全体の3割と言う小さくない部分を占める医療費削減と言う結果に対するいわば成果報酬の部分ですが、具体的にどこをどのようにと言う細かい指定がなく結果だけを問われると言うことになれば、自治体によってその方法論に差が出るのは当然でしょう。
思いつくところでも高齢化率の高い地域における高齢者医療の在り方などはたちまち議論になりそうですが、他方で例えば小児医療費削減や現役世代への給付の抑制などについては、このところの世論の風潮を見る限り難しそうな気がします。
また地域の実情の差から、補助金導入で医療費地域間格差が縮まるのかどうかは何とも言いがたいとも感じるのですが、成績上位の地域は成績下位の地域に比べ改革への問題意識も強くないでしょうから、長期的に見ればある程度平均化する方向で機能するのかも知れませんね。

当然ながらどこの方面にも配慮してしまえば現状維持で何ら削減の余地がない、むしろ増額の要求ばかりと言うことになるはずですが、いずれにせよ長期的に見て副次的に発生してくるだろう現象として自治体毎に医療提供体制に差が付いてくるだろうと言う点があります。
とある県ではお年寄りの入院には厳しい制約があるのに対して、隣の県ではむしろ早期入院早期退院を推進していると言ったケースが考えられますが、この場合当然ながら自治体の境を越えてより有利な地域へ患者の自主的移動が発生するだろうと予想できますね。
現在でも首都圏などでは医療リソースの乏しい自治体から豊かな自治体への越境搬送が日常的に行われていますが、さらにこれが進んだ場合こうした越境患者の医療費は計算に加えるべきなのかなど、今までとは異なった問題も発生するかも知れません。
いずれにせよ制度として赤字が続いている以上早急に何とかしなければと言われればその通りなので、日本においても米国などと同様に保険者の顔色をうかがいながら、医療経済学的な観点も勘案しての医療が行われる時代が迫っていると言うことになるのでしょうか。

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コメント

お金がいらないとこじゃなくてたくさんお金がかかるとこに出すべきじゃないの補助金って

投稿: やよい | 2017年7月18日 (火) 10時22分

憎まれ役を自治体に押し付けた形とはいえ、実質的に国が医療の制限をかけたわけなので、今後自治体間あるいは保険者間で医療格差が広がった場合、一言あるべきだと考える市民も出てきそうです

投稿: 管理人nobu | 2017年7月18日 (火) 12時07分

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