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2017年7月10日 (月)

構造的に破綻が見えてきた介護業界のその後

人それぞれに思うところはあるのだろうと思うのですが、先日ちょっとした話題になっていたのがこちらのニュースです。

「介護ミスで母親が死亡」 遺族が特養老人ホーム提訴へ(2017年7月6日朝日新聞)

 埼玉県ふじみ野市の特別養護老人ホームに入所していた高齢女性が介護ミスで死亡した、などとして、遺族が近く、施設の運営法人に約4千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こす。遺族は「同様の事故を減らすため、裁判で原因や背景を明らかにしたい」としている。

 亡くなったのは中野小夜子さん(当時86)。認知症を患い、2015年1月から特養「上野台の里」に入所。事故時は要介護度4で、座った状態を保つのも困難だった。原告となる中野さんの息子2人や代理人弁護士によると、事故は15年9月7日の夕飯時に起きた。中野さんは、食事を飲み込んだ後に吐き出す動作をくり返し、病院に救急搬送されたが、10月23日に死亡した。死因は食物が肺に入った場合に起きる「誤嚥(ごえん)性肺炎」と診断された。

 施設側が県に出した事故報告書では、食事介助の際に上半身を起こすベッドの角度を過度に垂直に近づけたことや、食事を早く食べさせ過ぎたことを認めている。遺族によると、謝罪され和解金の提示も受けたというが、「入院中の見舞いにも葬儀にも来ず、誠意を感じなかった。命を扱う事業者として責任感を持ってほしい」と提訴を決めたという。

 施設長は朝日新聞の取材に、「個人としても法人としても、取材は受けない」と回答。同市は取材に対し、救急搬送の直後に施設から報告があったことを認めたが「詳細な報告内容は言えない」としている。

当時の状況は記事からは何とも言いかねるものがあるにせよ、進歩的なメディアとして内外に知られる朝日新聞が大々的に取り上げていることからしても余程に事情があったのだろうと思うのですが、いずれにせよお亡くなりになった方のご冥福をお祈りするばかりですね。
この種の民事訴訟とは法律ではなく当事者の意志に基づいて起こされるものであり、その結果を度外視するならばどこの誰がどのような訴えを起こしても自由であるのですが、一般的に弁護士に相談が持ち込まれた段階である程度の専門的判断が働くのだそうです。
その意味でこうして裁判にまで持ち込まれたと言うことでそれなりに勝算があると言う判断が働いたと言うことなのでしょうが、関係者一同の証言や当時の状況などに基づいて司法の判断がどのようなものになるか知りたいところですね。
さて、このところ全国的に非常に求人倍率が高まっていて、それこそ何十年ぶりと言うほど雇用状況が改善しているのだそうですが、その一方で一部業界では慢性的な人手不足が続いていて、特に運送業や介護業界などはたびたび社会問題にもなっています。
介護業界などは3Kだ、いや4Kだとその過酷な労働環境が取り沙汰されることが多く、いざ勤め始めても皆すぐに辞めてしまうとも側聞するのですが、今やそれ以前の段階で介護業界離れが深刻化していると言うことが先日報じられていました。

ケアマネジャーなどの資格、志望者減 待遇に見合わない責任や負担 「介護の質」低下懸念(2017年8月7日産経新聞)

 高齢者が増える中、介護保険を利用する人のケアプランを作るケアマネジャーや介護福祉士を目指す人が減っている。平成28年度の資格試験の受験者や合格者は減少、人気低下が鮮明になった。研修時間増など制度変更が要因とされるが、背景には待遇に見合わない責任や負担の大きさがある。いずれも現場で中心的な役割を担うだけに、なり手が減れば介護の質の低下を招きかねない。

 東京都の高野清美さん(44)は、5年間務めた在宅介護でのケアマネジャーを辞めた。今は訪問介護事業所で、サービス提供の責任者を務める。
 ケアマネジャーは介護保険開始と同時に制度の要として創設された。比較的待遇が良いため、ヘルパーや介護福祉士が目標にするケースも多い。
 ケアマネジャーとしての高野さんの仕事は多忙を極めた。月1回の利用者宅への訪問に加え、関係者を集めたケア会議の開催、医師や看護師、事業者や家族との調整。書類作成も多く「利用者のために自分がいるのか、書類のためにいるのか分からなかった」。
 時間に関係なく呼び出され、夜に子供を置いて利用者宅に駆け付けたことも。「医療の知識やコミュニケーション能力も求められ、自分には無理だ」と離職を決めた。

 20万人を超えたこともあるケアマネジャー試験の受験者は28年度には12万4千人となり、前年度より約1万人減少。合格者は1万6千人、合格率13・1%と過去最低だった。
 日本介護支援専門員協会の能本守康常任理事は「必要な実務研修の時間が44時間から87時間とほぼ倍になったことが大きい」とみる。「仕事を長期間空けて自費で受講するのは難しい」ためだ。
 ケアマネジャーの仕事には多くの課題がある。独立しても経営が難しいため、特定の事業者に所属し、その意向に沿ったプラン作成を求められる。利用者から「何でも屋」と思われ、無報酬で動くことも
 施設関係者からは、ケアマネジャーなしでプランが作れるのではという「不要論」まで浮上。「国が進める在宅医療は医師主導。将来が見えない」といった声も上がる。

 一方、28年度の介護福祉士国家試験の受験者も7万6千人と前年度から半減。合格者は5万5千人で4割減った。受験資格に原則450時間の実務者研修が加わったためとされる。日本介護福祉士会の石本淳也会長は「受験者が本当に介護福祉士を目指す人に絞られたためで、これを機に質を上げなければならない」と話すが、根底には処遇問題が横たわる。
 「介護保険が『介護』をつぶす」の著書がある元ヘルパーの桜井和代さんは「介護現場で働く人を大切にしてこなかったつけだ」と指摘する。
 「資格を取っても待遇が同じなら、受験しなくなるのは当然。ケアマネジャー不足は質の低下につながり、利用者や家族にしわ寄せがいく。処遇を良くしなければ人材は逃げていくばかりだ」と話している。

 厚生労働省が発表した平成28年の賃金構造基本統計調査によると、ホームヘルパーの平均月収(残業代などを除く)は21万3000円、施設職員が21万5000円、ケアマネジャーは25万5000円。全産業の平均は30万4000円で、介護関連職種の低さが目立つ。男女の賃金格差もあり、女性はそれぞれさらに低水準にとどまる。

これだけどこの職場でも人材を求めている時代に低賃金で労働が厳しく、昼夜の別もなく働かされるではどんなブラック職場かと言う話なんですが、ある意味将来の保障がある資格職であるにも関わらず目指す人間自体が減少しているのは問題です。
その背景に待遇の悪さが知れ渡っているのももちろんですが、待遇が良く介護職の「あがり」の地位とも目されるケアマネージャーですら全産業平均の2/3の低賃金と言うのですから、「命を扱う事業者として責任感を持ってほしい」と言うならそれ相応の見返りを求められるのも当然でしょう。
この点で医療などと同様に全国一律の公定価格での仕事を強いられる介護保険と言うものの存在が良いのか悪いのかですが、利用車目線で見れば安い定額料金で利用出来るのですから基本良いこととして、将来的に人材不足がさらに深刻化した場合どうなるかです。
公的で平等なサービス利用がどんどん困難になり、かつ質的にも満足いくものではなくなった場合、多少の追加負担をしてもよりよいサービスを求めたがる人が必ず出てくるはずで、介護業界もいずれ付加価値の多寡により二極化が進んでくる可能性があります。
同様に公定価格である医療の場合治療成績など一定の客観的指標もありますが、介護の場合客観視が難しい顧客満足度での評価となる局面が大半であって、それ故進歩的な方々も一概に高負担高付加価値サービスの存在を否定はしにくいでしょうね。

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コメント

安い給料で責任だけ天井知らずじゃやってられんわな
入所のときに家族のキャラで優先順位考えないと

投稿: | 2017年7月10日 (月) 11時27分

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