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2017年7月 5日 (水)

臨床も医療費の無駄遣いを考慮しながら行われる時代に

何も考えずに読み流せば当たり前の話と思う方も多いのでしょうが、先日こんなニュースが出ていたことをご存知でしょうか。

高い抗がん剤使いません 効果同じなら安い薬を 日赤医療センター決定(2017年7月3日共同通信)

 日本赤十字社医療センター(東京)は30日までに、5月に保険適用が決まった抗がん剤「ザルトラップ」について、治療で原則使用しない方針を決めた。同じ効果で約半額の既存類似薬があり、割高な新薬を使うメリットはないと判断した。薬価が高いことを理由に医療機関が使用を差し控える決定をするのは異例

 がん治療薬「オプジーボ」など超高額新薬が保険財政に与える影響が問題化したことから、厚生労働省は薬価制度の見直しを進めている。同センターは医療費の抑制につなげる狙いで、今回の決定は国の制度見直し議論に一石を投じそうだ。

 ザルトラップはフランスの製薬大手サノフィが開発した点滴薬で、国内販売は今春始まった。一部の大腸がんが対象。100ミリグラム約7万9千円で、日赤医療センターによると、体重60キロの人が半年間使うと約278万円かかる。同じタイプの抗がん剤では「アバスチン」が先に保険適用されており、効果も副作用も同様で費用は約150万円と約半額で済むという。

 ザルトラップを巡っては2012年、米国のがん専門病院が「アバスチンより2倍以上高い」として使用しない方針をニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、話題を呼んだ。米国ではその後、ザルトラップの薬価は引き下げられた。

 日本では公的医療保険に「高額療養費制度」があり、治療費が一定額を上回ると患者の自己負担が大幅に軽減される。

 高額な新薬が次々に登場していることから、日赤医療センターは昨年、抗がん剤について「効果と副作用が同じなら薬価が安い方を使う」との院内方針を決めていた

このザルトラップ(アフリベルセプト ベータ)は既存のアバスチン(ベバシズマブ)やサイラムザ(ラムシルマブ)などと同様腫瘍の血管の新生を抑えるタイプのVEGF阻害薬と言われるもので、類薬で有りながら価格が高いのであれば安いものを使うのが当然、と言う考え方もあるかと思います。
ただ薬の効果は類薬であっても全く同じではないのもまた事実で、「同じ成分同じ効き目」のはずのジェネリック(後発医薬品)も未だに効きが変わるからと変更を拒否する先生もいらっしゃるくらいで、厳密に同じと言えるかどうかは疑問ではありますね。
ただ本質的にはそこまで大きな差はないのだろうとも思うのですが、それならそれで何故類薬でこうまで顕著な価格差を設定するのかで、このところ話題になることも多い厚労省の薬価算定の在り方にも疑問符が付きかねない話でしょう。
加えて今回の件で興味深いのはこの方針変更によって別に医療提供側にはさしたるメリットがないにも関わらず、医療費削減と言ういわば対極的視点からこうした話が決まったとされている点ですが、今後同様の方針がどこまで医療現場に広がっていくものかですね。

先日は日経の調査で医師の実に9割が国民皆保険制度による医療は維持できないと感じていると言う報道が出ていましたが、新薬が出るたびに薬価はどんどん高くなっていくわけですから、いずれ医療費の伸びは負担可能な範囲を超えるのは自明の理に思えます。
この医療費高騰問題は日本のみならず世界各国共通の課題と言えますが、先日の日本医学会のシンポジウムでは高価でありながらさほど役には立たない過剰医療問題が議論され、「賢明な選択」に基づく「過不足のない医療」が推奨されたと言います。
この点に関しては国も問題であると認識はしているものの、先日打ち出された「骨太の方針」でも試案で挙がっていた先発薬価引き下げや差額の自己負担化などが削除されているなど、必ずしも強力な対策が推進されているとも言えない面がありますよね。
いずれにしても現状のままでは早晩医療費増大に社会が追いついていけない時期は来るはずですので、面倒臭いから全部一律○%カットなどとされないためにも、賢明な選択に基づくお金の使い方についての議論を深めておく必要があるはずです。

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コメント

高い薬使ったらネチネチ査定されるようになったりしてねw

投稿: | 2017年7月 5日 (水) 08時42分

昔、急性期病院にいた頃、単純血漿交換すると必ずアルブミン1本切られてましたわ

投稿: JSJ | 2017年7月 5日 (水) 12時32分

聞くところでは酸素飽和度測定を月30回測定すると10回切られた、そこで20回で申告してみると7回切られた、そこで14回にしてみると…と言った話もありますね。

投稿: 管理人nobu | 2017年7月 5日 (水) 14時53分

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