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2017年7月12日 (水)

幼児への延命治療中止を国が両親に強制

このところ話題になっていたのがこちらの成り行きですが、記事から紹介してみましょう。

<英国>乳児尊厳死に注目 トランプ氏ら治療継続を支援(2017年7月10日毎日新聞)

 【ワシントン山本太一】深刻な難病で生命維持装置をつけている英国のチャーリー・ガード君(生後11カ月)の治療を続けるかどうかに世界の注目が集まっている。回復見込みがないとして地元の病院は安楽死を提案したが、両親は拒否し、米国で治療を継続することを模索。3~4日、トランプ米大統領やバチカンが両親への支援を表明したことで、さらに関心が高まっている。

 英メディアなどによると、チャーリー君はロンドン在住のクリス・ガードさん(32)、コニー・イエーツさん(31)夫妻の長男として2016年8月に誕生。まもなく先天性の「ミトコンドリアDNA枯渇症候群」と診断された。細胞が正常に機能しないため内臓や筋肉の形成が難しく、脳にも深刻な損傷を負っているという。
 16年10月から治療を続けている病院は「やるべき治療は全てやった」と強調し、両親に生命維持装置を外して安楽死を受け入れるように提案した。病院は裁判所に安楽死の許可を申請し、欧州人権裁判所は今年6月、治療継続は「さらなる苦しみを与える」として安楽死を認める決定をした。両親がチャーリー君を国外に渡航させることも禁じた
 これに対し、両親は「命が尽きるまであきらめないのが私たちができる唯一の務め」と安楽死を拒否。国外も含めた受け入れ先を探し、米国の医師を見つけた。医師は、治療としてチャーリー君の体内で生成できない物質を経口投与すると約束したという。両親は治療費や渡航費を募るため、ネットサイトを設置し、130万ポンド(1億9000万円)以上の寄付を集めた。

 トランプ氏は今月3日、「もし私たちが助けることができるなら喜んでそうしよう」とツイート。ホワイトハウスは政府職員が両親と連絡を取っていると明らかにした。
 さらに、フランシスコ・ローマ法王が、両親が最期まで子どもに寄り添い治療にあたることを認めるべきだと主張。バチカンが運営するローマの小児病院は4日、受け入れを表明した。しかし、ジョンソン英外相は裁判所の渡航禁止命令を理由に小児病院への転院は「できない」としており、当面は地元の病院での治療が続く見通しだ。

乳児尊厳死の是非、審理再開=医師団「回復不能」、両親は拒否-英(2017年7月11日時事通信)

 【ロンドン時事】英国で先天性の難病のため自力での生存が不可能と診断された乳児(生後11カ月)の尊厳死の是非が争われ、英最高裁と欧州人権裁判所でいったんは尊厳死が認められた裁判で、英高等法院は10日、新たな証拠を検討するため審理を再開した。

 この乳児はロンドンの病院で生まれたチャーリー・ガードちゃん。生まれつき細胞内の小器官ミトコンドリアに異常がある「ミトコンドリアDNA枯渇症候群」というまれな疾患にかかっており、自力で呼吸もできない。医師団は「脳に回復不能の損傷がある」と診断し、生命維持装置を外す尊厳死を勧めた。両親は拒否し、米国での治療を求めていた。
 チャーリーちゃんの尊厳死の是非が問われた裁判で高等法院は今年4月、医師団の判断を支持。両親は上告したが、最高裁と欧州人権裁も6月にこれを棄却した。しかし今回、治療法についての「新たな証拠」が提出されたとして審理が再開された。
 両親の弁護士は最新の遺伝子科学による実験的な治療法が「劇的な臨床的改善」をもたらす可能性があり、「試してみる価値がある」と主張しているが、病院側は疑問視している。

 チャーリーちゃんについて、米国での治療を認めるよう求める35万人の署名が集まっている。トランプ米大統領が今月3日、ツイッターで「少しでも助けることができるなら喜んでする」と述べたほか、フランシスコ・ローマ法王も「子供に付き添い世話したいという願いが無視されるべきではない」と、両親を支持する声明を出した。

この耳慣れない「ミトコンドリアDNA枯渇症候群」なる病気、先天性代謝異常の一つでミトコンドリアのエネルギー代謝が障害される状態の総称なのだそうですが、良い治療法も確立されておらず大人になるまで生きてはいられないと言う非常に重大な病気だと言います。
乳幼児に限らずいずれにしても命の終わりが見えている方にどこまで延命をするかは意見が分かれますが、今回興味深いのは両親が反対しているのに病院側が安楽死の話をどんどん進めていて、裁判所も延命治療の中止をいわば強要していると言う点ですよね。
この辺りは安楽死や児童虐待などに対する民族文化の違いを感じざるを得ませんが、治療費も自前で調達し国外で保険外の診療を受けたいと言う希望すら禁止すると言うのも、日本ではなかなか考えにくい状況ではないかと言う気はしますがどうでしょうか?

今回の場合延命治療を中止する消極的な安楽死とも言われるものですが、毒物を投与して死に至らしめる積極的安楽死に関しても世界各地で徐々に認められる国も出てきていて、実際その運用がどうなっているのかが注目されています。
法で末期患者へお毒物投与を認めたカリフォルニア州では施工後半年で111人が亡くなったそうですが、興味深いのは医師から薬を処方されていたのは191人だったそうで、59人は薬を使ったかどうかもはっきりしないと言いますから毒物管理体制としてどうなのかですよね。
海外では過去に何度も安楽死を巡る様々な事件があり、日本でも射水の事件など話題になってきた事例は少なくありませんが、日本の場合仮に助からないとされても全て保険診療で延命治療が続けられ、金銭的理由や外圧によって中止が求められることはあまりないようです。
逆にそうであるからこそ誰がそれの開始や終了を判断すべきかも難しいとも言えますが、継続を希望している延命治療が強制的に打ち切られるような医療を国民の多くが望んでいるとはとても思えず、その点ではまだしも日本は恵まれているのでしょうね。

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コメント

こんな個人的な問題がこんな大ごとになってるのにビックリ。

投稿: ぽん太 | 2017年7月12日 (水) 07時55分

無駄なお金は使わせないってことね

投稿: | 2017年7月12日 (水) 11時17分

>両親の弁護士は最新の遺伝子科学による実験的な治療法が「劇的な臨床的改善」をもたらす可能性があり、「試してみる価値がある」と主張しているが、病院側は疑問視している。

実験的な治療法なら治験でタダでやるのがスジだと思うのですが、まあほぼ間違いなくトンデモ医療だろうなあ…。

>治療費も自前で調達し国外で保険外の診療を受けたいと言う希望すら禁止する

日本も見習うべきだと思いますよ割とマジで。

トンデモ医療を選択しようとしている気の毒な患者さんや家族を後押ししたり、ましてや寄付なんて詐欺師に養分を供給し、肥え太らせ、さらなる犠牲者を生み出してしまうのを助勢するのと同義です。この場合だと130万ポンド全額じゃないにしろ、相当額をこの多分詐欺師にくれてやることになるわけで、影響力が絶大な上素人なんだから、トランプ大統領やフランシスコ・ローマ法王には安易に情に流されて迂闊な事を言ってほしくなかったなぁ…。
http://2chcopipe.com/archives/52057506.html

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年7月12日 (水) 13時06分

興味深いのは日本同様皆保険制度で、いわば損はしないだろうイギリスの医療関係者がこうまで強力に動いていると言う事実です。
ただ医学的な情報が少なく何とも言い難いのですが、一般論として言えば保険外の自費で受ける医療である限り、結局全ては自己責任と言うしかない気がします。

投稿: 管理人nobu | 2017年7月12日 (水) 22時52分

>結局全ては自己責任
ドロッポ師匠の指摘で気付いたのですけど、患者が未成年ということが問題なのではないでしょうか。
輸血拒否とかだと分かり易いですが。

投稿: JSJ | 2017年7月13日 (木) 08時25分

児童虐待ってことか
高齢者の無意味な延命も虐待だわな

投稿: | 2017年7月13日 (木) 11時25分

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