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2017年6月19日 (月)

院内処方を行う病院で誤投薬により患者死亡事故が発生

鬼の首でも取ったようなと言う表現がありますが、こちら一部方面からは何故かそのような扱いをされていたニュースです。

“院内回帰の病院”で薬剤取り違え事故(2017年6月15日薬局新聞)

 JA新潟県厚生農業協同組合連合会(新潟厚生連)が運営する三条総合病院(病院長・神田達夫)は6月2日、処方薬の取り違いに伴う患者死亡事故が発生したことを公表した。同病院は8年前の2009年5月、それまで院外処方箋を発行していたものの、選択制と称して実質的に院内調剤に戻すことを打ち出し、物議を醸していた施設。今回の事件は患者が死亡した後に薬剤部が誤薬に気付き発覚したもので、病院は誤薬と死因の因果関係は不明としているものの、薬剤部の業務状態などがクローズアップされる状況に陥っている。

 三条総合病院が6月2日に公表したプレスリリースによると、亡くなった患者は三条市内在住の70歳代男性で、アルコール性肝硬変と慢性腎不全を併発しており、平成28年からは人工透析が行われたという。本年4月中旬に肝硬変による肝性脳症の治療を目的に入院。4月27日に病院の薬剤部で内服薬の調剤が行われたが、その際、肝性脳症治療薬である『リフキシマ錠200mg』が用いられるべきところ、取り間違えにより抗凝固薬である『リクシアナ錠30mg』が使用された。薬剤の取り違えは気付かれることなく、誤った医薬品であるリクシアナ錠が4月28日朝から30日の昼までの間服用された。
 同30日にリクシアナ錠の重大な副作用に記載されている「消化管出血」が出現し、同日に上部消化管内視鏡による止血術により出血は小康を得たものの、翌5月1日午前に患者は消化管出血を死因として死亡に至ったという。
 薬剤取り違えについては、患者が亡くなった2日後の5月3日に薬剤部が当該患者の残薬を確認した際、薬剤の取り違えに気付いたもの。2日時点の同病院の見解としては「リクシアナ錠の投与と消化管出血死亡の因果関係は不明」としている。なお、医療事故調査制度に従い、事の顛末を医療事故調査・支援センターに報告。外部委員を含めた医療事故調査委員会を立ち上げ、原因究明を行っている。

 同病院は、2009年5月から1日平均約350枚もの処方箋を選択制と称して、実質的に院内調剤に舵を切ったことで全国的にも注目度の高い病院となっていた。ホームページ上では現在も院内処方を中心としている記載が示されており、外来・入院患者のほとんどが病院内の薬剤部で調剤・調整などが行われていた可能性が高い。
 8年前に院内処方へ戻す際には「薬価差益が得られることは否定しないし、経営要素としてプラスになるからこのような判断に至った」と説明していた。また同じタイミングで薬剤部の人員を6人から9人に増員したほか、一包化機器や散剤機械を導入するなど、院内薬剤部の機能拡充に資源を投入していた。
 現在、同病院は「事故調査の事案のためコメント等は差し控えたい」とし、詳細については事故調査委員会の判断を待ってから正式な対応を取る考えを打ち出している。
 なお8年前の院内処方に戻す際、新潟県薬剤師会は同病院から発行されていた処方箋における疑義照会実績を公表しており、1カ月の平均件数は110件で過去1~2年間では重大な事象に結びつく疑義照会は47件発見されていたことを明らかにしている。

ちなみに別のソースによれば病院側としては「誤投薬と消化管出血との因果関係は「あると思われる」とするが、死亡との因果関係は「不明」としている」のだそうですが、3日間の内服でこうまで重大な結果を来していると言うのは、静脈瘤など基礎疾患の存在も経過に影響していたのかなとも想像しますがどうなのでしょうかね。
いずれにしても不幸にしてお亡くなりになった患者さんのご冥福をお祈りするしかないのですが、この種の薬剤取り違えによる医療事故はたびたび報じられていて、残念ながら今回のように単純に名称が似た薬剤を出してしまったと言ううっかりミスに近いケースが少なくないようです。
有名なところでは病棟でもよく使われるステロイド薬の「サクジゾン」と、手術室で使われる筋弛緩剤である「サクシン」の取り違え事故などが知られていますが、特に電子カルテシステムの場合最初の3文字程度の入力で自動的に検索機能が働くようになっているせいか、最初の数文字が同じ組み合わせと言うのは非常に注意が必要になりそうですね。

それはともかく、今回の場合病院側が薬価差益云々とわざわざ言っているところからしても、院外処方から院内処方へと戻す際にずいぶんとこの辺りを突っ込んだ人もいると言うことなのでしょうが、本来的には電子カルテで患者情報にも直接接することが出来る院内処方の方が、全く見ず知らずの患者の調剤を請け負う院外処方よりも安全であるはずです。
それでもこうした重大事故につながると言うのは一つには当然ながら入院患者の方がより重症であり、効果の点でも副作用の面でも強力な薬を使う機会が多いと言うこともあるでしょうし、院内の薬剤師であれば様々な業務で多忙にしているところに、さらに外来患者の調剤も引き受ければ多忙からミスも増えるだろうとは想像されるところですね。
最近では調剤業務の機械化による省力化と言うこともかなり進んでいるそうですが、外来患者の調剤を全部引き受けるとすれば薬剤部3人の増員では追いつかなかった可能性はあり、単純にマンパワー不足が重大な医療事故に結びついたのだとすれば他業種においても他人事ではない話ですから、事故調がどのような結論を出すのかにも注目したいですね。

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コメント

これは院内院外は関係ない気が。

投稿: ぽん太 | 2017年6月19日 (月) 08時30分

これ、院内処方だから事後にせよ誤りに気付けたけど
院外処方の通院患者に調剤薬局が誤処方して他所の病院に緊急入院したら間違いに気付かないこともあるんじゃないかしら。

投稿: JSJ | 2017年6月19日 (月) 12時53分

院内であれ院外であれ誤薬は起こり得るので、重大な結果を招く投薬はより細やかな対応の出来る院内の方がいいと言う考え方は当然あっていいはずです。
今回の事件で業務量増加と人員増加のバランスがどうだったのかが気になりますが、患者によって院内・院外を使い分けられれば(経営上はいざ知らず)リスクマネージメント上は一番良いのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2017年6月19日 (月) 15時28分

>病棟でもよく使われるステロイド薬の「サクジゾン」と、手術室で使われる筋弛緩剤である「サクシン」の取り違え事故

罠にかける気満々w
いい加減紛らわしいネーミングは法律で禁止すべきかと。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年6月19日 (月) 15時28分

亀レスですけど、名前は変わりました。脱分極性筋弛緩薬は、もうほぼ使わなくなりましたが、「サクシン」なんて口にしたら、年がばれます。

投稿: 麻酔フリーター | 2017年6月23日 (金) 13時20分

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