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2017年6月23日 (金)

医師の偏在対策、その方法論とは

医師偏在対策として様々な方法が検討、実施されてきたことは周知の通りですが、その一環として期待されていた医学部のいわゆる地域枠からの離脱者が問題とされていて、各種ペナルティの強化が検討されていると言う報道が先日あったところですよね。
この点についての抜本的対策としてそもそも地域枠への入学は原則地元出身者だけに限定するようにしようと言う話が報じられていたのですが、厚労省としては様々な医師偏在対策を検討しているようです。

「地域枠、地元に限定」「医師データベースで異動を追跡」「早期に実現可能な医師偏在対策」は地域医療支援センター強化(2017年6月16日医療維新)

 厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会」の第10回医師需給分科会(座長:片峰茂・長崎大学学長)は6月15日、「早期に実現可能な医師偏在対策」として、医学部地域枠の入学生は原則として地元出身者に限定、卒後は都道府県の地域医療支援センター等が策定する「キャリア形成プログラム」に沿って、大学所在地の都道府県において研修することを求めるなどの方針を了承した(資料は、厚労省のホームページ)。
 地域医療支援センターが派遣調整できる地域枠医師の増加が今後見込まれるため、同センターを強化するのが厚労省の狙い。2008年度以降、医学部定員増に伴い地域枠入学者が今後増え、2024年度には臨床研修を修了した地域枠医師は、厚労省による単純推計で9676人(留年、中途離脱等は考慮せず)。
 主に地域枠医師を対象に「キャリア形成プログラム」を策定、医師のキャリア形成に配慮しながら、医師不足地域に実効的な医師派遣を行うことを目指す。同センターについては、大学と十分に連携するなどして運営体制を強化、類似機能を有する「へき地医療支援機構」や「医療勤務環境改善支援センター」との連携も進める。
(略)
 地域医療支援センターは、47都道府県の全てに設置済み。しかし、「キャリア形成プログラム」の未策定が7県、大学と連携していない県があるなど、都道府県によって取り組みは異なり、運営が成功しているとは言い難い
 日本医師会副会長の今村聡氏は、「確かに今までは機能していなかった」と指摘しつつ、医療法に位置付けられ、税金を投入している以上、なぜ機能していないのか、その検証が必要だとした上で、「国が一定のルールを設ける方針か」と質問した。厚労省医政局地域医療計画課は、地域定着を図るために、上図のような方策の検討を提案したと回答。
 全国医学部長病院長会議会長の新井一氏も、地域医療支援センターの運営実態の検証が必要だとしたほか、大学が日常的に医師の派遣を行っていることから、「大学がコミットしないとうまく行かないのではないか」と提案した。日医常任理事の羽鳥裕氏は、「へき地医療支援機構」や「医療勤務環境改善支援センター」、さらに新専門医制度についての都道府県協議会など、類似機能を有する組織が複数あるため、連携あるいは統合した運営を求めた。
(略)
 厚労省が構築し、都道府県が活用する「医師の地域的な適正配置のためのデータベース」は、2年に一度実施する「医師・歯科医師・薬剤師調査」の届出情報、医籍情報、専門医に関する情報を用いて構築。医師の異動やキャリアパスの経年的な追跡な可能になる仕組みだ。
 今村氏は、医師のデータベース作成には賛成したが、「適正配置」との名称を問題視。地域枠医師以外の医師情報もデータベースに入るため、行政が全医師を「適正配置」すると受け取られないからだ。自発的に地方勤務が進むよう、魅力ある「キャリア形成プログラム」を作るなどの動きと齟齬が生じかねない。厚労省医政局長の神田裕二氏は、行政が「適正配置」するのではなく、地域医療支援センターは各地域で医療者や住民も交えて議論し、医師の偏在解消に取り組む場であると説明。
 国際医療福祉大学医学部長の北村聖氏は、医学教育ではIR(Institutional Research)、臨床研修ではEPOCなど、さまざまなデータベースを既に用いていることから、将来的にはこれらとの連動も検討すべきと提案。岩手医科大学理事長の小川彰氏は、「医師偏在対策には、フリーランス医師への対応が問題」と指摘。「どんな医師がいかなるキャリアを積み、どんな実力を持て、どこで働いているか」の把握が必要だとした。

 もっとも、15日の「医師需給分科会」で強かったのは、「早期に実現可能な医師偏在対策」ではなく、「抜本的な医師偏在対策」をめぐる意見だ。
 聖路加国際病院院長の福井次矢氏は、「医師の地域偏在と同様に大切なのは、医師の専門性(診療科)の偏在の問題」と述べ、早急な着手を求めた。小川氏は、「医師数は西高東低。地域枠医師の問題だけを議論しても、医師の偏在は解消しない。日本全体の地域偏在と診療科偏在の議論をしないと意味がない」と指摘。
 津田塾大学総合政策学部教授の森田朗氏は、「現時点では、このような形で議論をまとめるのが妥当ではないか」と、地域医療支援センター強化の取り組みを支持しつつ、医師需給分科会の議論を次のように総括した。「インセンティブや情報提供などの、“ソフトツール”ではなく、“ハードツール”でないと問題は解決しないという議論になったところで、(2016年10月以降)医師需給分科会は中断した。しかし、今は地域医療支援センターや地域枠医師の活用など、また“ソフトツール”の議論に戻っているところに、むなしさを感じているのだろう」。

しかし都道府県によって人口がこれほど違うにも関わらず医学部定員は画一的に一大学百人前後なのですから、人口現象が続く地域などではよほどに定員を考えないと医学部学生の学力低下がさらに深刻化しそうなのですが、試験の点数と医師としての能力の相関云々はさておき、地域医療の場においては真面目に働いてくれるなら多少の能力差は問題にならないと言う局面の方が多いとも言えます。
他方では地域枠入学者も未来永劫各地方に根を張って医療に従事していると言う訳でもないでしょうから、こうしたゆるい競争環境での医療に従事してきた彼らが後々他地域に流出してきた際にどうなるのかで、あまりに大きな能力格差などが発生しないよう卒然卒後の教育方法などにも工夫が必要なのだろうと思いますね。
ちなみに地域枠なども偏差値が低くても医学部に入学出来る(失礼)お得なルートとして受験の世界では知られているのだそうですが、他に社会人からの医学部編入なども効率的な抜け道であるとして最近人気が出ているのだそうですし、ハンガリーの医学部経由で日本で医師になると言った道もそれなりの数いらっしゃるそうですから、昔と違って医師への道も多様化してきていると言えるのでしょう。

当日の会議資料についてはこちらを参照いただきたいと思いますが、見ていて興味深いと思ったのは診療科偏在と言うことも地域的な偏在と同等、あるいはそれ以上に重視されていると言うことですよね。
この点で修学資金貸与事業において対象者の1/4には診療科を指定しての勤務義務が定められていて、かつその年限は9年以上と言う長期間が圧倒的多数であると言いますから、キャリアを考えると事実上診療科を限定されているのと同じ事ではないかと思いますが、今後さらに広汎に診療科偏在対策が講じられていくのかどうかです。
一方で若手医師が地方勤務を拒否する理由の上位に「希望する内容の仕事が出来ない」と言うことが挙げられていて、この辺り公益性と個人の自由意志のバランスと言う永遠の課題も見え隠れしますが、診療科間で社会的需要や業務量も異なることからも、今後待遇や診療報酬等の格差付けによる診療科間の自由意志に基づく誘導も検討されていくのかも知れません。
地域的な偏在に関しては自治体病院を統括する総務省も別に対策を検討していて、興味深いデータとして非常勤医師を常勤よりも割高な給与を支払ってでも確保した方が経営が改善したと言いますから、場合によっては医師間の待遇格差を拡大することも経営的には相応の合理性があると言う解釈も出来るのでしょうか。



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コメント

人がどんど減ってるのにお医者さんだけそんなにいるもんですかね?
田舎のお年寄りが欲しいのはいつでも好きな時に入院できる保証じゃないのかな。

投稿: ぽん太 | 2017年6月23日 (金) 08時20分

まあ、毎度のネタではありますが、自分たちの子や孫が流出する地域に、なんで若い医者が来てくれる思うのか、思考回路が分かりません。それは、医者が偏在しているのではなく、年寄りが偏在しているのですよ。子や孫のいる地域に居住することをお勧めします。

投稿: 麻酔フリーター | 2017年6月23日 (金) 12時07分

また、言葉もひどい。赴任してきた医者に、方言覚えろ、という態度です。子供いない時は、まだ我慢できましたが、子供ができたら、「こんな言葉を覚えさせる訳にはいかん。」と辞めました。僻地赴任して、結果的にメリットとなっとは、同時に医局を辞めることができたこと位です。

投稿: 麻酔フリーター | 2017年6月23日 (金) 12時14分

しがらみの少ない若い先生に僻地に行ってもらいたいと多くの方々が願っているのでしょうが、当の僻地の住民はベテランに来てもらいたいと思っているのでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2017年6月23日 (金) 13時32分

自治医の先生同士が結婚するとかなり揉めるみたいですね。自治体主導で別居させるわけにはいかないらしくて。

投稿: クマ | 2017年6月23日 (金) 14時51分

沖縄で脅迫された女医は旦那が隣の島勤務だったっけ

投稿: | 2017年6月23日 (金) 18時33分

『君は、地域枠組ね』と、笑われたり
「地域枠お断り」の病院、患者が続出する

そんな未来像が見えてきます

経済学ですね!!!

投稿: Med_Law | 2017年6月23日 (金) 21時07分

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