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2017年6月 5日 (月)

「それは自己責任」「今後も何ら対策は講じない」と堂々と主張したブラック職場

またぞろ犠牲者が出てしまったと言うべきでしょうか、先日からこんなニュースが出ていましたが、なかなか興味深い展開となっているようです。

新潟研修医自殺労災認定 遺族ら「(市は)対策なかった」と批判 労働環境改善を要求 (2017年6月2日産経新聞)

 新潟市民病院(新潟市中央区)の研修医、木元文(あや)さん=当時(37)=が昨年1月に自殺したのは、長時間労働による過労が原因だとして1日までに労災認定され、遺族らは待ちに待った結果に胸をなで下ろした。人手不足から医師らが過酷な労働を強いられている現状は全国各地でみられる。遺族の夫は、長時間労働を改善する姿勢をみせなかった市や同病院への憤り以上に、国や医療機関が労働環境の改善に真摯(しんし)に取り組むことを求めた。

 遺族の労災申請から認定まで、9カ月半と長い時間を要した。代理人を務める斎藤裕弁護士は新潟県庁で1日開いた記者会見で、新潟労働基準監督署の担当者から「労働時間の把握に時間がかかった」として謝罪の言葉があったことを明らかにした。
 斎藤弁護士によると、同病院は残業時間を最大で月80時間以内とする労使協定を結んでいた。ところが、電子カルテの操作記録などを調べた結果、木元さんの時間外労働時間は最も長かった平成27年8月には251時間に達し、同月を含め4カ月連続で200時間を超えるなど過酷な状態が続いていたことが判明した。
 遺族側は時間外労働時間は月平均で約187時間だったと指摘したのに対し、病院側は同労基署に対し、その3分の1に満たないと主張。さらに、医師らは勉強のため労働時間外も病院にとどまることがあるため、木元さんについても「自らのスキルアップのために残っていた可能性がある」としていた。
(略)
 会見で斎藤弁護士は「医師の過酷な労働が悲劇を招いたことは労災決定が示している」とした上で「市側は長い労働時間を正当化するような対応を取り、労働時間を減らす対策をほとんどしてこなかった」と批判。市に対し長時間労働の改善を申し入れるとした。


研修医自殺:労災認定へ 労基署「過労が原因」 新潟市民病院(2017年6月1日毎日新聞)

(略)   
 亡くなった研修医は木元文(あや)さん。看護助手をしながら医師を目指して勉強を続け、2007年、新潟大医学部に合格。卒業後の13年から研修医となったが、15年4月に後期研修医として同病院に移ると、救急患者対応の呼び出し勤務が激増。16年1月24日夜、行き先を告げず一人で自宅を出たまま行方不明になり、翌朝、家族が自宅近くの公園で遺体を発見した。
 新潟県警によると、死因は低体温症で、遺体のそばには睡眠薬と飲み終えた酒が落ちていた。自殺前、家族に「人に会いたくない」と漏らしていたといい、県警は自殺と判断している。
(略)
 一方、病院側は木元さんが自己申告していた残業時間は月平均約48時間だったと反論。「電子カルテの操作記録の多くは医師としての学習が目的で、労働時間に当たらない」と説明していた。
(略)
 木元文さんが勤務していた新潟市民病院では、毎日新聞の情報公開請求による取材で、残業時間を月80時間以内とする労使協定無視が常態化していた。
 「過労死ライン」の月80時間に対し、基本的に死亡の1カ月前に100時間か、2~6カ月前の平均で80時間を超える残業があれば過労死認定される。
 毎日新聞では、情報公開請求により、木元さんが亡くなった2015年度に在籍した後期研修医27人の残業自己申告記録を調べた。200時間を超える残業月は1人▽150時間超は3人▽100時間超は9人▽80時間超は7人▽80時間以内は7人で、後期研修医の7割以上の20人が協定違反の労働をしていた。また、管理職を除く136人中、62人に80時間を超える残業月があった。ある臨時職員の年間残業時間は1523時間で、平均月約120時間を超えた。
 同病院はこうした実態を踏まえ、今年度の労使協定改定で、残業上限を年6カ月以内の範囲で月100時間以内まで緩和した。上限緩和は過労対策の趣旨に反するが、同病院の担当者は「協定を守れる範囲にした。中核病院としての使命と労働時間の問題との間で葛藤がある」と話した。

<新潟市民病院>長時間労働は氷山の一角 協定違反が横行(2017年6月1日毎日新聞)

 過労自殺した研修医の長時間労働は氷山の一角--。新潟労働基準監督署に31日労災認定された木元文(あや)さんが勤務していた新潟市民病院(新潟市中央区)で、労使協定を無視した残業が常態化していたことが毎日新聞の情報公開請求で明らかになった。同病院は協定違反を認めたうえで「急性期病院のため救急患者を受け入れざるを得ない」と釈明。事態改善は難しいとの見解を示している。【柳沢亮】
(略)
 同病院は09年度、労使協定の上限を超える残業があったとして同監督署から是正勧告を受けている
 同病院はこうした実態を踏まえ、17年度の労使協定改定で医師と歯科医師の残業上限を緩和。年6カ月以内の範囲で月100時間以内まで残業を認めるなどとした。同病院は「協定を守れる範囲にした」と説明している。
 ただ、上限緩和は過労対策の趣旨に反する。同病院の担当者は、高齢化で仕事量も増える可能性があるとして「中核病院としての使命と、労働時間の問題との間で葛藤がある」と話した。

全国どこでもありがちな状況ではあると思いますが、注目すべきは死者まで出ているにも関わらず病院側には全く事態を改善する意志はないと公言していると言う点で、残業上限の80時間で死者が出たから100時間まで残業出来るようにしましたと言うのはもはや狙っているのか?と思うような意味不明の話ですよね。
どこの業界でも過労死と言う現象は残念ながら発生し得るものですが、ここまで全く反省の色もなく自己正当化の弁ばかり出てくる職場と言うものも昨今珍しいもので、これが医療以外の世界で起こった出来事であったなら今頃進歩的なメディアを始め各方面からの集中砲火で壮大な炎上騒動が発生していただろうと思います。
そうした状況であっても医療であるからこの程度許容されるだろうと考える傲慢さをどう考えるべきなのか、医療の常識は世間の非常識と言うことを証明する実例の一つになるのかですが、少なくとも研修医はこうした各病院の状況をよくよく把握した上で勤務先をしっかり選んでいかないと、いつ自分がそうした立場に追い込まれるか判らないと言うことです。

国の推進する働き方改革でも医療業界の後進性、閉鎖性はかなり注目されているようで、新潟市民病院も関係している全国自治体病院協議会がこの秋にも医師の働き方について見解を打ち出すと言っているそうですが、厚労省調査によれば医師の2/3までが勤務状況改善が必要だと答え、その理由として「医師の過重勤務により患者が不利益を被る可能性があるため」が最多であったそうです。
これに対して先日働き方改革による医師労働規制強化に異議を唱え「医師は労働者ではない」の名台詞?で全国に名を売った日医の横倉会長が興味深いコメントをしているのですが、彼によれば医師の応召義務を定めた医師法19条とは「医師個人に対しての規定で、医師が勤務する医療機関への規定ではない」と言う考え方が、日医内部での議論の結果打ち出されたのだそうです。
だから医師は黙って働くしかないのだよと言うのが日医の見解だとして、当然ながらこれとは逆の立場に立つ意見も少なくないわけですが、法律の解釈が原因で医師の勤務改革が出来ないと言うのであれば国に見解を問い是正を促すよう働きかければ済むことだと思うのですが、興味深いことにこうした当たり前の対応すらやろうとしない団体が世間では医師の主張を代弁する強力な圧力団体だと認識されているそうです(苦笑)。
いずれにしても自分の命を削ってまで職場に滅私奉公しようと言う人間は世間全般で減ってきている時代ですから、こうした事件が報じられることで医療の世界においても自然な摂理に従って医療リソースの再配分と淘汰が進んでいく可能性があると思うのですが、結果的に過労死寸前の目を血走らせた医師に診てもらうよりはよほど患者にとっても安心出来る医療が受けられるようになるかも知れないですね。

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コメント

ごく個人的な意見ですが、研修医を死なせた指導医は各種指導医資格を返上すべきだと思いますし、
病院は臨床研修指定病院を返上し、現在抱えている研修医を他の臨床研修指定病院にお願いするべきだと思います。
この病院は研修医を指導する体制が全くなっていません。

投稿: クマ | 2017年6月 5日 (月) 08時16分

状況は厳しいが改善にため努力しますとでも言っておけばいいのに。
わざわざ火に油を注ぐようなヘタなコメントですね。

投稿: ぽん太 | 2017年6月 5日 (月) 08時17分

奈良の「残業代?払うわけ無いじゃん!」発言も酷いモノだと思っていましたが、
この新潟での「残業が200オーバー?業務は50足らずで後は本人の勝手じゃん」発言を聞いて
まだ責任の所在をハッキリさせている荒井知事の方がマシに思えたのは疲れている為でしょうか。。。

投稿: | 2017年6月 5日 (月) 09時23分

過労死で亡くなっているのに、平気で100時間の労使協定を結ぶんだから「自己責任」でしかありえない。
残業代も「自己申告」でしか出していないのだろうから、タダ働きのムダ死にしか思えない。


投稿: | 2017年6月 5日 (月) 11時34分

各施設ともそれぞれの事情はあるでしょうが、常勤ならまだしも立場の弱い研修医については労働管理も出来ない施設で預かるべきではないし、制度上もそれを許すべきでもないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2017年6月 5日 (月) 12時39分

どろっぽ先生のお言葉はまだかな。

投稿: | 2017年6月 5日 (月) 15時26分

どろっぽ先生のお言葉はまだかな。

投稿: | 2017年6月 5日 (月) 15時26分

「過労死は雇用者による労働者の殺人」といった趣旨のコメントを遺族(夫)がされていたのを地元のローカル新聞記事で見たのでネットソースを探してて出遅れましたw。結局見つからなかったし…。
で、さすがにいい加減言い飽きたんですが言わなきゃだめ?しかたないなぁ…。

ブラック病院に勤務する医師は全労働者の敵だからして縛り首にしよう!(提案

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年6月 5日 (月) 16時09分

「和食さと」運営会社に罰金50万…長時間労働
2017年06月01日 11時19分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170601-OYT1T50042.html

 「和食さと」の店舗などで従業員に長時間労働をさせたとして、労働基準法違反に問われた「サトレストランシステムズ」(大阪市)に対し、大阪簡裁は1日、求刑通り罰金50万円の有罪判決を言い渡した。

 井野口摂せつ裁判官は「時間外労働が月50時間を超える従業員もおり、極めて悪質で刑事責任は重い」と量刑理由を述べた。
 判決によると、同社は2015年1~11月、本社と4店舗で働く従業員7人に労使協定として定めた上限時間を超える時間外労働をさせた。

人を殺したら罰金いくらかな?

投稿: | 2017年6月 5日 (月) 18時30分

後期研修ですから、所属の部長がいるでしょう。院長・事務長・部長を告訴して裁判にかけない限り、病院に限らず同様の問題は続くでしょうね。

投稿: 麻酔フリーター | 2017年6月 6日 (火) 12時34分

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kittenuu/201706/551466.html?n_cid=nbpnmo_mled
外科医に働き方改革は不可能だそうな

投稿: | 2017年6月 6日 (火) 15時43分

まだ研修医募集してるってどんだけ……

投稿: | 2017年6月 6日 (火) 22時35分

老害脳筋外科医どもが何をほざこうが今後、過重労働は酔っ払い運転と同様重罪となります!震えて眠れwwww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年6月 7日 (水) 09時35分

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