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2017年6月21日 (水)

いのち一年分の妥当な値段

なかなか面白い試みだと思ったのですが、先日こんなニュースが出ていたことを御覧になったでしょうか。

1年延命の薬、公的負担どこまで 費用対効果、世論調査(2017年6月13日朝日新聞)

 1年延命できる薬に公的保険からいくらまで支出を認められるか、厚生労働省が今夏に世論調査に乗り出す。結果は高額な薬の費用対効果を判断する基準に使い、医療費の抑制につなげる。ただ、調査結果は延命にかける医療費の目安となりかねず、議論を呼ぶ可能性がある。

 質問案は「完全な健康状態で1年間生存することを可能とする医薬品・医療機器等の費用がX円であるとき、公的な保険から支払うべきか」。額を上下させ質問を重ね、適正だと思う値段を面談で聞き出す。対象者は住民基本台帳から無作為に抽出。年齢や性別、所得が偏らないよう数千人規模の調査とする見込みで、結果は秋までに公表する。

 結果は、評価対象の新薬ごとに製薬会社提供のデータと突き合わせる。データは新薬の使用で増えた費用と、延びた生存年数にその間の生活の質を加味した「QALY(クオリー)」という値を組み合わせたもので、その費用対効果を5段階で評価。「悪い」「とても悪い」となった薬は、代わりの治療法がないことなどがなければ値下げの検討対象とする。

「1年延命できる薬に、公的支出いくらまで?」厚労省、一般市民に面談調査へ(2017年6月15日読売新聞)

 高額な薬が増えるなか、厚生労働省は今夏、薬の値段に関する意識調査を行う。

 「1年延命できる薬に公的医療保険からいくらまで支払っていいか」を数千人の一般市民に尋ねる。結果は、薬の価格が効果に見合っているかどうかの費用対効果の判断に生かす。

 同省は来年度から、薬や医療機器の価格算定に、費用対効果の分析結果を反映させる制度を本格的に導入する方針。中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)の専門部会で14日、具体的な調査方法が議論された。

 調査は、面談方式で実施。薬について様々な金額を示したうえで、公的医療保険から支払うべきだと考えるかと尋ね、「はい」「いいえ」で回答してもらう。質問を重ねることにより容認できる金額の水準を探っていく。意識調査の結果は、今秋までに公表する。

記事によって微妙にニュアンスが異なっているのですが、朝日のニュースによれば単なる1年の延命ではなく「完全な健康状態で」と言う但し書きが付くところがポイントになりそうで、延命云々が議論になるような命に関わる大病がある状態で「完全な健康状態で」と言うのも、なかなかに空想的な前提条件と言う気がしますよね。
これが事実であれば調査によってどの程度正確なデータが収集できるものなのか微妙に疑問もありますけれども、せっかく何千人も面接を行うのであれば単にコストだけではなく、延命期間の健康状態など様々なパラメーターに関しても併せて調べて見ていただきたいと思います。
いずれにしても今回こうした調査を行うと言うことは、人の命は地球より重い式の昭和的価値観からの脱却が次第に進んできていて、命の沙汰は金次第とまでは言わないもののやはりある程度コスト意識を持たないではいられないだろうと言うコンセンサスが、次第に世の中にも拡がってきていると言うことを反映しているのでしょうか。

国の財政は当面大幅に好転する見通しはないようですが、そうなると支出をどれだけ抑制出来るかと言うことに注目が集まるのは当然であり、とりわけ増大する一方で絶対値としても巨大な金額となっている社会保障関連のコストをどう抑制するかが近年盛んに議論されるようになっていますよね。
毎年新薬や新規治療法が次々と登場していて、認可されると言うことは当然ながら旧来の治療法よりも効果があると認められたと言うことですが、超高額な新薬が相次いで登場している中でこの薬を使えば寿命が○ヶ月伸びます、その代わりコストは○百万円余計にかかりますと言ったことが現実に起こり得るようになっている時代です。
その増えた分のコスト負担が個人の財布に直接来ると言うのであれば自然と使用にブレーキもかかるのでしょうが、高額医療費の上限で定額負担だけで済むとなればかかったコストの自覚が乏しくなるのも当然であり、むしろ人間心理として「どうせ支払いが同じなら高い薬を使わなければ損」と言った心理が働く可能性すらありますよね。
この辺りは自己負担増加による医療費抑制が妥当なのかと言った積年の議論とも関わってきますが、単純に幾らと線引きが出来るような話でもないだけに、こうした調査などの繰り返しも含めて徐々に国民意識の変化を促していく地道な努力も必要になるのかも知れません。

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コメント

子供の1年と若者の1年と高齢者の1年が全部同じ値段っておかしいと思うんだが

投稿: | 2017年6月21日 (水) 08時23分

健康で1年寿命が延びる治療に、絶対価値で値段を付けさせようって、どんだけ無意味な質問かと。
個人に対して、一人分の値段だけ示して、いったい何を聞けると思ってるのかと。

そんな治療は「金さえあれば治療したい」に決まってるんじゃないのか。
だから、その金が出せるかどうかの問題。

そして、公的保険でということは、配分の問題なんだから、
対象者がどれくらいで、もしこの金額で対象者全員に払うとしたら総額どれくらいで、
それに対して、いまの医療費総額はどれくらいで、という前提なしでは回答のしようがないはず。

投稿: | 2017年6月22日 (木) 13時18分

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