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2017年6月30日 (金)

山岳救助有料化に見る、救急搬送有料化との類似性

もともとはこの春に決まったと言う話なのですが、先日改めて取り上げられていたこちらのニュースを取り上げてみましょう。

「受益者負担」「悪影響」 山岳救助ヘリ、有料化に賛否(2017年6月28日朝日新聞)

 埼玉県が防災ヘリコプターを使った山岳遭難救助を有料化すると決めた。「山ガール」という言葉まで生まれた登山ブームの一方、遭難は後を絶たない。これから夏山最盛期。有料化は是か非か。

 3月の埼玉県議会。最大会派の自民党県議団が、防災ヘリに関する条例の改正案を提出した。県内の山で遭難し、県の防災ヘリに救助された登山者などから「手数料」を徴収するという内容。料金は燃料実費で、県によると1時間あたり5万円程度という。
 「有料化は観光に悪影響」「まずは登山道の整備を」。議会では反対意見が出たが、提案者の県議は「有料化で登山者がより一層周到な準備をし、慎重な行動をとることが期待できる」「登山道はコスト面からどこまで整備すべきか」などと反論。転倒や滑落などの危険が潜む山岳に、自らの意思で赴く登山者の「受益者負担」を強調し、賛成多数で可決された。

 改正案提出のきっかけは2010年7月の事故だ。同県秩父市の山中で救助活動中の防災ヘリが墜落し、乗員5人が死亡した。自民党県議団は当時から、山岳救助は他の救助活動より危険性が高いとして、ヘリ救助の有料化を模索してきたという。
 警察庁によると、16年の山岳遭難者数は2929人で、統計の残る1961年以降2番目に多かった。総務省消防庁によると、全国の消防防災ヘリの出動件数は2015年で1345件。埼玉県内では昨年度、山岳遭難でヘリが21回出動し、12件で実際に救助した。


山岳救助 防災ヘリ有料化へ 埼玉県が条例改正案(2017年3月24日毎日新聞)

 埼玉県内の山岳で遭難した登山者が同県の防災ヘリコプターに救助された場合、ヘリの燃料費相当分として運航1時間あたり約5万円の「手数料」を県に納めることを義務付ける条例改正案が同県議会で審議されている。自治体の防災ヘリで救助された遭難者に「自己負担」を求める条例案は全国初で、27日の本会議で可決される見通し。

 同県は3機の防災ヘリを所有し、昨年度は計11回の出動で5回が実際に救助に当たった。県は運航経費を公表していないが、県内の山岳関係者によると「民間ヘリなら、1時間あたり数十万円かかる」という。
 今回の議案では、ヘリが1時間あたり360~550リットルの燃料を使うと見込み「手数料」を算出した。改正案を提出した自民党県議団は「山岳救助は大きな危険が伴う。受益者負担の観点から、遭難者に一定の負担を求めることが県民間の公平につながる。有料化によって無謀な登山も減る」と説明する。
 林業従事者や生活保護受給者などには減免措置を設けるとともに、埼玉県からの登山者が県境の山で遭難し、隣接県の防災ヘリに救助された場合に手数料を請求するかどうかは今後、調整する。

 改正案には異論もある。埼玉県内で最も登山観光客が多い秩父市の田代勝三・秩父観光協会会長は「『秩父の山は有料』というマイナスイメージが先行し、登山客から敬遠されるのではないか」と懸念。加えて「県外からの登山者に条例を周知徹底できるかなど課題もある」と指摘する。
 静岡大学教育学部の村越真教授(山岳リスクマネジメント学)は「登山は自己責任で行うべきもので、受益者負担は理解できる。ただ不可抗力の事故もあり、山岳事故防止の啓発活動も同時に行うべきだ。海の遭難についても同様の議論が必要だ」と話している。【森有正】

埼玉県が有料化 防災ヘリ救助条例成立、全国初 地元や山岳連盟反発 専門家は「議論の契機に」 (2017年3月28日産経新聞)

 埼玉県議会で27日に成立した公的防災ヘリコプターによる山岳救助を有料化する全国初の改正条例は、地元の山岳連盟などから反対や慎重な議論を求める声が上がる一方で、専門家からは「登山者自身がリスクマネジメントについて考えるきっかけにもなる」と評価する声も出ている。県は「徴収には総務省の判断が必要」としており、同省の判断や、施行に向け県が定める細目の内容にも注目が集まる。(菅野真沙美)

 条例改正案に対しては、秩父山岳連盟と秩父観光協会が3月上旬、提案した自民党県議団などに反対や慎重な検討を求める要望書を提出。小鹿野町議会も16日、「幅広い関係者からの意見聴取、近隣都県の動向等調査し、慎重に審議するよう強く要望する」とする意見書を可決し、「山岳救助の現場に混乱をもたらすばかりでなく、秩父地域の重要な観光資源である登山客の減少などの悪影響をもたらす恐れがある」と指摘した。
 27日の本会議では、反対討論で「公平性に欠け、現場を混乱させることになりかねない」「要救助者が防災ヘリでの救助を拒んだ場合でも手数料を徴収できるとする点に違法性があるのでは」などの意見が出された。上田清司知事は本会議終了後、「細目を詰めるとともに総務省の見解を待つ必要がある」と言及した。

 自然体験のリスクマネジメント学が専門の村越真・静岡大教育学部教授は、「条例案自体には当然メリット、デメリット両方がある」としつつ、「登山者が山登りの際のリスクについて考え、議論を起こすきっかけになる可能性がある」と期待を寄せた。また、施行までの県の取り組みについて「行政は山岳関係者を巻き込んで、登山事故のリスクをどのように分担するかという部分まで踏み込むべきだ」とした。

この種の話題では先年ヨットで太平洋横断に乗り出したマスコミ関係者が遭難し無謀な計画による自己責任の事故ではないか、巨額の救助費用を負担するべきではないかと言う議論があったことは記憶に新しいのですが、同関係者は後に海難救助に関わるボランティア団体に500万円を寄付したとのことで、やはり経費負担の問題は気になっていたと言うことなのでしょう。
今回の有料化はあくまでも経費のごく一部だけだと言うことですから、記事にもあるように無計画な登山を避けるなど事故防止と言う側面も強いのだと思いますが、しかし現地にお金を落としていくのは往々にして多くの計画性の乏しい登山客ではないかと言う気もするので、観光振興と言う面ではネガティブな影響もあるのかも知れません。
また実行段階で予想されるトラブルとして、とりわけ昨今しばしば批判の的となる「疲れた」「下山が面倒臭い」と気楽に救助を要請し過ぎる登山客と現場で揉めるのではないかと言うことに加え、本当に救助を必要としている人までが救助を拒否した場合どうするのかと言う問題もありそうですが、特に救助を拒否した登山客がその後本当に遭難してしまった場合どうなるのかですよね。

この話を聞いて連想するのが、同様に長年あまりに気楽に依頼しすぎる人が多いとして有料化がたびたび話題になる救急搬送の問題なのですが、あくまでも健常者が自ら望んで行う登山に対して、病気や怪我は誰であっても突然襲いかかってくるものであり、各種の世論調査を見ても有料化には反対する声の方が優勢と言うケースが多いようです。
興味深いのは救急医療の現場を実際に担っている医師に訊ねてみると実に9割が有料化に賛成していて、しかもその過半数が軽症だろうが重症だろうが関係なく一律に徴収すべきだと言う意見に賛同していると言うことなのですが、多くの病院の公表しているデータによっても救急搬送の多くはその必要がない軽症患者であったと言う事実とも関係しているのでしょう。
さらに興味深い点としてもう一方の救急の当事者とも言える救急隊員からは有料化に反対する声もあると言うことなのですが、その理由がまさに先ほど取り上げたようにその場になって面倒なことになってしまうのではないかと懸念していると言うことですから、有料化を行うにしてもその徴収方法には工夫が必要そうですよね。


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コメント

入山時に保険料とったらいいんじゃない?
余ったお金は山の保全に使えばいい

投稿: | 2017年6月30日 (金) 08時25分

入山道は一本じゃないので無理ですし、そこをかいくぐって無鉄砲に登ろうとする人には抑止力になりません(´・ω・`)

投稿: おちゃ | 2017年6月30日 (金) 10時12分

保険をかけた上で、無保険者には実費請求でいいかと。

投稿: JSJ | 2017年6月30日 (金) 11時51分

富士山など名の知れた山には入山料方式がいいかとも思うのですが、六甲くらいでも遭難するときはするものですので、徴収対象をどこまで網羅できるか、するべきなのかは難しいところもありますね。

投稿: 管理人nobu | 2017年6月30日 (金) 12時39分

他の国がどうやって入山料を集めているか、払わず登ろうとする登山者に対してどう対応しているかを調べると参考になるかもしれません。

投稿: クマ | 2017年6月30日 (金) 13時15分

てか、書く順が逆でした。
まず、救助を有料化する。
その上で、万一の場合に備えて保険もありますよ、お申し込みは○○へ、と。

投稿: JSJ | 2017年6月30日 (金) 21時06分

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