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2017年5月12日 (金)

生保受給者の調剤薬局を限定

医療費抑制の方策が様々に検討される中で、以前は進歩的なメディアを中心に議論に上ることすら避けられてきた感のある生活保護受給者の医療費抑制についても近年ようやく注目が集まるようになりましたが、医療費自己負担がないと言うことが過剰受診を招いていると言う指摘が多いようです。
つまりは金銭的動機に代わって何らかの別な過剰受診抑制対策が求められるわけですが、そんな中で厚労省が打ち出してきた対策が話題になっています。

生活保護者 調剤薬局を1カ所に限定へ 厚労省検討(2017年5月6日毎日新聞)

 厚生労働省は、生活保護受給者が利用する調剤薬局を1カ所に限定する検討に入った。複数の医療機関にかかって同じ薬を重複して受け取るのを防ぎ、生活保護費を節減するのが狙い。受給者は決められた薬局でしか薬を受け取れなくなる。受給者数が全国最多の大阪市などで6月にも試行し、効果や課題を検証する。

 病院で処方箋を受け取った患者は、病院近くの薬局で薬を受け取ることが多いため、複数の医療機関を受診すると、通う薬局も増える。向精神薬に限ってみると、2015年度には全国4650人が同じ病気で複数の医療機関を受診し、重複して薬を受け取っていた。薬局が限定されれば、受給者にとっては多重投与による健康被害を避けられるメリットもあるが、利便性の低下も予想される。

 厚労省は、生活保護受給者が自己負担なしで薬を受け取れる「調剤券」を、自宅近くなど決められた薬局でしか使えないようにすることを想定している。市販薬などを購入する場合の薬局は対象外。必要な薬がすべて1カ所で手に入るかなどの課題を秋までに検証し、来年度以降は全国に広げることを検討する。生活保護受給者数は約214万人。医療費は15年度実績で1.8兆円かかっており、保護費全体3.7兆円の半分を占めている。【熊谷豪】

生活保護受給者の調剤薬局を1カ所に限定、厚労省検討 ネットでは賛否(2017年5月9日ZUUオンライン)

生活保護受給者の利用する調剤薬局を1カ所に限定する--。厚生労働省が検討していると毎日新聞が報じた。複数の医療機関に通い、重複した処方箋を受け取る事を防ぎ、生活保護に掛かる費用を抑える狙いがあるというが、インターネットを中心に賛否様々な意見が出ている。

生活保護費の抑制と不正受給による薬の売買の抑制も期待

厚生労働省の調査によると、生活保護にかかる費用は2014年度の実績で3.7兆円となっている。その内、46.9%は医療扶助の費用となっており、年々増加傾向にある生活保護費の抑制には医療費削減が必要となる。
生活保護受給者の医療費は原則無料となっており、中には複数医療機関に受診し、同じ薬の処方箋を受けているケースもあると見られる。同報道によると、向精神薬だけで2015年度に全国で4650人が重複した処方箋を受け取っていたという。
(略)
生活保護受給者の中には医療費が無料である事を利用し、投与された薬を自ら服用せず、インターネット等を通じて裏で売買している者もいるとの指摘もある。今回の対策はこうした取引に対する抑制にもつながる。

デメリットを指摘する声も

生活保護費用抑制や薬の不正売買に効果を発揮すると期待される厚労省案であるが、インターネットではデメリットを指摘する声が上がっている。
まずは生活保護受給者の利便性の低下である。調剤薬局が指定されると、自宅や受診医療機関の近くの調剤薬局で薬を受け取る事ができない可能性が出てくる。生活保護受給者の約半数は高齢者世帯である事も反対を呼ぶ要因となっている。
調剤薬局の指定にあたっても、どういった基準で調剤薬局を指定するかが不明確であるとの指摘もある。指定調剤薬局に選ばれない調剤薬局は売上減が想定される為、透明性のある指定基準が求められる。指定調剤薬局で全ての薬が手に入るか等の検証も必要となる。
さらに医療費の削減効果を疑問視する声もある。生活保護受給者の医療費は2014年度実績で1.7兆円となっている。同年度の国民全体の医療費は約40兆円であり、生活保護に係る医療費は全体で見れば大きな金額とは言えない。生活保護受給者の内、薬を重複投与されている者の割合も多くはないと見られ、効果は非常に限られるとの見方である。
不正受給問題等もあり、国民の生活保護に関する目は厳しい。透明性を高め、健全な運用を目指す姿勢は重要である。今回の改革は賛否両論となっており、厚生労働省は国民との対話を大切にしてほしい。

これまた表向きの話と裏向きの話とが考えられるだけに、各メディアの取り上げ方によってかなり異なった印象を与える記事になっているのですが、ひとまずこの方面で以前から独自対策を打ち出してきた生保先進自治体とも言える大阪から試行すると言うのは妥当なアイデアではないかと言う気はします。
反対意見には様々なものが考えられますが、利便性云々に関しては自宅近くの調剤薬局を指定いただくことを期待するとして、その場合処方された薬の在庫がないと言う事態が門前薬局よりも増加することが予想されますが、こちらに関しては医薬分業以来永遠の課題ですから生保受給者に限定した話でもないわけです。
受給者の半数が高齢者であると言うことも問題と言えば問題で、生保受給者の場合そうでない場合と比べて日常的な支援が期待出来る親族が不在である場合が圧倒的に多いはずですから、服薬上の各種トラブルを防止する意味でも調剤薬局は一カ所に集約し責任をもって管理していただく必要性があると言えます。

最終的な医療費削減効果に関してはいずれにせよやってみなければ判らないとしか言いようがありませんし、だからこそ大阪での結果を見てと言うことになるわけですが、上記のように見ていくと効果検証のためにもやってみない理由はないと言うことになりそうです。
むしろ生保患者に限定されるものではない課題も数多く存在している以上、調剤薬局集約化については一般の患者においても推進すべきと言う考え方もあると思いますが、現実に毎年数百億円分にも及ぶ処方薬が無駄に廃棄されていると言う話もありますし、特に高齢者においては自己管理能力の限界がある以上早急な対策が必要ですよね。
生保受給者対策と言えば何かと言えば聖域視されてきた経緯もあり、未だに何の改革であれ反対意見も少なからず出てくるようですが、純粋に医学的視点に立ってもメリットの多い話がある以上やってみるべきだろうと言うことで、後はどのようなやり方で指定薬局を決めるかと言う点が当面の課題と言うことでしょうか。

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コメント

既に「かかりつけ薬局」という制度があるのですから、その延長で考えれば真面目な受給者に特段の不利益のある話とも思えませんね。
あるとしたら旅行した時くらいですか。
自宅近くに「かかりつけ薬局」を持って、そこ以外では調剤を受けられないようにすればいいだけでしょう。
宅配もしてくれますよ。

ZUUオンラインの「自宅や受診医療機関の近くの調剤薬局で薬を受け取る事ができない可能性が出てくる」というのは読者のミスリードを狙っているとしか思えません。
ちなみに、記事で他にデメリットとして挙げてあるのは、むしろ薬局にとってのデメリットですよね。

投稿: JSJ | 2017年5月12日 (金) 08時12分

さっさとやれ

投稿: | 2017年5月12日 (金) 09時43分

生活保護者だけでなく、3割負担さえしていない人全員を対象にするべきでしょう。例えば、指定薬局以外なら一律3割負担で、何の不都合があるのでしょうか?

投稿: 麻酔フリーター | 2017年5月12日 (金) 10時32分

生活保護は他法優先ですから、向精神薬を処方するような病気の大部分は自立支援医療制度の対象になります。
自立支援医療制度を使えば複数の医療機関で処方されるのを防ぐことは可能です。
指定医療機関の医者であれば、そういうルールを理解して生活保護の患者さんに対応する必要があります。

投稿: クマ | 2017年5月12日 (金) 10時46分

第一弾としてはごく常識的な内容で、これでどの程度の効果があるのか見てみたいです。

投稿: 管理人nobu | 2017年5月12日 (金) 19時46分

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