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2017年5月10日 (水)

高齢者に抗癌剤は使うだけ無駄?

このところ出てきた話ですけれども、こうしたニュースを御覧になったでしょうか。

高齢者の抗がん剤に指針 厚労省が検討へ 延命効果不明の指摘も(2017年4月27日共同通信)

 厚生労働省は27日、高齢者に対する抗がん剤治療の指針作りに乗り出す方針を固めた。高齢のがん患者は、他の病気にかかっていたり、薬を分解する能力が落ちていたりする場合が多く、きめ細かな医療を提供する必要が出てきたため。
 国立がん研究センターは同日、75歳以上の高齢者に抗がん剤を使っても延命効果がない可能性を示唆する研究結果を発表。同省はこうした結果も参考にし、今後6年間のがん対策の方向性を示す第3期がん基本計画に、高齢者を含む年代別のがん治療法の検討を盛り込む。
 具体的には、高齢者を対象とした臨床研究を推進し関係学会と協力して指針の策定に取り組むほか、認知症を合併した高齢患者を支援するための検討も進める。

 国立がん研究センターによると、2007年から08年に同センター中央病院で受診した約7千人のがん患者を調べた結果、肺がんでは、75歳未満で抗がん剤治療による明らかな延命効果が見られた。だが、75歳以上では抗がん剤治療を受けた患者と受けていない患者の生存期間に大きな差はなかった
 ただし、75歳以上の肺がん患者は19人と非常に少ないため、同センターは、これだけでは科学的に抗がん剤の効果がないとは言い切れないとしている。胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんでも調べたが、統計的に意味のある結果は出なかった
 同センターは、高齢者へのがん治療効果を明らかにするには、全国のがん登録のデータを使用した大規模調査での解析が必要だと指摘している。
(略)

高齢がん患者 抗がん剤治療の効果調査へ 延命効果検証(2017年4月27日毎日新聞)

 政府は、高齢がん患者に対する抗がん剤治療の効果について大規模な調査に乗り出す方針を固めた。高齢者にとって身体的な負担の重い抗がん剤投与による延命効果を疑問視する声もあるため、大規模調査に基づく科学的分析が必要と判断した。高齢化が進む中、がん治療のあり方に一石を投じる可能性がある。【秋本裕子、岡大介】

    <がん対策>死亡率目標に限界

 抗がん剤はがん治療に効果を発揮するものの、痛みや吐き気、肺炎などの副作用を伴う。特に高齢者では、若年層や中年層と比べて他の病気を併発していることも多く、抗がん剤による副作用で体力や気力が落ちることで、結果的に延命効果は限定的になるのではないかという指摘が医療界にある。また、高価な抗がん剤の使用拡大は医療費の押し上げ要因になっている。
(略)
 厚労省は、全国の病院のがん患者の治療データを都道府県を通じて集約する「全国がん登録」制度などを活用して大量のデータを集め、詳細な分析を行う方針。緩和治療のあり方など「生活の質」の観点からの調査も実施する。
 学会などは、年代の区別なくがん患者の診療指針を定めているが、厚労省は調査結果を踏まえ、高齢のがん患者に特化した指針の策定を促す。結果次第で、より緩和治療を拡充するなどの方向性が示される可能性がある。

医療費抑制と区別を

 高齢のがん患者に対する抗がん剤治療効果の大規模調査は、国民の2人に1人ががんになる時代に適切な治療のあり方を探る基礎データとなることが期待される。
 増加している高齢のがん患者に、治癒の望めない段階まで抗がん剤治療が施されているケースは少なくない
 これは治療効果や安全性を調べる臨床研究の多くで70歳以上が対象外とされ、各学会が作成する診療指針でも高齢患者に関する記載が乏しいのが一因だ。
 一方、国立がん研究センターなどの予備調査で比較対象とした緩和治療も、国内の研究は進んでいない。現行の第2期がん対策推進基本計画では「早期からの段階的な緩和医療の導入」が推奨されているが、いまだに十分ではない。大規模調査で「生活の質」の向上も含めた効果が裏付けられれば、普及の後押しにもなるだろう。
 ただし、どのような治療を選ぶかは、あくまで本人の意思が大切だ。高齢者のがん治療は「抗がん剤のやめ時を考えるべきだ」という意見も、「医療費の高騰と治療をつなげて議論すべきではない」という意見もある。患者の状態や価値観は多様で、年齢で区切れるものではない。
 政府内には、財政面から医療費を抑制したいとの思惑もある。大規模調査の結果を医療現場でどう生かすかについては、経済性にとどまらない慎重な議論が必要だろう。【高野聡】

大規模調査で効果検証 指針作り、議論を注視 「表層深層」高齢者のがん治療(2017年5月8日共同通信)

 がんが進行した高齢者に対する抗がん剤治療を巡り、厚生労働省が適切な治療法を示すための指針作りに乗り出す。大規模調査を通じて延命効果などの実態を検証し、高齢患者の急増に対応する。「年齢で患者を切り捨てないで」「医療費は無制限ではない」。延命効果と暮らしの質、医療費など、さまざまな論点が予想され、関係者は議論の行方を注視している。

 ▽ドル箱

 「抗がん剤について地方でも高齢患者から相談がある。体への負担や生存率などをやはり気にされている」。愛媛がんサポートおれんじの会の松本陽子(まつもと・ようこ)理事長は、患者の切り捨てを心配しつつも、治療効果の評価は必要だと考える。「高齢になると、併発の病気や家族の介護力など、がん以外のことも含めた治療の進め方の判断が必要になる」と指摘する。
 ある患者団体の代表者は「高齢者は医療機関にとってドル箱。費用対効果でもったいないとの発想があると思うが、病気によって状況は異なる」と訴える。
 日本は2025年に65歳以上が人口の3割を超える見通し。12年に新たにがんと診断された約86万人のうち、75歳以上は約36万人と推計される。
(略)
 ▽生活の質

 がん以外の病気でも、高齢者への投薬の在り方は焦点となっている。厚労省は、何種類もの薬を併せ飲むことで副作用を起こしやすい高齢者への対策も始めた。飲み残しで無駄に捨てられる薬は全国で数百億円分との試算もある。
 がん治療薬「オプジーボ」など新型の薬には、患者1人に年間1千万円以上かかるものがあり、医療保険財政の圧迫が懸念材料だ。ただ厚労省の担当者は「指針作りは、高齢者の生活の質という観点から議論を進めたい。医療費削減ありきではない」と説明する。
 公益財団法人がん研究会の野田哲生(のだ・てつお)がん研究所長は、高齢者は治療に耐えるための体力差も大きいと指摘。「無理のない治療が生活の質を高めるためにも大切。そのためには年齢だけでなく、健康状態も考える必要がある。指針作りは大変難しいが、必要なことだ」と話している。

もちろん表向き医療費削減とは別の話と言うことになっているのでしょうが、そうは言ってもやはりそちらとの関連を全く念頭に置かずに議論しているとも思えないので、やはり昨今何かと話題になる医療のコストエフェクティブネスと言う観点も含めての議論は必要になってくるかと言う気がします。
もちろん今の時代に寝たきり要介護の超高齢者に抗癌剤治療をしたがる先生もそうそういないでしょうが、では家族がどうしてもと希望された場合それを行わない根拠にも乏しいと言うのが現実で、記事にもありますがやはりガイドライン等治療指針においても年齢や患者の状態を考慮して、治療を行わない選択をすべき場合も記載して欲しいところでしょう。
また医療においては医療行為を行うことでどれくらいの延命効果があるかと言う指標がよく用いられますが、若い人と高齢者とで同じ期間の延命効果の価値は同じと考えて良いのかと言う議論もあって、社会的活動期と社会から引退した後では価値が違うとは、抗癌剤に限らず寝たきり高齢者に対する延命的治療の是非を問う場合などにもしばしば言われることではあります。
抗癌剤治療に関して言えば未だ多くの癌で完治とまではいかない現実もあり、結局は高価な延命的治療に過ぎないと言う考え方もあって、医師の実に99%までが自分が癌になれば抗癌剤は「絶対に使わない」と答えたと言う調査結果もあるそうですから、若い人であれ高齢者であれ治療を受けることの意味合いをよく考えた上で実施の是非を決めていくと言うのは大前提ですよね。

いずれにせよ○○歳以上は原則抗癌剤治療の対象外、などと一律な線引きはもちろん難しいでしょうが、高齢者に関しては別項を設けるなりして若年者とは違う指標で評価をすべきだと言えば国民世論も許容するのだろうと思われ、最終的には抗癌剤以外にもあらゆる医療において高齢者向けの治療指針が整備されていくことになるのでしょうか。
ちなみに先日は京都市が市民に対して、終末期における延命治療の是非などをあらかじめ自ら定めておくための事前指示書を配布したところ、一部の方々から抗議があったと報じられていましたが、この指示書にしても家族ではなく本人の意志を記載することがポイントで、まだまだ元気なうちからこうしたものを用意しておかなければいざ病気になってから自分の意志をはっきり伝えられないかも知れませんよね。
そう考えると臓器提供の意思表示などと同様、患者の自己決定権を尊重すべきと訴える進歩的な方々の賛同と協力を得て全国民に広まるべきものだとも言えますが、抗癌剤治療などもまさにこうした自己決定権が最大限に尊重されるべきだと言う考えも理解出来る一方で、一部抗癌剤などはあまりに高価であり医療財政を圧迫しかねないと言う現実もあるわけです。
国民全体の医療費総額がここまでと決められている中で高齢者医療費支出がその大きな割合を占めていて、現役世代には高齢者が好き放題医療費を使うツケを払わされているだけだとの不公平感も広まっていますが、その是正を図る上で年代を問わず多くの国民に了解を得やすいとっかかりとして、高齢者に対する抗癌剤治療の制限などは頃合いな落としどころになるのかも知れませんね。

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コメント

今は70ならまだまだ若い
カットするなら80からだろうjk

投稿: | 2017年5月10日 (水) 08時48分

医師の実に99%までが自分が癌になれば抗癌剤は「絶対に使わない」と答えたと言う調査結果なるものは知り合いが聞いて見たら云々というレベルの与太話です。癌などという大雑把すぎるくくりな時点でデタラメと言っていいでしょう。部位や組織に基づかずに化学療法の使用不使用に言及してしまう医師なんて医師もどきでしょう。引用するにしてももっとまともな別の例示はなかったのでしょうか?ぐり研ブログらしからぬ迂闊な論旨展開と思います。

投稿: 放置医 | 2017年5月10日 (水) 11時25分

若年患者の胃の上皮内癌に内視鏡治療ではなく抗癌剤を使う医師は通常あまりいないでしょうから、抗癌剤を使う使わないと言う設問はどんな癌にどんな状況でと言う設問の設定に依存することは明らかです。
その意味で99%と言う非常に偏った結果が出る設問がどんな内容であったのか、どのような状況でどんな意図の元に問われたのかはなかなか興味深い話だと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2017年5月10日 (水) 12時48分

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