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2017年4月14日 (金)

医師の長時間労働は応召義務が原因と国が公認

全国の病院経営者が狂喜乱舞したと言う医師の労働規制先送りですが、先日その舞台裏を伝えるこんな記事が出ていました。

医師の「働き方改革」が5年延期された理由(2017年4月12日日経メディカル)

(略)
 例えば、医療現場では救急など時間外対応をしなければならない局面が少なくないが、そこに時間外労働の上限が設けられれば人員増が必要となる。大病院の場合、億単位の人件費増も想定され、経営に大きな影響が及ぶ。そもそも地域によっては、勤務医の確保自体が容易ではない。人員増がないまま各医師の勤務時間が減ることになれば、診療の質や安全性の確保が困難になり、結果的に患者・国民が損害を被る。
 そこで医師に関しては、業務の特殊性を踏まえて残業規制の適用が先延ばしとなったわけだが、そこに行き着くまでには水面下で激しい攻防があったようだ。

 残業規制の具体策作りを進めたのは、内閣官房の働き方改革実現推進室と厚生労働省の労働基準局。だが、そこでの議論で医師の時間外労働にスポットが当たることはなかった。どちらも医療現場における医師の働き方を理解していなかったためで、無理もない。運送業や建設業とは異なり、医師の時間外労働問題はある時期まで完全にスルーされていた。
 ところが3月上旬に入り、医療提供体制や医師養成を所管する厚労省医政局が、その「穴」に気が付いた。医政局は医療現場の混乱を避けるため、実行計画で医師が残業規制の対象外となるよう関係各方面に強力に働き掛けた
 その際、医政局が持ち出したロジックは次の3つだった。第1に、医師には原則として診療を拒めない「応召義務」が課せられており、残業の上限規制によりその義務が果たせなくなる懸念がある。第2に、医師は一人前として活躍できるまでに10年以上の研鑽を必要とする職業であるにもかかわらず、人手不足という理由で安易に現場に借り出されれば、医療の質の低下を招く。第3に、自己研鑽を積むための学会への参加や研究などが「研修」か「業務」かの切り分けが難しい──。こうした理論武装が実を結び、医師の残業規制は適用が先送りされることになった。

 もっとも残業規制は、あくまで猶予されたにすぎない。今後の具体的な規制のあり方については、厚労省内に新たに設けられる検討会で議論される予定だ。そこでは、医師の勤務時間としてカウントする業務とそれ以外の業務を明確化することや、救急や分娩などは時間外労働時間規制の対象外とすることなどが議論の俎上に載りそうだ。

しかし時間外労働のいわば代名詞とも言えるような救急や分娩を時間外労働時間規制の対象外にしようとは驚くような話ですが、人間あまり無理なことを考えすぎるとこんなトンデモないウルトラC(と言う表現も古いですが)に到達してしまうものなのでしょうかね。
ちなみに昨年末に厚労省が行った「過重労働解消キャンペーン」の結果が先日公表されたのですが、主な業種の中で医療が含まれる保健衛生業の指導率が最も高く、全体平均の67%に対して実に85%の事業所で何らかの法令違反があったと言います。
こうした現状を前にかねて医師数はとにかくひたすら増やせと主張してきた某大先生なども「予算がない、医師が不足しているからという理由で、現場の医師らに犠牲を強いることは許されない」とおかんむりですが、院長補佐を務める済生会栗橋病院などはさぞやすばらしい労働環境を誇っているのだろうとうらやましく思います。
ともかくも全国病院経営者・管理者目線で見れば非常にありがたい話であっただろうこの問題先送りなのですが、今回医政局が持ち出したロジックにかなり無理を感じるところなしとしないところですし、こうした理由を元に適用延期を求めたと言うのであれば当然ながら向こう5年の期間で、これら課題が解消されるべきであると言う考えを持っていると言うことになります。

医政局が挙げた3つの理由のうち、自己研鑽のための活動を業務とするかどうかと言う点に関しては別に医療に限った話でもありませんし、今後これを業務にしないと言うことであればかえって院内の各種活動が停滞する可能性も高いのですから、いずれにせよ業務時間が増える要因にこそなれ現状より少なく計算出来るとは思えないものです。
また医療の質低下云々については定量的な評価が難しい問題ですが、すでに医学部定員の大幅増加で医学部学生の留年率が高まっている等々の弊害も指摘されており今さらな話だとは言え、いずれにせよ10年も実践力に勘定せず研鑽を積ませるだとか、増やした医師を使わずにとっておくなどと言うことは不可能であるわけで、これもあまり意味のある論点とも思えません。
そう考えるとやはり多くの人が気になるのが、医政局が医師の労働時間長期化の原因として持ち出した応召義務の扱いではないかと思うのですが、仮に他の理由なるものが何ら改善に寄与出来ず、なおかついつまでも問題を先送り出来ないと言うことになれば、この応召義務の見直しがあり得るのかどうかです。
いずれにせよ医療業界が全業種の中でもとりわけ労働環境が厳しいものであると言うことはようやく世間にも知られるようになっているわけで、その大きな理由として24時間365日いつでもと言うことを法律で義務づけられていると言うことは明らかに思えるのですが、利便性の代名詞だったファミレスや配送業などでも業務が見直されつつある時代に、医療だけがいつまでも例外扱いと言うのもおかしな話ですよね。

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コメント

交代勤務にすればいいはずですけど。>応召義務

投稿: ぽん太 | 2017年4月14日 (金) 07時46分

アクセス、コスト、クオリティ
アクセス、コスト、クオリティ
アクセス、コスト、クオリティ

医療政策を考えるときは、念仏唱えましょう

投稿: Med_Law | 2017年4月14日 (金) 08時16分

学会への参加や研修は他の職種なら間違いなく業務になると思うのですが・・・
そういう運用って定まってないのでしょうか?

投稿: クマ | 2017年4月14日 (金) 08時41分

応召義務が原因なら応召義務やめればいいじゃないw?どうせ罰則なんかないんだし、そもそも憲法違反臭ぷんぷんだしw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年4月14日 (金) 10時50分

救急車たらい回ししといて応召義務ってw

投稿: | 2017年4月14日 (金) 12時14分

売り手市場がなくなるのが嫌で長年医師が足りない状況を維持してきたんですから
長時間労働はその成果といえるんではないかと

投稿: | 2017年4月14日 (金) 12時48分

医師不足と言うよりも医療現場全体でのマンパワー不足ではないかとも感じるのですが、結局は医療費と言うパイの大きさをどうするかと言う問題でもあるように思います。

投稿: 管理人nobu | 2017年4月14日 (金) 14時46分

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