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2017年4月12日 (水)

臨床救急医学会が終末期患者の救急搬送について提言

終末期患者の救急と言う微妙に矛盾しているかにも見える問題に関して、先日こんなニュースが話題になっていました。

蘇生望まぬ場合、救命中止を 学会が初の提言 終末期患者、意思表示書など条件(2017年4月7日産経新聞)

 治療効果が見込めない終末期の患者が、心肺蘇生(そせい)を望まない本人の意思に反して救急搬送される現状を受け、日本臨床救急医学会は7日、本人の意思が確認できる書面と医師の指示があれば、救急隊員が心肺蘇生を中止できるとする初の提言を公表した。全国の救急現場では、心肺蘇生を望まない患者の蘇生中止手順などの統一基準はない

 提言では、終末期の患者が、心肺停止した場合に蘇生を望むかをかかりつけ医や家族らと事前に話し合い、望まない場合に作る意思表示書面を例示。119番通報を受けて駆けつけた救急隊員が書面を示された場合、かかりつけ医などの指示があれば心肺蘇生や救急搬送を中止できるとした。提言に拘束力はないが、専門家による指針が示されたことで、全国の消防隊が取り入れる可能性がある。

 終末期の救急搬送をめぐっては、平成25年度の調査で、一定経験を持つ救急隊員295人中16%に当たる47人が「心肺蘇生を望まない本人の意思表示書面を提示されたことがある」と回答。しかし救急隊員は患者の救命を行うのが原則で、蘇生を望まない本人や家族の意向との間で、対応に苦慮する例が増えている。

 学会の坂本哲也代表理事(帝京大医学部付属病院長)は「心肺蘇生を望んでいないなら119番通報しないなど、終末期の救急車の使い方について国民で考えてほしい」としている。

「悩み解消しない」 法整備求める救急現場(2017年4月10日共同通信)

 日本臨床救急医学会が7日まとめた蘇生措置を中止する場合の指針について、各地の救急現場からは「これだけでは悩みは解消しない」「訴訟などのトラブルになる可能性を考えると、法的な整備が必要」といった声が上がった。

(略)
 東京消防庁のデータ(2015年)では、心肺停止状態で搬送された患者のうち1カ月後も生存していた人は5・1%にとどまる。しかし、総務省消防庁の基準で救急隊は応急処置を行うことが原則と定められており、蘇生中止に対する現場の抵抗感は強い。
 秋田市消防本部の担当者は「うちでは蘇生を希望しないという書面があっても、人工呼吸と胸骨圧迫による心臓マッサージは行うと決めている。家族にも救急業務としてやらざるを得ないと説明している」と話す。
 那覇市消防局の担当者も「国から正式に考え方が示されない限り、今回の指針ですぐに運用を見直すことにはならないと思う。今と違う対応になるとしたら、正直、戸惑いはある」と漏らした。

 本人の意思と医師の指示が確認できても、家族が納得しない場合も想定される。学会の指針と同様の運用を既に取り入れている広島県の担当者は「家族の誰かから『なぜ中止したのか』と後で言われてトラブルになる可能性は残る。法律面まで含めてさらに突っ込んだ検討がされないと、悩ましさは消えない」と話した。

ちなみにこの日本臨床救急医学会なる組織、HPによれば会員が4000人強だそうですが、面白いのはそのうち医師会員は半数ほどで他はコメディカルや救命救急士などだと言いますから、この提言にしても必ずしも医師目線だけで話が出ていると言うものでもないようです。
そもそも論で言えば書面まで用意させているのに救急隊を呼ぶと言う状況に問題がありますが、本来的には坂本理事の言うように「心肺蘇生を望んでいないなら119番通報しない」と言うことが大前提なのだろうと思うのですが、一方でいざその時になって具体的に何をどうしたらいいのかと言うことを周囲の人間が理解していないと言うことも現実にあるわけです。
誰がどうやって死亡確認をするのかと言うことは事前にきちんと打ち合わせをしておかなければならないはずですが、癌などずっと継続してかかっている病気で亡くなったと言うことが明らかな場合、臨終の場に医師が立ち会っていなくても後刻になって死亡診断書を書けるにも関わらず、当事者が理解しておらず間に合わないからと救急車を呼んでしまうと言うこともあるようです。
ひどい場合には担当医師に連絡しても「今すぐには行けないから救急車を呼んでどこか病院に運んでもらって」などと言われる場合もあるようで、この辺りは終末期であるにも関わらずその時への準備があまりにも出来ていなかったと言わざるを得ませんが、今後在宅看取りを増やすと言うのであればまず改善すべき点でしょうね。

患者の自己決定権の尊重と言う考え方に基づくと、明らかに患者本人の意志に反した行為を行わうと言うのはどうなのかですが、例えば思想信条による輸血拒否の人が大量出血で救急受診した際、書面での意志表示があっても親族に連絡が取れなければ最終的には救命のために輸血を行うと言う施設も多いようです。
他方で救急隊や救急医療の担当者がこうした学会の提言で何がどう変わるのかですが、現状ではまさに後日の遠い親戚問題が勃発しかねないこと、救急車を呼んでいる=救命救急の希望があると考えざるを得ない現状があることなどから、恐らくあまり劇的な変化もないのではと言う気もします。
要するに幾ら書面を用意しようが学会が提言を出そうが救急車を呼んだ時点で救命救急処置をされる可能性は高いと言うことですが、基本的に個人の権利が尊重されるのは生きている間であって、亡くなってしまった場合は家族など生きている人間の意志を尊重せざるを得ない以上、本当に本人が処置を望まないのであればまずは家族にきちんと意志を徹底しておくことが必要なのだと思いますね。
無論こうした書面まで用意しているのですから担当医も知っていてしかるべき話なので、書式が有効なものかチェックするのと同時に家族や周囲の人間とも意志確認と段取りを徹底をしておくのも担当医の仕事となるのでしょうが、個人詳報保護などの問題がクリア出来るのであれば将来的には特に田舎などでは、地域の消防救急とも事前に情報を共有出来ていればよいのでしょうけれどもね。

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コメント

在宅診療っても普段の管理だけなのか、看取りまで引き受けるのかで違うからね
そこんとこはっきりしとかないとドタバタすることになっちゃう

投稿: | 2017年4月12日 (水) 09時07分

一番問題なのは、訴訟のリスクですよね。
そこら辺を上の人たちでうまくやってくれないと、現場の判断だけでは無理だと思います。
ただ、また書類が増えるのは困りますが。

投稿: ふぉれすと | 2017年4月12日 (水) 11時23分

救急隊とは別に、在宅お亡くなり確認隊みたいの作ればいいんじゃない

投稿: | 2017年4月12日 (水) 12時01分

実際に在宅専門クリニックの場合、複数施設で連携して当番制で死亡確認をしている場合もあるそうですね。

投稿: 管理人nobu | 2017年4月12日 (水) 12時18分

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