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2017年4月24日 (月)

お産にはやはり産みの苦しみが必要?

先日こんなニュースが出ていたのを御覧になった方も多いかと思いますが、意外と世間の皆さんの注目を集めているようです。

妊産婦、今でも年50人前後が死亡  横ばい状態、なぜ減らないのか(2017年4月19日J-CASTニュース)

   日本の妊産婦死亡率は、厚労省によると、世界的に非常に低いとされるが、それでも最近の6年余で298人が亡くなっている。そのうち、無痛分娩で13人の死亡が今回初めて分かり、厚労省の研究班が緊急提言を行った
   妊産婦が亡くなれば、病院は、日本産婦人科医会にそのことを届けることになっている。

「予期しない出血など、不確実性の部分がある」

   医会の統計によると、2010年1月から16年4月まで、全国で計298人の妊産婦が死亡していた。この6年余の死者数は横ばい状態で、毎年50人前後に上っている。出産件数は、年間100万人ほどあることから、妊産婦死亡率は1%にも満たない計算だ。
   死因は、子宮内などの大量出血が最も多く、続いて、血圧が上がることなどからの脳出血、羊水が血液の中に入ることで起きる羊水塞栓症などで、この3つで半数ほどを占める。

   それにしても、なぜ毎年、妊産婦が50人も亡くなるような事態になっているのか
   厚労省の地域医療計画課では4月18日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。
    「それは、分娩の中では、予期しない出血や羊水塞栓などが起きるということです。一瞬のうちに心停止が起きることもあります。日本は、世界で一番妊産婦を助けられる国だと思っていますが、不確実性の部分が出て来ます」
   ただ、病院側の不手際が原因とみられるケースも報じられている。愛媛県今治市内の産婦人科医院では、3年間で2人が大量出血などで死亡していたことが分かり、日本産婦人科医会が16年12月に血圧管理などで不十分な点があったとして指導を行っている。厚労省も、「病院間の連携をしっかり取るようにするなど、妊産婦の死亡を減らす努力は必要」だとしている。

無痛分娩での死亡あるも、「率が高いとは言えない」

   6年余で298人いる妊産婦死亡のうち、厚労省研究班の調べで、麻酔を使って陣痛を和らげる無痛分娩が13人含まれていることが分かり、研究班が4月16日に発表した。
   13人のうち1人が麻酔による中毒症状で死亡していた。ほかの12人は、大量出血や羊水塞栓症といった普通分娩でもありえる死因だった。研究班では、普通分娩と同様に、陣痛促進剤の使用や、赤ちゃんを引っ張って出す吸引分娩も行われることから、病院は緊急時に備えた体制を整える必要があるとする緊急提言を行った。

   無痛分娩は、フランスやアメリカでは主流になっているが、普通分娩に比べて死亡リスクはどう考えられるのか。
   厚労省の地域医療計画課では、「普通分娩に比べて死亡率が高いというわけではなく、今回の提言は、無痛分娩は危険だなどと言っているものではありません。無痛分娩での死亡数が初めて出たので、提言を行ったということです」と取材に説明している。


麻酔使った「無痛分娩」で13人死亡...厚労省、急変対応求める緊急提言(2017年4月17日読売新聞)

 出産の痛みを麻酔で和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」について、厚生労働省研究班(主任研究者・池田智明三重大教授)は16日、医療機関に対し、急変時に対応できる十分な体制を整えた上で実施するよう求める緊急提言を発表した。

 研究班は、2010年1月から16年4月までに報告された298人の妊産婦死亡例を分析。無痛分娩を行っていた死亡例が13人(4%)あり、うち1人が麻酔薬による中毒症状で死亡、12人は大量出血や羊水が血液中に入ることで起きる羊水塞栓(そくせん)症などだったという。

 池田教授によると、国内の無痛分娩は近年、増加傾向にあり、データ上、無痛分娩で死亡率が明らかに高まるとは言えないという。ただし、「陣痛促進剤の使用や(赤ちゃんの頭を引っ張る)吸引分娩も増えるため、緊急時に対応できる技術と体制を整えることが必要だ」と話している。

いや、何故減らないのかと言われても日本の妊産婦死亡率は他のあらゆる疾患の医療を圧倒する勢いで激減してきたわけですが、これで減っていないと言うならこれだけ技術も進歩し若者の車離れが懸念されるほどの時代になってもまだ毎年何千人も死者を出している自動車業界などはどれだけ怠惰なのかと言わなければならないですよね。
医療がどれほど進歩しても医療にアクセスする間もなく突然の発作等で亡くなってしまう方々が一定数いらっしゃるのと同様、一般的に定期的な検診など丁寧なフォローアップを行われているにも関わらず重大な結果を招いてしまう妊娠も一定数いるのだと解釈すべきですが、当然ながらさらにそのリスクを下げる努力の余地はあるわけです。
その最たるものが未受診妊婦、いわゆる野良妊婦の問題だと思うのですが、今回の死亡例の中でこうした未受診妊婦の確率が高いのか低いのかと言うことは知っておきたいですし、近年何かと話題になることの多い高齢出産や高度な生殖医療などの影響なども知りたいところですね。
一方で今回の記事を見ていて興味深く感じたのが、何故か無痛分娩を悪者にしようとしているようにも見えると言うことなのですが、記事にもあるように日本では無痛分娩の実施率は非常に低く、フランスの8割、アメリカの6割など諸外国の高い実施率に対してわずかに2.5%ほどしか行われていないのだそうで、今回の提言と併せて日本の産科医は無痛分娩がそんなに嫌いなのか?とも受け取られかねないですよね。

無痛分娩の実施率が2.5%しかないのに死亡例の4%が無痛分娩の妊婦であるなら、それは危険性が高いと言うことなのではないか?と考えてしまいそうですが、わずか40人に1人しか行われていない例外的な処置を敢えてしている妊婦さんと言うのは、心疾患など基礎疾患などがあり出産と言う大きな負荷に耐えられない可能性があると判断されたケースが相対的に多いのではないかとも想像できそうです。
そもそもお産の苦しみと言うのは全ての痛みの中でも非常に高いレベルにあって、だいたい指の切断と同程度だと言うのですが、その筋の方が指を落とすにしても普通は一瞬ですむだろうところを下手すれば延々と数十分以上も続くのだと考えると、むしろお産を無麻酔で行うのは外科手術を無麻酔で行うのと同じくらいには無謀あるいは非人道的なことなのではないか?と言う気もしてきます。
諸外国では豊富な経験があるのですから安全性などに関するデータも豊富にあるのでしょうが、いずれにせよ麻酔までかけるのですから今の時代「急変時に対応できる十分な体制」も必要なのは当然ですし、どうも今回の厚労省の緊急提言は言葉足らずで余計な誤解を招いているのではないかと言う気もするのですが、問題はそれが意図的に行われていることなのかどうかです。
今回の発表によって無痛分娩は危ないと言う印象づけが意図的に行われようとしているのだとすると、それが産科医の世界のコンセンサスに基づくのか、今回提言を行った池田教授以下偉い先生方の考えなのか、それとも記事を書いた読売以下マスコミ各社の記者達の見解なのかも気になるところですが、現場で実臨床に従事されている産科の先生方はこのニュースについてどう感じられているのでしょうね。

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コメント

少し話がズレるかもですが、身近な範囲で「分娩の痛み無しには母性が云々」と世迷い言を宣っているのは意地悪な姑か、無理解な男性です。
姑の問題はともかく、男性に関して言えばそんな馬鹿共は漏れ無く妻の1出産毎に割礼をしてやりゃいいのにと思っています。

投稿: | 2017年4月24日 (月) 08時03分

お産は危ないってことを再認識してもらわないとね

投稿: | 2017年4月24日 (月) 09時15分

キャサリン妃だって無痛分娩なのに
そんな危険なら王室がやるわけないじゃーん?て思わない?

投稿: | 2017年4月24日 (月) 11時09分

日本で無痛分娩が進まないのは、麻酔科医の常駐など急変時にも対応できる十分な体制を取ることが難しいからと言う理由もあるようで、その意味でもますますハードルは高くなった気がします。

投稿: 管理人nobu | 2017年4月24日 (月) 14時39分

ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院で、「無痛分べん」で出産した31歳の女性が意識不明になり、その後、死亡していたことがわかりました。
警察は、女性が呼吸不全になった際に、医師が人工呼吸などの十分な対応をしなかったとして、業務上過失致死の疑いで書類送検する方針です。

捜査関係者などによりますと、ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」で、
31歳の女性が、麻酔で陣痛の痛みを和らげる「無痛分べん」で出産中に意識不明の状態になりました。
赤ちゃんは無事に産まれましたが、女性は、およそ10日後に低酸素脳症で死亡したということです。

これまでの捜査で女性は、59歳の院長が背骨に局所麻酔の注射をした際に容体が急変し、呼吸不全になったと見られることがわかったということです。

警察は、人工呼吸を続けて体の状態を回復させるなどの十分な対応をしなかったとして、近く院長を業務上過失致死の疑いで書類送検する方針です。

院長はNHKの取材に対し、「弁護士に任せており、コメントできない」としています。

「無痛分べん」をめぐっては、ほかにも背骨に麻酔の注射をした際に死亡した例があり、厚生労働省の研究班は通常の分べんとは違った管理が求められるとして、
今月、全国の医療機関に十分な体制を整えるよう求める緊急提言をしています。

この医院はホームページで、当面、無痛分べんを行わないことを明らかにしています。

<人気高まるも副作用には細心の注意必要>

「無痛分べん」は、出産の際に母親に麻酔をかけることで陣痛の痛みを和らげる分べん方法です。

厚生労働省の研究班の調査では平成20年の時点で全国およそ250の施設が無痛分べんを実施していたということですが、陣痛の痛みを感じずに
、出産できることなどから、妊婦の間で人気が高まっていて、ここ数年でさらに増えていると見られます。

一方、麻酔をかける必要があることから、副作用には細心の注意が必要だとされています。無痛分べんでは背骨の中に注射をするなどして局所麻酔をかける「硬膜外麻酔」と呼ばれる方法が一般的です。
硬膜外麻酔は、一般の産科の医師でも行うことが認められていますが、麻酔科の専門医によりますと、
誤って血管や脊髄などに麻酔薬を投与してしまうと意識を失って呼吸ができなくなるケースや血圧が急激に低下するケースなど深刻な合併症が起こるということです。

いずれも迅速に対応すれば回復するということで、麻酔をかける際には患者の変化を見逃さないよう細心の注意が必要だということです。

無痛分べんをめぐっては、今月、厚生労働省の研究班が無痛分べんには通常の分べんとは異なる管理が求められるなどとして、
医療機関に対し、十分な医療体制を整えることを求める緊急提言を行っています。

投稿: | 2017年4月27日 (木) 08時00分

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