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2017年4月26日 (水)

大量に薬をもらってきては捨てていると言う方々もいらっしゃるそうで

経験的にもまあそうなんだろうなと誰しも感じているのだと思うのですが、では現実的にその対策はどうなのか?と考えると少しばかりややこしいのがこちらの問題です。

副作用が危険!高齢者の「多すぎる薬」防止、国が指針策定へ(2017年4月17日読売新聞)

 高齢者に多くの種類の薬が処方され、副作用で体調が悪化するケースが少なくないことから、厚生労働省は、薬の処方を適正化するためのガイドライン(指針)を策定する方針を固めた。
 医療ビッグデータを活用して全国規模で実態を分析し、副作用を招きやすい危ない薬の飲み合わせなどを調べる。17日夕、有識者検討会の初会合を開く。

 高齢者は薬を分解する機能が低下しており、副作用が出やすい。複数の持病を抱えることが多く、薬の種類が増えがちだ。高齢者が6種類以上の薬を併用すると、一層副作用が出やすくなり、転倒などを招く恐れが高まるというデータがある。医療機関からは副作用が原因で入院した高齢患者の報告が相次いでいるが、実態は明らかではない。
 厚労省は検討会で薬の専門家らから意見を聞き、問題点を整理。その後、患者が医療機関でどんな治療を受けたのかが分かる診療報酬明細書のデータベースの情報や医薬品医療機器総合機構に寄せられた副作用報告などを分析し、薬が増えた際に起きやすい副作用や、危ない薬の飲み合わせなどについて調べる。関連経費は2018年度予算の概算要求に盛り込む方針。
 指針の策定は、分析結果なども踏まえ、18年度末をめどに目指す。持病が多い高齢者は複数の医師から薬の処方を受け、結果的に多くの薬を服用しているケースも多い。そのため医師、薬剤師が、服薬状況を共有して薬の処方を減らす体制作りも進める。

意識障害など深刻な症状も

 高齢者の薬の副作用は、ふらつき、転倒による骨折、意識障害など、心身に大きなダメージを与えるものも少なくない。過去には、日本老年医学会が2015年に「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を改訂し、慎重な投与が求められる薬のリストをまとめ、注意を促している。厚生労働省も昨年度の診療報酬改定で、不必要な薬を減らすことを促す仕組みを導入したが、効果は十分上がっているとはいえない現状だ。
 厚労省はまず実態解明を進め、科学的な根拠を基に危険な薬の組み合わせなどを医師や薬剤師に示し、対策を一層強化する考えだ。高齢者の健康を守るため、医療関係者も積極的な取り組みが求められる。

ちなみに老年医学会が作成した一般向けのパンフレットはこちらから参照できるのですが、高齢者は代謝が落ち薬も増え副作用が出やすいだとか、注意すべき飲み合わせの例だとかいちいちごもっともではあるものの、では患者に何がどう出来るのかと言えば自分の飲んでいる薬をきちんと申告することくらいで、結局医師が処方する内容次第ではないかと言う意見ももっともだと思いますね。
熱が出たと言った急性期の症状は別として、高齢者に多い慢性期の症状に対する定期的な投薬に関しては医師が適当に思いつきで出しているのではなく、各種学会が出しているガイドラインに従って行っていることですから、老健医学会が何と言おうが服薬中止による悪化のリスクを利益が上回ると言うエビデンスがない以上、現場の医師としてはガイドラインに従うしかありません。
80歳90歳の超高齢者に数十年先の予後に差が出るからと予防的な治療を過剰に行うことは無意味だろうとは思うのですが、では70歳ならどうなのか、60歳ではどうなのかと考えた場合に明確な線引きが出来るわけでもなく、また高齢ではあっても現時点で元気が良い人とADLが低下している人を同列に扱って良いのかと言う問題など、定型化するのが難しい問題なんだろうとは感じます。
ただ高齢者にこんな多くの薬を出すのは馬鹿馬鹿しい、有害無益だと休薬した後で脳卒中や心筋梗塞が発症し、万一にも紛争化した場合に厚労省なり老年医学会が薬を減らせと言ったから…では説得力として十分なのかどうかで、この辺りは各種ガイドラインなどにおいて高齢者医療に関する別項を立てるなどの対策も必要になるのかと思いますね。

副作用が出る、トラブルが多発すると言うこともさることながら、国としては当然財政的な損得勘定の観点からどうなのかと言う点も気になってくるのだと思いますが、社会的に引退し生産性が失われた高齢者の場合税収等でさほど貢献出来るわけではなく、国や自治体から見れば社会保障コストがかかる分だけ常に持ち出しの赤字状態になっているとも言えると思います。
その意味では理想的には歳をとっても周囲の手がかからない元気な状態でいて、早い段階で長患いすることなくポックリ逝ってくれるのが財政上は一番好ましいと言うことになるのですが、命の価値はお金には換えられない等々と大騒ぎする前に冷静になってみると、多くの一般の方々が望ましいものと考えている老後のあり方とそう違ったものでもないようにも感じられるのは気のせいでしょうか。
大量にもらっている薬にしてもきちんと飲まずに捨てられている場合も未だに少なからずあるのだそうで、飲まないのであればそもそも処方する必要もないだろうと言うことなのですが、飲まないと言う意志があるのであれば診察室の中できちんとそう自己主張すべきだろうし、医師の側としても患者の意志をきちんと確認しながら対応するのは当然ではありますよね。
安楽死が合法化されているオランダではこのところ、特に不治の病気等の事情がなくとも高齢者にはもう人生が終わったと感じた時点で安楽死する権利を認めようと言う動きも出ているのだそうですが、日本もいきなりそうまで行かずとも何を目標に治療を行うかと言う点を考えておかないと、高齢者医療は誰に取っても喜ばしくない方向へと迷走してしまいがちな側面はあるのでしょうね。

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コメント

入院してきた患者が持参した睡眠導入剤を”きちんと”飲ませたら日中傾眠になったとか、降圧剤を”きちんと毎日”飲ませたら下がりすぎて意識障害を起こした、なんて話は病院の「あるある」ですね。
あるいは呼吸器科からβ刺激薬が、循環器科からβブロッカーが処方されていた、という類のケースもけっこうありますね。

ただ、降圧剤の用量調節くらいならたいした手間ではありませんが、
相反する作用の薬の調整はそれなりに手間暇かけるべきでしょうし、症状が落ち着いていれば敢えて手を出したくはないですよね。

ウチみたいな、何もないけど時間だけはたっぷりあるところばかりではないですから。

投稿: JSJ | 2017年4月26日 (水) 08時36分

ただまあ、いかに処方をスッキリさせるかは内科医の腕のみせどころだと思いますよ。誰も褒めちゃくれないけど。
ゴテゴテ継ぎはぎだらけの処方を見ると(処方に歴史あり、とは言え)、よほど難しい症例なのか医者の腕が悪いのか、て思います。

投稿: JSJ | 2017年4月26日 (水) 09時30分

逆紹介患者の処方って切りにくいイメージがあるんだけど俺だけかなあ

投稿: | 2017年4月26日 (水) 12時10分

何を処方するかは診療に責任を持つことと密接に関連しているので、病診連携ではそれなりに気を使わざるを得ないのでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2017年4月26日 (水) 20時09分

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