« 手術の立ち会い人を求められたが誰も頼める人がいない場合 | トップページ | 病院から消えた高齢者が一ヶ月後に遺体で発見 »

2017年3月 8日 (水)

風邪に抗生剤投与は御法度に

医療現場で長年議論されていたことが、意外な方面から解決しそうだと言うニュースが出ていました。

「風邪に抗生物質投与は控えて」 厚労省が手引書(2017年3月6日日本経済新聞)

 厚生労働省の有識者委員会は6日、軽い風邪や下痢の患者に対する抗生物質(抗菌薬)の投与を控えるよう呼びかける手引書をまとめた。抗生物質を使いすぎると薬剤耐性菌が増え、治療に有効な抗生物質が将来なくなる事態が懸念されているため。早ければ今月中にも、日本医師会などを通じて全国の医療機関に配る。

 手引書では、一般的な風邪の原因となるウイルスには抗生物質が効かないことから、「投与を行わないことを推奨する」とした。医師が患者に説明する際に「抗生物質は効かない」と告げた上で、症状が悪化する場合は再受診するよう指示しておくことが重要だとしている。

 一方、ふだんより排便回数が1日3回以上増える急性下痢症は、ウイルス性、細菌性にかかわらず自然と良くなることが多い。そのため安易に抗生物質を使わないよう呼びかけている。

 厚労省によると、薬剤耐性菌への対策を取らなければ、2050年には同菌によって世界で年1千万人が亡くなるとの推計もある。

風邪と呼ばれる疾患も単一の感染症を示すものではなく、当然ながら抗生物質の効く細菌性のものも含まれているはずですが、症状などからこれはまず確実にウイルス性だろうと推察される場合も多いのは事実であり、その場合抗生物質を投与しても効果がないことは明白に見えます。
ただ医師の間にも未だにこうしたケースでも抗生物質が有効であると主張する方はいて、ウイルス性の風邪で痛んだ呼吸器に最近が二次感染する恐れが云々だとか様々な理屈は考えられているようですが、どのみちそうした場合風邪症状が長引き重症化しているわけなのですから、記事にもあるように初診時の処方で軽快しなければ再診をと指導するのが筋でしょうね。
むしろアレルギーや薬剤耐性菌のリスクを考えるとほとんどの場合、抗生剤の使用による不利益の方がずっと大きいと考えるべきですし、実際に米国小児科学会も風邪に抗生剤は(無益ではなく)有害である(”Unnecessary Antibiotics CAN Be Harmful”)と明言しているわけです。

ただまあ、そうした当たり前の理屈は全て理解した上で、現場の臨床医を悩ませているのは結局のところ「抗生剤を下さい」と言う患者にどう対応するのかと言う一点で、こうした理屈を片っ端から説いたとしても理解が得られる場合ばかりではないですよね。
むしろ忙しい外来の時間をその種の手間がかかる患者の対応によって無駄に浪費されてしまうくらいなら、さっさと抗生剤を処方してやった方がよほどにいいと言う声も決して少なくことが、医学と言うより医療におけるこの問題の所在を示しているように思います。
今回の厚労省の手引き書はそうした患者への対処の一助となるのかどうかですが、医学的に妥当でもなければ推奨もされない治療を患者希望で敢えて行うと言う場合は保険診療の範疇ではなく、全額自費の自由診療で対応させていただくと言うのが本来の筋道ではあるのかも知れません。

|

« 手術の立ち会い人を求められたが誰も頼める人がいない場合 | トップページ | 病院から消えた高齢者が一ヶ月後に遺体で発見 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

今のブームは糖尿病に睡眠薬らしいですね。
それでも抗生物質信者も少し減ったような気もしますけど。

投稿: ぽん太 | 2017年3月 8日 (水) 08時27分

風邪かどうかがわかるのかどうか

投稿: | 2017年3月 8日 (水) 09時10分

当然ながら症状所見等から自然軽快が見込めないような場合には、初診からの対応もより慎重になる必要はあろうと思います。

投稿: 管理人nobu | 2017年3月 8日 (水) 13時29分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/64984599

この記事へのトラックバック一覧です: 風邪に抗生剤投与は御法度に:

« 手術の立ち会い人を求められたが誰も頼める人がいない場合 | トップページ | 病院から消えた高齢者が一ヶ月後に遺体で発見 »