« 今日のぐり:「駅釜きしめん」 | トップページ | 厚労省がついに医療行為と刑事責任について研究を開始 »

2017年3月13日 (月)

未だ世間に広まっているらしいあの学説

まともな医療関係者からはほぼ相手にされていないにも関わらず、世間的にそれなりに力を得ている一見医療っぽい何かと言うものは相応にあるもので、日本でも数年前に砂糖玉を舐めさせておけば病気が治ると主張して多くの犠牲者を出したホメオパシーの実態などが話題になったことがありました。
こうした類のものの中でも根強い支持者がいるのが元慶応大学放射線科の某先生を中心とした俗に言うガンモドキを主張する方々ですが、先日はこんな記事が出ていました。

がん検診で見つかるガン 放っておいても自然に治る例多数(2017年3月10日NEWSポストセブン)

 がん検診を受けると、「命を奪わないガン」をたくさん見つけてしまうことになるのだという。それが最も多いと考えられているのが、「前立腺がん」だ。「PSA(前立腺特異抗原)」という血液を調べる検診が普及した2000年頃から、新規患者が激増した。
 京都大学医学博士の木川芳春氏は、このような命を奪わない病変を「ニセがん」と呼ぶ。

「新規患者がうなぎ上りに増えているのに、死亡者の数が横ばいなのは、命を奪わない『ガンに似た病変』をたくさん見つける『過剰診断』が多いことを意味しています。日本では検診によって『ニセがん』をたくさん見つけることで、新規患者の水増しが行なわれているのです。私は、前立腺がんの半分以上は『ニセがん』だと考えています」

 前立腺がんでは、検診で見つかる早期がんのほとんどが、いわゆる「ニセがん」なので、それで死ぬことはない。つまり、1~3期の10年生存率が100%と異常に高いのは、早期に見つけて治療した成果ではなく、元々命を奪わない「ニセがん」ばかりを検診で見つけている結果といえる。
 こうした「ニセがん」は、「乳がん」「子宮頸がん」「甲状腺がん」などでも多いと指摘されている。これらのがんも、全症例の10年生存率が80~90%台と軒並み高い。数字がよく見えるのは、「早期発見、早期治療によりガンが治った」というよりも、前立腺がんと同様に、命を奪わないニセがんが多く含まれているからなのだ。

医師で医療統計が専門の新潟大学名誉教授・岡田正彦氏もこう話す。
「がん検診で見つかるガンの中には、放っておいてもいいガンや、自然に治るガンが、かなりの割合で含まれています。このようなガンばかりを見つければ、当然、生存率は高くなります。昔に比べて生存率が高くなったように見えるのは、治療が進歩したからとは断言できないのです」
 一方、命を奪う「本物のガン」は進行が非常に速いため、定期的にガン検診を受けても、早期で発見することは難しい。そうしたガンは、周囲に広がっている3期や、転移のある4期の状態で見つかることが多いので、必然的に10年生存率が低くなる。
「食道がん」「肝胆膵がん」「肺がん」「卵巣がん」などで全症例の10年生存率が低いのは、進行が速い悪性度の高いガンが多いからだ。これらのガンは早期発見することも、完全に治すことも、まだまだ難しい。
 10年生存率からは、このような厳しい現実も読み取られるべきだろう。
●鳥集徹(ジャーナリスト)と本誌取材班

しかし○○大学医学博士とはあまり聞かない表現だなと興味深く拝見したのですが、こうした主張に対する反証としては、かなりの割合で含まれていると言うガンモドキなりニセがんを、本物の癌とどうやって区別するのか?と言う一点を指摘すればすむ話だと思います。
そもそも論として癌とは上皮性の悪性腫瘍であり、自然に消えてなくなるようなものを悪性腫瘍と言っていいのか?と言う疑問もあるかと思いますが、この辺りは組織学的悪性度と臨床的悪性度の違いであるとか様々な議論がある得る部分ですし、実体験でそうしたケースを多数知っている臨床医ほどガンモドキ理論を一刀両断しにくいと言う事情は理解できます。
ガンモドキ論で言うところのガンモドキなるものを一般的に言うところの良悪性境界病変などに置き換えて読んでみればさほどの違和感は感じない場合もありますが、こうした場合どういった所見があれば悪性を疑うと言った議論を長年のデータの積み上げによって検証が続いている場合がほとんどであり、逆に言えばそうした地道な作業なくして話が進まないと言うことですよね。
本物か偽物か区別出来ないものを根拠もなく偽物と考えて放置しろでは単なるトンデモ理論となってしまいますから、ひとまず何をもってガンモドキだと判断するのかと言う明確な基準を提示いただかないことには話が進まないと思うのですが、残念ながらこの種の主張をされる先生方の多くはこの最も重要な点には全く興味がないように見えて仕方がありません。

ところで興味深いことにこの種の主張に与される方々には多くの場合、医療界は患者が減れば損をするからどんどん患者を増やそうとしているのだと言った主張が見られるのですが、癌診療に携わっている臨床医の多くは基幹的医療機関に勤務しているものと思われ、日々激務に追われ過労死の心配をしこそすれ患者をどんどん増やそうなどあり得ないと言う素朴な反発もありそうですよね。
またガンモドキ論一派とされている方々の中にも、これこれの場合急激に悪化することは稀で、自然に軽快する場合もあるから少し経過を見ましょうと言った妥当な患者説明をしていらっしゃる方もいるのかも知れませんし、場合によってはマスコミバイアス等によって発言を切り貼りされ誤解を受けていると言う不幸なケースもあるのかも知れません。
ただそうした場合であるほど言えることですが、ともかくも世間的にかくも「誤解」され患者に不利益を与えている現実に対しては認識を新たにしていただきたいものですし、患者がガンモドキ論を信じて悪化してしまった場合、他人に尻ぬぐいだけ押しつけたりせずにちゃんと最後まで面倒をみろと考えている臨床医はそれなりに多いのではないかと思います。

|

« 今日のぐり:「駅釜きしめん」 | トップページ | 厚労省がついに医療行為と刑事責任について研究を開始 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

そう言えば近藤先生はまよもな雑誌に論文出してたんでしたっけ?
査読した先生がどんなコメントつけたか見てみたいですけど。

投稿: ぽん太 | 2017年3月13日 (月) 08時28分

近藤誠氏を取り上げたこちらNATROMの日記さんのコメント欄なども、なかなかに興味深い議論であると思います。
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20141231

投稿: 管理人nobu | 2017年3月13日 (月) 14時03分

こいつらも大差ないってことですねわかりますw
http://toyokeizai.net/articles/-/161828

投稿: | 2017年3月13日 (月) 23時48分

>医療界は患者が減れば損をするからどんどん患者を増やそうとしている

絶対誰か内部告発すると思うんですが…(名推理
医療界どんだけ一枚岩なんだよw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年3月14日 (火) 10時31分

うちの院長事務長はそれに類することを言いますがw

投稿: | 2017年3月14日 (火) 11時47分

厚労省 第19回がん検診のあり方に関する検討会(資料)

資料3 がん検診における過剰診断(祖父江構成員提出資料)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000137845.pdf

厚労省も応援しています「がん検診の不利益」

投稿: 非医師 | 2017年3月22日 (水) 18時24分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/65007474

この記事へのトラックバック一覧です: 未だ世間に広まっているらしいあの学説:

« 今日のぐり:「駅釜きしめん」 | トップページ | 厚労省がついに医療行為と刑事責任について研究を開始 »