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2017年3月 1日 (水)

病院会、医師の働き方改革にとことん抵抗を決める

本日まずは先日から話題になっているこちらのニュースを紹介してみましょう。

ヤマト運輸が荷受けの抑制を検討 ネット通販拡大で、労組が春闘で要求(2017年2月23日産経新聞)

 宅配便最大手のヤマト運輸が、荷受量を抑制する検討に入ったことが23日、わかった。労働組合が今年の春闘の労使交渉で会社側に要求した。インターネット通販の拡大などを背景に宅配個数が増える半面、トラックドライバーなどの人手不足で慢性化している長時間労働の軽減を図る。

 人手不足は業界共通の課題で、最大手の動きに他社が追随する可能性がある。

 労組はまた、終業から次の始業まで最低10時間空ける「勤務間インターバル」の導入も要求。働き方改革を求める一方、賃上げ要求は定期昇給とベースアップの合計で平均1万1千円と前年水準(前年妥結額は5024円)に据え置いた。

 ヤマト運輸の平成28年3月期の宅配便取り扱い個数は、過去最多の17億3千万個。今期はこれを超える見通しで、労組は、次期の宅配個数を今期以下の水準に抑えるよう求めている。

 会社側はネット通販などの大口顧客に値上げを求めていく方向。交渉次第で荷受け停止の可能性もある。ドライバーの負担が重い夜間の時間帯指定配達も、見直しの対象となり得る。

 親会社のヤマトホールディングスは1月、人手不足による人件費高騰などを背景に、今期の連結純利益予想を従来の390億円から340億円に引き下げた

ぶっちゃけ某ネット通販会社との取引が激増していると言うのが破綻最大の理由なのだそうですが、そもそもこのネット通販会社との取引については2013年に別の大手運送業者が要求ばかり高くて対価は低く、元が取れず業務負担ばかりが増すからと撤退したと言う経緯があり、事実上ヤマト運輸の一社独占になっていました。
この背景事情としてヤマト運輸の場合下請けに配達を依頼するのではなく自社配送であり、配達効率さえ上げられれば利益が出ると言う目論見だったそうですが、実際には現場が増え続ける労働量に耐えきれなくなったと言うことで、注目いただきたいのはその結果荷物の取引は増えているにもかかわらず人件費高騰等から利益が落ちていると言う現実ですが、同社の決断を後押ししたのはこうした部分だったのでしょう。
このネット通販による運送会社の疲弊については国も再配達を減らす宅配ボックスの普及など対策を講じている一方、ヤマト運輸も大手取引先と配達料の再交渉や引き受け荷物量の制限などを検討中だそうで、ともすれば配達料無料などと言う言葉で配送業者に無用な犠牲を強いてきた大手通販会社の姿勢も問われることになりそうですね。
ともかくも昨今では世の中どこでも人手不足であるせいか、現場で実際に働くスタッフの労働環境に配慮しない組織は結局のところうまくいかないと言う当たり前の理屈がようやく滲透し始めているのは良い傾向だと思うのですが、そんな中でひとり時代に逆行しているかのように見える業界があるのだそうで、先日出ていたこちらの記事を紹介してみましょう。

「医師は適用除外を」、時間外労働の上限規制 堺日病会長、四病協・日医の共同で要望予定(2017年2月27日医療維新)

 日本病院会会長の堺常雄氏は、2月27日の定例記者会見で、政府の「働き方改革実現会議」担当の加藤勝信・内閣府特命担当大臣と、塩崎恭久厚労相に対し、導入が検討されている時間外労働の上限規制について、医師を適用除外とするよう要望する方針を明らかにした。日病を含む四病院団体協議会および日本医師会とともに、今週中にも行う予定だという。
 堺会長は、「働き方改革の趣旨に反対しているわけではなく、全面的に賛同して協力していく。しかし、できることと、できないことがある」と説明、「医師には応招義務があるなど、医業の特殊性についての理解を求めていく」と述べた。「上限を設定すると、医療には多大な影響がもたらされるのではないか」と指摘し、別途、オールジャパンで医師の働き方等について議論する場を設けることが必要だとした。また研修と労働の切り分けも難しく、その解釈も分かれることから、ガイドライン作成も求められるとした。

 「働き方改革実現会議」では、時間外労働を最大で月平均60時間、年720時間までとし、違反企業に罰則規定を設けることなどを検討。3月末までに実行計画をまとめる予定になっている。ただし、一部の職種については、適用除外される。
 日病は2月25日の常任理事会で、本問題について検討した。「理事には大学関係者もおり、大学の助教以上は裁量労働制であり、適用除外になるようだが、一般病院においては、管理者以外は裁量労働制は認められない」(堺会長)。
 堺会長は会見で、過去の経緯を振り返り、医師の宿日直を時間外労働として扱うかどうかなど、医師の労働の解釈については曖昧になっていた部分があると説明。しかし、宿日直を時間外労働として認めるか否かが争われた奈良県立奈良病院の裁判などもあり、ここ数年、労働基準監督署の対応が厳しくなっているほか、電通職員の過労死事件などもあり、長時間労働の是正が社会的に重要課題になっていると情勢分析。
 「病院からすると、医師に時間外労働の上限が設けられると、なかなか厳しい」と堺会長は述べ、上限設定された場合、人的・経済的コストが増大し、救急や周産期医療など、急変に対応できなくなる懸念もあり、地域医療への影響も大きいとした。実際、労基署の立入検査を受けた病院では、長時間労働是正のため、救急指定を返上したケースもあるという。さらに医師が時間外対応を求められる場面として、患者家族への説明も挙げ、医師の労働時間短縮には国民の理解も必要だとした。

 常任理事会では、「上限を設けたら、勤務医のレベルが低下するのではないか」などの懸念も呈せられたという。米国では、研修医の労働時間は週80時間以内が原則とされ、上限に達すると、診療の途中でやめるケースもあるという。また研さんの機会が減ることも想定されるとした。

しかし「勤務医のレベルが低下する」だの「研さんの機会が減る」だの、他人様の健康には全く気を遣わない割に妙なことにはよく心配していただけるものだと感心するのですが、現場からは「どうせ当直などやってない年寄りがこういうことを言う」と散々な評判であるのは当然であり、国や労基署もきちんと正しく門前払いをすると共に引き続き労基法無視の職場に対しては厳しい対応を取っていただきたいものだと思います。
日病などは医師を雇って働かせる立場に立つ団体ですから、経団連などが「労働時間に上限を設けると業務が回らない。上限撤廃を」と言い出すのと同じようなものですが、電通事件などで電通を批判していたマスコミなどは当然こうした業界団体の妄言を思い切りバッシングしなければならない道理ですし、今後この件についてどのようなスタンスで報じていくのかも注目されるところですね。
ちなみに堺氏は医師の労働時間が長時間化している理由として応召義務をあげているそうですが、長時間労働が医師の能力を低下させ医療事故を招く大きな要因となり得ることが明らかになっている現在、本当に問題意識があるのであれば原因対策としてまず応召義務撤廃を主張すると言うのが筋なのではないかと言う気がします。

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コメント

医師会もこんな話に乗っちゃっていいのかな?

投稿: ぽん太 | 2017年3月 1日 (水) 08時46分

日本医師会もトップは個人事業者よりも病院経営者の方が多いみたいですから、
労働問題に関しては日本病院会と相通ずるところがあるんじゃないですか?

投稿: JSJ | 2017年3月 1日 (水) 09時41分

今時こんなクソ団体に使い潰され過労死していくおバカ勤務医ってww

投稿: | 2017年3月 1日 (水) 10時34分

いつもマスゴミでの日本病院会会長や医師会取り上げられ方は、
まるで医師の総意を代表して述べているかのようですが
一般的に医師は労働者であり、病院経営者は資本家だっちゅう
原理原則を非常に曖昧な形にしたまま議論が進んでいる所が
たちが悪いっていうか、いかにも日本的っていうか。

投稿: | 2017年3月 1日 (水) 11時07分

>一般的に医師は労働者であり、病院経営者は資本家だっちゅう原理原則を非常に曖昧な形にしたまま議論が進んでいる

わざとそういうふうにしているだけでしょうねえ。
患者家族への説明だって、理屈上はいつ来院されても労働時間は変わらないわけですし。

投稿: クマ | 2017年3月 1日 (水) 11時54分

ここまで問題が山積している状況ですので、単に医師だからと言う括りだけで30万人が統一的な立場に立つ事は不可能でしょう。
こうした方々もいて社会的に影響力を発揮しようと蠢動していると知った上で、あとは各個人がどう考えどう対応するかですね。

投稿: 管理人nobu | 2017年3月 1日 (水) 13時14分

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