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2017年2月17日 (金)

千葉市がインフルエンザ迅速検査を中止へ

ちょうどインフルエンザの患者が非常に多いと話題になっている時期ですが、臨床現場で常に医師の頭を悩ませてきたあの問題について、千葉市が公的な指針を公表したと話題になっています。

流行期のインフル迅速検査中止 千葉市が休日夜間診療所の対応を発表(2017年2月9日臨床ニュース)

 「急病で(休日夜間診療所に)来られた救急患者さんへの診療をすみやかに行うため、インフルエンザ簡易迅速検査は原則行いません 」。2月8日、千葉市が公式サイト上で市民向けに通知を発表した。インフルエンザ流行期に迅速検査を行わないとの立場を公式サイトで広報する自治体はあまり例がないようだ。

 同市保健福祉局健康部健康企画課の担当者によると、休日夜間診療所で流行期にインフルエンザ迅速検査の実施を中止すると決めたのは、最近ではなく、2009年のA/H1N1pdmによる流行発生の翌年。千葉市と同市医師会で独自のガイドラインを作成し、2010年以降、このガイドラインに沿ってインフルエンザ流行が注意報レベルを超えた際に、外来患者の増加に伴う診療の効率化や迅速検査の限界等を考慮し、休日夜間診療所でのインフルエンザ迅速検査の中止を発表しているとのことだ。

 なお、流行期の迅速検査は原則行わないが、重症例など医師の判断で例外もあることや、迅速検査を実施しなくても「医師の診察でインフルエンザと診断された場合には、抗ウイルス薬の処方が行われる」との但し書きも付けられている。

 インフルエンザ流行時の迅速検査の意義については、陽性の場合の診断確定には有用だが、陰性であった場合、インフルエンザの診断を除外できるわけではないとの限界が指摘されている(Ann Intern Med 2012; 156: 500-511)。また、インフルエンザが地域内で流行している間には、発症48時間以内の咳や熱といったインフルエンザ様症状がある場合はインフルエンザの可能性が高いとも報告されている(Arch Intern Med. 2000; 160: 3243-3247)。

 2009年のインフルエンザ流行時には、厚生労働省が「無症状者のインフルエンザ陰性を証明するために医療機関を受診させ、簡易迅速検査などを行う意義はない」ことの周知を求める通知を出している。また、「臨床所見や地域の流行状況などから医師が総合的に判断し、薬物療法が必要と判断した際には迅速検査やPCR検査は必須ではなく、診療報酬や調剤報酬上も抗ウイルス薬投与に迅速検査の実施は必須ではない」との見解も示している(2009年10月16日事務連絡「新型インフルエンザによる外来患者の急速な増加に対する医療体制の確保について」)。

このインフルエンザの迅速検査なるもの、発症のごく初期ではやや感度が落ちるとされていることや、陰性に出たからと言ってインフルエンザではないとは言えないと言う限界もあって、特に症状の出始めの場合に少し判断に迷うケースがあるかと思うのですが、病歴や症状等からこれは間違いなくインフルエンザだろうと言う場合に単なる証拠固めで検査をする必要があるのかと言う疑問はありますよね。
抗ウイルス薬に関しては処方に当たって特に迅速検査が必要と言うわけではありませんから、症状を見て医師の判断で処方してもいいじゃないかと言う考え方も当然あるのでしょうが、一方で近年のエヴィデンスに基づいた治療と言う考え方からすると、せっかく簡単な迅速検査のキットまであるのにそれを活用しないとは何事かと言う意見もあるだろうとは思います。
今回の話にしても流行期に限定しての話と言うことで、そうでない時期には原則的に検査をした方がいいとも読めるニュースなのですが、小児科などでは例の異常行動の問題もあるし検査をするのも大変だから麻○湯を出すと言う先生もいらっしゃるようですから、治療前の手続きとして必ずしも迅速が必須と言うわけでもないのだと言う程度に緩く受け止めておけばいいのでしょうね。

そんなわけで医師の裁量権を広く認めるまずまず妥当な方針ではないかと言う声が多いようなのですが、一つ気になる点としてあげられるのがインフルエンザの場合学校や職場を休むことになり通常診断書を記載させられることになるはずですが、その書き方をどのようにすべきなのかと言うことです。
杓子定規に「インフルエンザと診断していないのだから書けない」などと言い出せば「それならちゃんと検査して白黒付けてくれ」と言われるでしょうし、症状からインフルエンザと判断し云々と言えば本当にインフルエンザだったのかと突っ込まれる余地もありそうで、特にこの時期受験生などにとってはインフルエンザと診断されるかどうかはかなり重要な分かれ道にもなりかねないですよね。
中には証拠がないのだからインフルエンザではないと曲解して?勝手に出かけてウイルスをまき散らす人もいるかも知れずで、今現在でもちょっと熱が出れば会社や学校から検査してこいと言われ医療機関を受診する人が少なくないのですから、集団防疫の観点からはインフルエンザとして対応を要求するならならきちんとそう診断しておくべきだと言う考え方も当然あるだろうと思います。
社会的にもインフルエンザであるかないかで話が全然違ってくる場合もある以上、治療法の選択以前に診断の段階でも分かれ道があるのは当然で、単に流行期か否かで対応を決めるのではなく今までと同様ケースバイケースでの判断は必要になるはずですが、今回の通知も「心配だからとにかく検査してくれ」と言う患者をあしらう根拠くらいにはなりそうです。

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コメント

私も臨床症状から迅速検査せずにインフルエンザと判断することはよくやります。
患者さんのなかには迅速検査を希望される方もおられますが
「検査で陰性ならインフルエンザのお薬はお出しできませんがよろしいですか?」
と確認すると多くの患者さんはそれ以上検査を希望されません。

投稿: クマ | 2017年2月17日 (金) 09時57分

個人の場合は説得や教育等で対処できるとして、一番厄介なのは学校や企業が検査を受けろ、書類をかけと個人に要求してくるケースをどうするかだと思います。
今回のことにしても結局現場の判断に一任した形なのですが、例えば罹患・治癒証明に検査は不要であると通知を出した方がよかったのかも知れないと感じます。

投稿: 管理人nobu | 2017年2月17日 (金) 12時30分

インフルエンザだから出勤停止にさせられ他の病気とは休暇の扱いが違う、となれば
診断書なり検査結果が求められるのはどうしようもないんじゃないかと

投稿: | 2017年2月17日 (金) 13時02分

千葉市役所の職員は診断書も検査結果もなくてもインフルエンザ扱いで出勤停止になるってことなのかな

投稿: | 2017年2月17日 (金) 14時19分

すでにタミフルを飲んでいるのに検査しろって言われたことならありますが、そういうのは意味がないので却下しています。
企業も「診断:インフルエンザ。迅速検査:陰性。」なんて診断書を社員が持ってきたら困惑するのではないかと思いますが・・・

投稿: クマ | 2017年2月17日 (金) 14時58分

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