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2017年2月 1日 (水)

クレーマー的親族の存在は患者の不利益に

恐らくは小児診療に限った話ではないと思うのですが、先日こんな記事が出ていました。

医療スタッフに対する親の態度が小児の治療に影響(2017年1月20日HealthDay News)

 新生児集中治療室(NICU)では、患者の親が医療スタッフに横柄な態度を取ると、医療の質が低下する可能性のあることが新たな研究で明らかにされた。研究共著者の1人である米フロリダ大学ウォリントン経営大学院のAmir Erez氏は、「医療分野では、社会的相互作用が仕事に及ぼす影響について全く注目されていない」と指摘している。

 今回の研究では、イスラエルの教育病院で、4つの医療チームに丸1日分に相当する5つの救急医療のシナリオを実演してもらった。そのうち3チームは、1日のはじめに「母親」役から診療内容について強い言葉で非難を受け、残りの1チームは「対照群」とした。
 非難を受けた3チームのうち1チームは何も準備せず、1チームは事前に敵対的感情に対する感受性を和らげることを目的としたコンピュータゲームを行い、1チームには非難を受けた後でその出来事について書いてもらうことにより影響を減らすことを試みた。
 以前の研究では、権威ある人からの不作法な態度が医療チームの仕事に影響を及ぼすことが示されていたが、今回の研究では、親の態度も医師や看護師の決定を誤らせる原因となることが示された。しかし、事前にコンピュータによるトレーニングを受けると、負の感情に対する潜在的な耐性が向上し、対照群に劣らない仕事ができることもわかった。書くことによる便益はみられなかった。
 この研究は「Pediatrics」1月号に掲載された。

 米国小児科学会(AAP)のBrian Alverson氏は、「人として感情的になると、論理的な思考が難しくなるのが現実である」と述べている。米クリーブランド・クリニックのJessica Madden氏は、NICUではほとんど知らない人同士でチームを組み、ストレスの多い環境で治療に当たることが多いという事実も、問題を悪化させていると付け加えている。現在は新しいチーム内でのコミュニケーションに焦点を当てた研修が実施されているが、患者中心の医療モデルで親が介入してくることは考慮されていないと、同氏は指摘する。
 しかし、一瞬の判断が生死にかかわるような状況に直面しているわけではない他の部門にも今回の知見を適用してしまうと、実際の病院システムの問題を軽視することにもつながると、Alverson氏は言う。「家族が無礼な態度を取ってくるときは、多くの場合こちらに何らかの原因がある。自分たちの姿勢を見直し、患者を喜ばせるにはどのような診療を行うべきかを考える機会の損失となる」と、同氏は付け加えている。

結論部分についてはまた異論のある人も多いのではないかと思うのですが、エライ人から介入されると仕事の効率が下がる、顧客からのクレームが入っても仕事の効率が下がると言えば別に医療に限った話ではなく、どこの業界でも当たり前に起こり得る話だと思うのですが、何故そうなるのかと言う部分には多少の解釈の余地があるのかも知れませんね。
職業人としては「あの家族は態度が悪いから」と意識的に手を抜くと言うことはあっていいことではないのでしょうが、少なくとも職務上求められる義務的な作業以外のプラスアルファの部分で余計なサービス精神を発揮しようとは思わなくなることはありそうですし、医療の現場とはこうした余計な労力を発揮してくれることが前提でようやく回っている部分が少なくありません。
一方で家族の側からするとクレームをつけることで何らかのよい対応を期待しても全く無駄であるか、むしろ黙っていた方がましであると言う解釈も成り立ちそうですが、この辺りは同じような内容であっても横柄ではない態度での指摘なら受け入れられるかも知れずで、診療上の不満についての伝え方と言うものも検討してみる価値はあるのかも知れません。

今回の話で興味深いのは結果そのものよりも後段の解釈の部分にあるように、「患者中心の医療モデルで親が介入してくることは考慮されていない」と言う医療現場の現実が存在していると言うことで、確かにクレーマー的な家族が介入してくることに対するマニュアルと言うものは一般に存在せず、その場その場で現場が凌いでいるのが現実ではないでしょうか。
少なくとも悪い態度での介入は医療にも悪影響があると言うことですから、医療を成果や効率性の点から考えるなら患者本人の為にもこうした介入は阻止すべきであると言うのが結論になるかと思いますが、他方で患者の救命が難しいと言った局面の場合、結局は患者本人よりも家族の満足度の最大化を医療のエンドポイントに設定せざるを得ないと言う場合も少なくないわけです。
こうした場合にクレーマーだからと家族を隔離しておくと言うわけにもいかないでしょうから、いかにしてその影響を緩和するかと言うのが医療側の対策になるかと思うのですが、今回の研究でも相応に有効性が示されたと言う対策はあると言うことですから、医療現場でどう活用するかと言うことを考えていくべきなのでしょうか。

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コメント

>「家族が無礼な態度を取ってくるときは、多くの場合こちらに何らかの原因がある。自分たちの姿勢を見直し、患者を喜ばせるにはどのような診療を行うべきかを考える機会の損失となる」と、同氏は付け加えている。

外国人の口からこんなコメントが出てるのちょっと意外って感じが。

投稿: ぽん太 | 2017年2月 1日 (水) 09時11分

>外国人の口からこんなコメントが出てるのちょっと意外って感じが。

多分30年以上前に書かれた、と思われるアメリカの麻酔科医の手記を読んだ事があるんですが、その先生も似たような事を書かれてました。で、一番印象に残ったエピソードなんですが、

言い訳の余地がないミスをやらかした著者、患者さんに正直に話し、誠実に謝罪しました。で、二度と来ないだろうなぁ、と思ってた患者さんが再診、おどろく著者に
「君は確かにやらかした。だが、真摯に反省し、謝罪してくれた。今後は細心の注意を払って診療してくれるであろうからして君は最も信頼に足る医師だ。だからまた君に頼む。」

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年2月 1日 (水) 10時21分

あえて俗悪な見方をするならば、完全にマウンティングされたと言うことになるのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2017年2月 1日 (水) 11時30分

そろそろ保険医療は完全に標準化しちゃって
それ以外のことを望むなら地中海病院に行けや で
統一するべき時期なのでしょう。
そのためにも医学生の間に患者接遇だけでなく
GIVE&TAKEの概念を徹底して教えこむべきか と。

投稿: | 2017年2月 1日 (水) 11時48分

>あえて俗悪な見方をするならば、完全にマウンティングされたと言うことになるのでしょうか。

…私もまだまだ修業が足りませんなぁ。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年2月 1日 (水) 12時09分

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