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2017年2月15日 (水)

これは命の差別と言うのかですが

あまり大きく報じられているようでもないのですが、このところ密かに注目しているのがこちらの裁判です。

「命の差別があってはならない」 事故死した重度知的障害少年の両親、施設側を提訴 逸失利益焦点に(2017年2月14日産経新聞)

 重度の知的障害を持つ松沢和真さん=当時(15)=が平成27年、東京都八王子市の福祉施設から抜け出し、約2カ月後に山林で遺体となって発見された事故で、両親は14日、福祉施設を運営する「藤倉学園」(東京)に約8800万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。請求には松沢さんが生存していれば将来見込まれた利益(逸失利益)として、平均賃金から算定した約5千万円を盛り込んだ。重度知的障害者の逸失利益算定が争点になる見通し。

 提訴後に会見した松沢さんの父、正美さん(60)は「重度の知的障害があったとしても、和真は施設側の不備で将来の全てを奪われた。所得格差による命の差別があってはならない」と話した。

 訴状などによると、松沢さんは職員が目を離した隙に施設から1人で外出。藤倉学園は過失を認め、慰謝料2千万円を提示したが、松沢さんに重度の知的障害があったため逸失利益はゼロと算定した。「知的障害があることを理由に損害賠償額を低く認定することは差別に当たる。松沢さんには将来の可能性があった。障害のない少年の死亡事故と同じ基準で損害賠償額を算定すべきだ」などとしている。

 藤倉学園は「訴状を見た上で今後の対応を考えたい。現時点ではコメントは控える」とした。


障害者の逸失利益で両親提訴へ(2017年2月10日NHK)

重い知的障害のある少年が入所先の施設を出て死亡した事故の賠償をめぐり、少年の両親が「将来働いて得たと予想される『逸失利益』を施設側がゼロとしたのは障害者差別だ」として、国内の平均賃金を基準に逸失利益を認めるよう求める訴えを近く、東京地方裁判所に起こす方針を決めました。
弁護団は障害の有無で逸失利益が決まることが妥当かどうか、問いたいとしています。

東京都内の障害者施設に入所していた松澤和真さん(当時15)はおととし9月、鍵が開いていた扉から外に出て行方が分からなくなり、2か月後、山の中で遺体で見つかりました。
施設側は賠償交渉の中で、安全管理の過失を認め、慰謝料として2000万円を示しましたが、和真さんが将来働いて得たと予想される「逸失利益」についてはゼロとしたということです。
両親は「将来、社会に貢献する大きな可能性を秘めていた。障害者の命の価値を低くみた差別だ」として、国内の平均賃金を基準におよそ5000万円の逸失利益を含む賠償を施設側に求める訴えを、近く東京地方裁判所に起こす方針を決めました。

重い知的障害のある人の逸失利益をめぐっては「徐々に働く能力を高めることができた可能性があった」などとして、8年前に青森で、5年前には名古屋の裁判所で、それぞれ一定額を認める判決や和解がありました。
しかし、原告が求めた平均賃金を基準にした算定ではなく、弁護団は「障害があるかないかで、命の価値とも言える逸失利益をゼロにしたり、少なくしたりすることが妥当かどうか、司法に問いたい」と話しています。
これに対し施設側は「訴状を見ていないので具体的なコメントは控えたい。裁判の中で主張したい」と話しています。

父親の松澤正美さんによりますと、亡くなった和真さんは3歳のとき、自閉症と診断されました。
和真さんは単語を話して好きなものを言えたほか、何をしたいのか意思を表すことはでき、人の話を聞いて理解していたということです。
特別支援学校の中等部になると、落ち着きのない行動が見られ、両親は医師の勧めもあって、複数の職員がいる施設への入所を決めたということです。
松澤さんは「息子は成長過程で多くの可能性があった。司法は命の価値を差別しないような判断をしてほしい」と話しています。

まだ働いていない重い知的障害のあるひとが死亡した場合の逸失利益をめぐっては、これまでも裁判で争われてきました。
大分県で特別支援学校の男子児童が死亡した事故では、平成16年、大分地方裁判所が「医療技術の進歩を考慮しても児童が将来、働けるようになる可能性を認めるのは難しい」として、県が逸失利益を支払う必要はないとする判断を示しました。
これに対し16歳の少年が施設で死亡した事故で、青森地方裁判所は平成21年、「健常者と同じ程度ではなくても、徐々に働く能力を高めることができた可能性があった」として、県の最低賃金をもとに600万円あまりの逸失利益を認めました。
さらに、名古屋市で15歳の少年が施設の階段から転落して死亡した事故では、平成24年に名古屋地方裁判所で、将来働けた可能性を認めたうえで、障害年金の受給額を基準に逸失利益を770万円あまりとする和解が成立しました。

何とも不幸な事故であったとお悔やみを申し上げるしかないのですが、そもそもこの裁判のキーワードになっている「逸失利益(いっしつりえき)」なるもの、損害賠償の対象となる事故なりがなければ得られていただろうと考えられる利益と言う意味合いの言葉ですが、おおよそ交通事故などにおいても大いに揉めるところでもあります。
ある程度労働実績のあるサラリーマン等であれば、定年まできちんと勤め上げた場合の給料総額を元に計算しておけばまあそう大きくは外れないのだろうなとも思えるのですが、今回のように未就労の学生等の場合ですと平均賃金を元に算出されるのが通例なのだと言いますが、一流大学のエリート学生と三流大学退学寸前の落ちこぼれで同じかと言われると何となく釈然としませんよね。
実際に過去にも医学部学生の死亡事故において医師の平均的な賃金を元に算定すべしとの判断が下されたケースがあり、医学部の場合ほぼ確実に将来医師になることを考えると妥当な考え方ではあると思うのですが、では医学部受験予定で合格が確実視されていた高三学生の場合はどうなのか等々悩ましく、一般的にこうした場合訴えた側が「そうであった可能性が高い」と証明する必要があるようには感じます。

平均よりも高い収入を得られることが予想される場合とは逆に、平均よりも低いと予想された場合が今回のケースですが、ある程度社会的な関心も集まっているのか近年障害者の逸失利益を巡っての裁判が連続して起こっているそうで、今回の裁判においてもどのような判断が下されるのかは注目されるところです。
個人的に今回のニュースを見ていて思ったのが、寝たきり超高齢者の関わる医療事故で千万単位と言う単位の損害賠償が命じられると言うケースが時にあり、あれはどのような判断に基づいて逸失利益を計算しているのだろうとかねて疑問に思っていたのですが、基本的にこれらはほぼ慰謝料と言う扱いであり、また年金収入なども考慮される可能性があると言うことです。
時折高齢者の年金で一家全員が暮らしていて、入院させようものなら家族から「死なせたら訴えるぞ」などと凄まれたと言う経験をした先生もいらっしゃるかも知れませんが、しかし年金にせよ何にせよ残りどれだけ生きられるかと言う年数をかけて計算されるはずですから、平均余命もはるかに過ぎた超高齢者に高い賠償金を払えと言われても釈然としないと言う人は少なくないでしょうね。
この辺りはいわゆる弱者保護的な視点も少なからず含まれてくるのだろうと思いますが、稼ぎ出すお金より介護等でかかるお金の方が多いのであればどうなんだと言った素朴な反発もあり、また医療訴訟においてもかつてほど弱者救済的な判決やいわゆるお悔やみ金めいた賠償判決は出なくなってきているとも言いますから、今後は金額的にも変わっていく可能性もあるのでしょうか。

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コメント

慰謝料じゃなく稼ぎの分の補償でしょ?
どんだけ楽観的な予測したらこんな金額になると?

投稿: | 2017年2月15日 (水) 08時52分

基本的に遺族の気持ちは慰謝料で示して逸失利益は別、って考えないとしょうがない気がします。
保険会社だって平均賃金から算定しろと言われても飲めないでしょうから・・・

投稿: クマ | 2017年2月15日 (水) 10時41分

 いのちの価値を金に換算しようとすると、身も蓋もない不都合な真実に向き合うことになるってこと、自覚したほうがいい。
 リベラルのふりをするリベラルの敵(金に換算しようとした時点で露呈)に鈍感だから、リベラルは負ける。
 

投稿: | 2017年2月15日 (水) 10時44分

普通の人の逸失利益が平均賃金でいいなら
自閉症の人の逸失利益は自閉症の人の平均賃金だろうと思うけど
データあるんですかね

ちなみに女の子の逸失利益が男の子より低かったら男女差別ってなるのかな?

投稿: | 2017年2月15日 (水) 11時21分

女性の場合慣習的に、女性の平均値ではなく男女の平均値で計算するのだそうです。

投稿: 管理人nobu | 2017年2月15日 (水) 14時31分

>リベラルのふりをするリベラルの敵(金に換算しようとした時点で露呈)に鈍感だから、リベラルは負ける。

いや、こういう連中こそリベラルそのものかと。

投稿: 10年前にドロッポしました | 2017年2月16日 (木) 09時31分

良心的日本市民

投稿: | 2017年2月16日 (木) 09時55分

ドロッポ先生、釣れてくれてありがとう。
某SNSの元元保険所長先生を彷彿させていらっしゃいます。

投稿: | 2017年2月17日 (金) 10時53分

ご遺族の方の気持ちはわかるけれど、少し一般常識から外れているというか非常識にも感じる。

投稿: MORIKANA | 2017年3月 4日 (土) 13時46分

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