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2017年2月22日 (水)

日産婦がついに態度を軟化?

アメリカはさすが進んでいるなと感じさせるのが、先日報じられたこちらのニュースです。

ゲノム編集で将来子どもも 米学術機関、条件付き容認(2017年2月15日共同通信)

 【ワシントン共同】生物のゲノム(全遺伝情報)を自由に改変できる「ゲノム編集」の技術を使って子どもをもうけることについて、米科学アカデミーは14日、将来技術的な課題が解決されれば、遺伝性の深刻な病気を防ぐ目的に限り、条件付きで容認できるとする報告書をまとめた。

 人の精子や卵子、受精卵の遺伝子にゲノム編集で改変を加える。子どもをもうけると、影響が子孫へと受け継がれるため否定的な意見も強い。遺伝子の間違った場所を改変するミスもまだ多く技術的課題が山積みだが、アカデミーは「技術の進歩は速い」として、世界で初めて実施に向けた道筋を示した。ただ子どもの身体能力や知能を増強させる試みには不快感を示す人が多く「許されない」とした。
 報告書の作成メンバーは「生殖にかかわるゲノム編集には慎重になるべきだが、禁止するということではない」とした。

 報告書によると、受精卵などのゲノム編集は、遺伝性の病気を防ぐため、他に手段がない場合にのみ適切な規制や監視の下で実施できる。改変する遺伝子がその病気に関連していることや、改変後の遺伝子の塩基配列が未知のものではないこと、体への悪影響がないことを確認する必要がある。数世代にわたる追跡調査や可能な限りの情報公開も求めた。
 「人の尊厳に反する」と倫理的な問題を指摘する声もあるため、実施の際は一般の意見も反映させたルールを作る

 アカデミーは政府や議会から独立して科学技術政策を助言する機関。2015年末の国際会議では、病気の予防目的であっても「無責任だ」との声明を出したが、今回の報告書は容認へ一歩踏み込んだ。米政府は現在、人の受精卵へのゲノム編集に公的研究費を投じることを禁じている

 ※ゲノム編集

 生物の遺伝情報を担うDNAを狙い通りに改変できる技術。農産物の品種改良や、遺伝子の異常で起きる病気の治療を目指した研究への利用が広がっている。複数の手法があるが、2013年ごろに開発された「CRISPR/Cas9」は扱いやすく精度も向上したため、研究者の間で普及した。動物の受精卵など、まだ細胞の数が少ない段階で遺伝子を改変すれば、全細胞に望む改変を加えることも理論的に可能だが、成功した例はまだない。

この種の技術は年々進歩していくものであるのは言うまでも無いのですが、人間に対してそれを用いるとなると生命倫理だ、道徳観だと言った話との絡みもあって、世界的に見ても非常に厳しい制約が課されているのは周知の通りですよね。
一方でこれまた当然のことながら人間で応用出来れば非常に有益な結果も期待出来るのは明らかであり、特に今の時代ですと技術的な優位を保つことは国策としても非常に重要視されますから、さていつからどこまでを認めるべきかと言うことは各国がお互いの顔色をうかがっているところだと言えます。
今回の米科学アカデミーの報告書もあくまでも将来的な含みを持たせたと言う内容で、今から直ちにそれを行える状況になったと言うものではありませんが、これに比べればはるかに控えめな段階ではあるものの、日本においてもこんなニュースが報じられていました。

着床前検査、日産婦学会が臨床研究開始 妊娠率向上など調査(2017年2月14日産経新聞)

 日本産科婦人科学会が、体外受精させた受精卵の染色体異常を調べる「着床前スクリーニング」(着床前検査)の臨床研究を始めたことが13日、分かった。流産を繰り返す女性を対象に、染色体異常がない受精卵を子宮に戻し、妊娠率が向上するかを調査。ダウン症などの染色体異常も判明するため、「命の選別」につながるとの批判もある。
 関係者によると、日産婦は検査の対象となる女性の登録を開始した。施設を限定した上で、当面は検査する女性の人数を絞り、試験的に実施。体外受精で3回以上妊娠しなかった女性や、流産を2回以上経験した反復流産の女性などが対象となる。
 検査費用は原則として患者負担。日産婦はこれまで、夫婦のいずれかが重い遺伝病を持つ場合などに限り、受精卵を調べる「着床前診断」を認めてきた
 流産の予防を目的とした着床前検査は禁止してきたが、海外では実施されていることもあり、学会の倫理委員会で審議。検査が流産予防につながるかを確かめるため、平成26年12月に臨床研究として進めることを認め、実施施設の選定を進めていた。

 着床前スクリーニング 体外受精させた受精卵を子宮に戻す前に染色体の数の異常を検査し、異常のない受精卵だけを戻して出産を試みる技術。通常は受精卵が4~8分割した初期段階で1~2個の細胞を取り出し、染色体や遺伝子を調べる。特定の病気に伴う異常ではなく、健康な人を含めて網羅的に異常がないかを検査する。

ネットで調べればすぐ判ることですがこの着床前スクリーニングなるもの、すでにコマーシャルベースで当たり前に行われているものであり、国内においても全国各地で妊娠率向上のために禁止されているはずの着床前スクリーニングをやりますとうたう施設があることがうかがえますが、当然ながら学会が何を言おうが別に法的に禁止されているわけではないと言う話ですよね。
しかし世界的にみてもほとんど全ての国で認められ行われていることを今まで認めておらず、今になってようやく試験的にやってみると言う段階の日本産科婦人科学会はどれだけ保守的なのかと言うことになりますが、その理由として命の選別につながると言う批判はある一方で、これだけ晩婚化が進み社会的に需要が増加している生殖医療の実態に社会的議論が追いついていないと言う声も多いようです。
特に実際に不妊に苦しむ方々を相手にしている現場の臨床医にとっては歯がゆい限りなのだろうと思いますが、生殖医療に関しては社会的コンセンサスと個人の自由のいずれを重視すべきかと言う問題は以前から顕在化していたわけで、学会がこうした話を進め一歩、二歩前進する間に現場では十歩も二十歩も前進していくと言うことが今後も続いていきそうですね。

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コメント

あまり現実離れしすぎると規制の意味がないって言う。

投稿: ぽん太 | 2017年2月22日 (水) 08時17分

聞くところではリスクが少なく効果は大きいそうなので、いずれはより広範な対象で標準的な手順として普及することにもなるのかという気もしています。

投稿: 管理人nobu | 2017年2月22日 (水) 13時28分

訳の分からん団体から、文句言われる身になれば、学会の対応は私は理解できます。そもそも学会なんて指針に過ぎないので、全部国会に投げちゃえば良いのに。

投稿: 麻酔フリーター | 2017年2月24日 (金) 10時37分

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