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2017年1月25日 (水)

依頼人からの依頼を請け負った弁護士が懲戒の危機に

このところ成人向け映像作品、いわゆるAV出演に関する強制性の有無が問題となっているケースが少なからずあると言う問題が報じられる機会が増えていて、中には契約を盾にまさに犯罪的と言うしかないようなとんでもない話もあるようです。
当然ながらこの種のトンデモ契約にはそもそも従う必要はないと思われるのですが、この種の契約と関連して先日非常に興味深いニュースが出ていたことを紹介してみましょう。

AV出演拒否で女性に賠償請求 提訴の弁護士「懲戒審査相当」 日弁連異例の決定 「正当な活動」反論も(2017年1月19日産経新聞)

 アダルトビデオ(AV)出演を拒否した20代の女性に所属事務所が約2400万円の損害賠償を求めた訴訟をめぐり、日本弁護士連合会(日弁連)が、所属事務所の代理人を務めた60代の男性弁護士について「提訴は問題だった」として、「懲戒審査相当」の決定をしていたことが18日、関係者への取材で分かった。弁護士は依頼者の利益を代弁する職責を持つため、提訴を理由に懲戒審査に付されるのは異例だという。

 確定判決によると、女性は「タレントになれる」と18歳でスカウトされ、事務所と契約。その後、AV出演を求められ、拒否すると事務所から「違約金を支払え」などと脅された。女性が契約解除を求めると、事務所は男性弁護士を代理人として損害賠償訴訟を東京地裁に起こした
 しかし平成27年9月の1審判決は「事務所は高額の違約金を盾にAV出演を迫った」と指摘。「女性には契約を解除するやむを得ない事情があった」として請求を退けた。事務所側は控訴せず、判決は確定した。
 この報道を知った東京都の男性が27年10月、「提訴は女性を恫喝(どうかつ)したAV出演強制を助長する行為で、弁護士の品位に反する」として、男性弁護士の懲戒を所属先の第2東京弁護士会(2弁)に請求した。請求した男性は女性や男性弁護士と面識はないという。

 2弁の綱紀委員会は28年3月、「提訴は正当で、品位に反するとは言えない」として懲戒審査に付さないことを決定。男性は日弁連に異議を申し立てた。
 日弁連の綱紀委は28年12月、「訴訟活動は弁護士の本質的職務で、提訴が懲戒理由とされるのは極めて例外的な場合に限られるべきだ」としつつも、(1)提訴はこの女性や同様の立場にいる女性にAV出演を強制する行為とみなされる恐れがある(2)請求額の妥当性や、提訴が女性の心理に与える圧力などを十分に検討していない-などとも指摘。
 「訴えの正当性がないことを知りながら提訴するなどの『不当訴訟』とまでは言えないものの、提訴や訴訟内容に問題がなかったとは言えない」として2弁の決定を取り消した。このため2弁の懲戒委員会は今年1月、懲戒審査を始めた。

 弁護士の不正を監視する「弁護士自治を考える会」主宰の市井信彦さん(62)は「懲戒理由の大半は、預かり金の着服や仕事放置、訴訟手続きのミスなどだ。提訴や訴訟内容を理由に懲戒審査に付されるのは異例で、懲戒処分が下れば初だろう」と指摘。「弁護士は依頼者の利益だけでなく、社会的利益の実現も求められていることを理解すべきだ」と話した。
 ただ弁護士の間には、日弁連の決定について「万人が持つ提訴権を代理して裁判所の判断を仰ぐのが職務なのに、提訴や訴訟内容を理由に懲戒されるリスクがあるなら、暴力団絡みの事件などは引き受け手がいなくなる」と危惧(きぐ)する声もある。
 男性弁護士は取材に「日弁連の決定は異例で納得できない。正当な訴訟活動で懲戒されれば弁護士全体の萎縮につながる。懲戒委で正当性を訴える」と話した。

訴訟社会のアメリカで弁護士と言うものが蛇蝎の如く嫌われていると言う話はしばしば耳にしますが、その理由としてやはり依頼主の利益を最優先に考えると言うことを職業上の使命としており、当然ながら相手にとっては全く愉快ならざる話を強引に押し通そうとするイメージがあるからなのでしょう。
ただ当然ながら依頼主の側も自らの法的権利を追及する権利はあり、そのために弁護士を雇う権利もあるはずなのですが、仮に今回当該弁護士に処分が下されるともなれば日弁連としては相手によってはこうした権利を認めておらず、また認めなくてもいいと宣言したと言う形です。
その結果発生するより副次的な問題として、誰がいつ依頼主の依頼が「社会的利益の実現」に適うのかと言うことを判断し、この依頼主なら断って良いと判断すべきなのか、そしてその判断が間違っていた場合依頼主の権利を侵害した責任は誰が取るのかと言う問題が出てくると思いますが、当然ながら日弁連がそれを引き受けると言うことになるのでしょうね。

今回の一件を見ていて、いわゆる応召義務を定めた医師法19条と現場医師との関係にも少し似ていると感じられた点なのですが、応召義務に関しては直接的な罰則規定もなく、また医師会には当然日弁連のような権力もありませんから、まだしもそのゆるさによって救われている部分はありそうに思えます。
ただ応召義務に絡んで訴訟沙汰になったケースと言うものも過去には当然ながらあって、民事訴訟においては損害賠償が認められたケースもありますから、罰則がない=遠慮なく破ってもいいとまでは言えないのだろうと思いますが、今のところその基準としては過去に厚労省が出して来た通知などを目安に判断するしかありません。
ちなみに医師法19条自体には罰則規定はありませんが、その断り方や内容によっては医師法7条の規定にある「医師としての品位を損するような行為」に該当するとして行政処分を下すこともあり得るのだそうで、現実的には未だ応召義務も有名無実のルールとも言えないようですね。

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コメント

応集義務の話はさておき、ふっつーに勝てそうにない提訴は断ってきますがねえ、弁護士は。
何を今更「万人が持つ提訴権を代理して裁判所の判断を仰ぐのが職務」か と、
生娘でもないのに何カマトトぶってんだよっ とAV業者のような感想を持ちますね。

投稿: | 2017年1月25日 (水) 07時52分

>ふっつーに勝てそうにない提訴は断ってきますがねえ、弁護士は。

いいなあ。弁護士は。応召義務がなくて(爆)<なつい
ま、この場合は勝てそうにないのはよ~く分かってて、その上で女性に圧力かけるためにやってるのは明白なワケですが。
*勝てると思ってやったとしたらこいつは無能ですからどっちにしろ弁護士としては不適任ですねw

>その結果発生するより副次的な問題として、誰がいつ依頼主の依頼が「社会的利益の実現」に適うのかと言うことを判断し、この依頼主なら断って良いと判断すべきなのか、そしてその判断が間違っていた場合依頼主の権利を侵害した責任は誰が取るのかと言う問題が出てくると思いますが、当然ながら日弁連がそれを引き受けると言うことになるのでしょうね。

つーこって、このテの訴訟起こされた「被害者」は、日弁連が全面的にバックアップって事でいいんじゃ?もちろんタダでw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年1月25日 (水) 09時27分

今回の民事裁判が純粋に損害を回復するためのものではなく、裁判を起こすことによって女性に対して精神的、社会的、経済的なダメージを与えるためのものであると認定されたのではないでしょうか。
裁判の目的外使用って感じかなと。

・・・他の裁判でも目的外利用は多々あるのでしょうが、あまりにも悪質と認定されたのでしょう。

投稿: クマ | 2017年1月25日 (水) 11時04分

あまりにも悪質と言われればそうなのですが、どこまでが許容される悪質なのかの線引きは難しいと思います。
一例として暴力的反社会的団体が正当な手段で債権の回収を図ろうとするのはどうなのか、ですが。

投稿: 管理人nobu | 2017年1月25日 (水) 11時36分

>・・・他の裁判でも目的外利用は多々あるのでしょうが、

真実を知りたいとか真実を知りたいとか、あと真実を知りたいとかwwwww?

>どこまでが許容される悪質なのかの線引きは難しいと思います。

個々の弁護士が己が才覚良心報酬その他鑑みてそれぞれでお決めになればよろしいのでわ?懲戒委で正当な訴訟活動である旨日弁連を丸め込め…もとい、説得出来ないような案件を己が弁才も鑑みず引き受けちゃうような奴はそもそも能力的な意味で弁護士として失格ですからガンガンクビにしてよろしいどうせ弁護士なんて余ってるんだしww

>一例として暴力的反社会的団体が正当な手段で債権の回収を図ろうとするのはどうなのか

どうなのかもこうなのかも裁判所が判断するのは法的な正当性のみであって債権者の属性は関係ない筈ですが?法の下の平等、って言うじゃない?現に死刑囚が処遇その他で国を訴えたりして国がフツーに負けてたりしますしおすし。裁判所は厳しいですが平等です!差別は許しません!原告が貧乏で気の毒な一生寝たきりの脳性まひ児だからって何の落ち度もないお金持ちで保険にも入ってる産科医に賠償責任負わせたりとかそんな判決下すワケないじゃないですかヤダーwww

あ、そうそう、

>依頼主の側も自らの法的権利を追及する権利はあり、そのために弁護士を雇う権利もあるはずなのですが、

刑事ならコネも金もなくても国選弁護士を国費で雇ってもらえますが、民事裁判においては弁護士を雇う権利なんて多分ありませんよ?現に当方は実家が電話リース詐欺にあった際、被害金額が少額すぎるからって理由で弁護士を雇えず、本人訴訟する羽目に陥りました。当然ながら金額の多寡にかかわらず仕事量は一緒なワケですが、だからといって50万円の案件に弁護料100万円は請求出来ませんからね。仕方ないね。
*ちなみに先方は元裁判官な顧問弁護士を繰り出してきましたが当方の圧倒的勝訴でしたwざまあww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年1月25日 (水) 14時30分

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