« 年々癌死亡者は増加している、と言うわけではなく | トップページ | サッカー試合中の負傷に賠償金判決 »

2017年1月12日 (木)

身近に存在する悪魔の誘惑、公式に否定される

先日以来話題になっているのがこちらのニュースですが、まずは記事から紹介してみましょう。

まじでやめよう耳掃除。米医学会が声を枯らして警告(2017年1月5日ギズモード・ジャパン)

「肘より小さいものを耳に入れるな」と英語の諺にもあるように、欧米で耳掃除は「やってはいけない禁断の快楽」です。やるときは「ママに怒られる~」とヒヤヒヤしながら喜んでいたりします。
それでもついついやってしまうのが耳掃除なわけですけれど、そんな罪人のためにアメリカ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が耳ケアの新ガイドラインを発表し、ゴルァア! 何度言ったらわかる! 耳掃除やり過ぎると「耳垢栓塞」になるってばよ!と再度注意を呼びかけました。

なんでも耳垢(earwax、cerumen)には耳垢なりに、耳の中を適度に湿らせ、チリやホコリが中に入るのをブロックし雑菌の繁殖を防ぐ大事な役目があるので、そんなにゴミ扱いしてとらんでもええわ!と言うことらしいですよ? しかも新しい皮膚細胞が生成されると古いほうから順繰りに出ていく自浄作用もあるのだと、新論文にはあります。余計なことして自浄のサイクルを断つと耳垢がたまって、詰まったり耳が遠くなる症状が出るらしく、そうした症状に悩まされている人は子どもの約10%、成人の約5%にのぼり、高齢者や発達障害を抱える人の間で高くなることがわかりました。
この耳垢栓塞の最新データとあわせて新しいガイドラインの発表に踏み切ったというわけですね。

発表の要点は次のとおりです。

・耳掃除のやり過ぎには注意。
綿棒のような細いものを耳に入れないこと。耳垢を奥まで押し込んで、栓塞悪化や炎症を招いてしまうので。
・痛み、難聴、耳が詰まる症状がある場合は、耳垢が原因とは限らないため、医師に診てもらうこと。
・大体の人は耳掃除は不要。必要な体質の人は正しい手入れに個人差があるため、医師に相談すること。
・ろうそくで耳掃除(イヤーキャンドル)は禁止。耳垢除去の効果はないうえ、外耳道と鼓膜を傷めてしまうため。

そういえば大昔に流行ったオトサンも、耳垢のように見えて全部ろうだったりしましたわねぇ…。
欧米でも耳かきは中世までありましたが、今は衛生上の理由で綿棒が主流です。元祖綿棒のベストセラー商品「Q-Tips」でさえも、箱には「耳かき用ではない」との医師の注意書きが書かれています。海外で赤ちゃんの耳掃除をしてカンカンに怒られても、それはいじめとかじゃなく本気で心配しているだけのことなので、悪意にとらないように、ね。

まあしかし耳かきの欲望に耐えることはなかなかハードルが高いと言う声も多いようで、道具や方法にこだわりを持つ人も多いようですけれども、しかし欧米ではそこまで禁忌扱いにされているとは知りませんでしたが、やはり経験的な背景があるのでしょうかね。
この耳垢なるもの、長年放置しておくとどうなるかと言うことが時々ネタのように話題になったりもするものですが、多くの人々はさしたる理屈づけもなくただ気持ちが良いからと続けてきたことなのではないかと思いますが、国民生活センターによると2010年度以降の約5年間で178件のけがの報告があったと言い、それなりにリスクのある行為だと言えましょう。
特に昔ながらの先が曲がってへら状になった道具、いわゆる耳かきなるものに関してはその有害性が指摘されているもので、昨今ではあれは素人が使うべきではないものとされているそうですが、それでは一体何をどうしたらいいのかで、これに代わる一般向けの掃除道具として綿棒と言うものが台頭しています。
ただ記事にもあるように海外の綿棒メーカーのサイトにもごく一部の体質的な例外はあるものの「the rest of us are better off keeping cotton swabs—or anything else—out of our ears.」と明示されており、綿棒とはそもそも耳掃除のための道具ではないばかりか、いわゆる耳掃除自体必要がないと言うスタンスであるようです。

耳の構造的に耳垢とは内から外へと耳道を自然に出てくるものなのだそうで取る必要がない、せいぜい外側を綺麗にする程度で穴の中に突っ込んではいけないと言うのですが、では耳の奥がかゆくなったりした場合にどうしたらいいのかと言えば、素人が触って傷をつけるよりは耳鼻科医に任せておけと言うのが公式な見解であるようです。
ただ現実的に多忙な耳鼻科医の先生方がお安い耳掃除代で快く処置をしてくれるものなのか疑問ですし、仮にしてくれるにしろ多忙な外来の合間を縫ってではひどく待たされるのではないかと思うのですが、そうまでして耳鼻科にかかってもほとんどの人はそもそも耳垢などたまっていないと言われるのだそうです。
昨今では液体タイプの耳洗浄とも言われるものも一部で使われているそうですが、これもほとんどの場合何らの安全性の確認もされておらずおすすめしかねるのだそうで、結局耳がむずむずしても何とか我慢しなさいではますます妙な民間療法も蔓延しそうですから、家庭で出来て安全に満足感も得られる対処法があればいいのでしょうけれどもね。

|

« 年々癌死亡者は増加している、と言うわけではなく | トップページ | サッカー試合中の負傷に賠償金判決 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

>しかも新しい皮膚細胞が生成されると古いほうから順繰りに出ていく自浄作用もあるのだ

ふーん ならば鼻糞だってそうでしょうし、大きく見れば爪切りもそうなってくるのでしょうかね?
鼻もかむな、爪も切るなって新論文もまもなく出てくることでしょう。
しかしジト耳クソの人が耳垢を放置しておくと、耳から悪臭が漂ってくることもありますしねえ…
どうも禁酒法の昔からトランプを選ぶ今に至るまで、アメ公って奴らは
時に極端に走る傾向がありますなあ。

投稿: | 2017年1月12日 (木) 08時15分

僕は「耳かきが原因と思われる外耳道炎患者」に対して

https://www.researchgate.net/publication/6421196_Amyloidosis_of_the_external_auditory_canal_and_middle_ear_Unusual_ear_tumor

https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo1958/25/4/25_4_385/_pdf

糖尿や腎不全があれば
https://www.jstage.jst.go.jp/article/otoljpn1991/16/5/16_5_611/_pdf

の内容を話し,「耳かきするもしないも好きにしてください」と言っていますね.
ここまでひどくならなくても,外耳道炎は毎日通院になることもあります.連日1時間待って5分の処置を受けて帰る姿を見ていると気の毒になりますが,局所処置しないとなかなかよくならない疾病です.

投稿: 耳鼻科医 | 2017年1月12日 (木) 09時28分

不肖管理人個人としても耳かきに由来すると思われる外耳道炎の経験があり、このニュースに興味を持った次第です。

投稿: 管理人nobu | 2017年1月12日 (木) 11時34分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/64738097

この記事へのトラックバック一覧です: 身近に存在する悪魔の誘惑、公式に否定される:

« 年々癌死亡者は増加している、と言うわけではなく | トップページ | サッカー試合中の負傷に賠償金判決 »