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2017年1月 5日 (木)

同意もなければ全くあずかり知らないところからも子供は生まれる

元日に告知しました通り、本年より当ぐり研は不定期更新とさせていただいております。
不妊治療絡みでのトラブルが報じられることは決して珍しくありませんが、こちらあまり例を見ない形でのトラブルがニュースになっていました。

奈良の病院 夫に無断で受精卵移植 別居の妻出産(2017年1月4日毎日新聞)

 不妊治療を手がける婦人科クリニック(奈良市)の男性院長が2014年、凍結保存された別居中の夫婦の受精卵について、夫の承諾を得ず妻に移植していたことが分かった。妻はこの体外受精で妊娠し、長女を出産。院長側は毎日新聞の取材に無断移植を認め、「軽率だった」と話した。日本産科婦人科学会(日産婦)には移植ごとに夫婦の同意を求める倫理規定があり、院長の行為はこの内規に抵触する恐れがある。
 夫は昨年10月に妻と離婚し、長女と親子関係がないことの確認を求めて奈良家裁に提訴した。長女は戸籍上、今も夫の娘になっている。生殖補助医療の専門家によると、受精卵の無断移植が表面化するのは初めてとみられる。

 夫婦関係にあったのは奈良県内に住む外国籍の男性(45)と、日本人女性(45)。男性の代理人を務める大阪の弁護士や訴状によると、2人は04年に結婚した。約7年前にクリニックで不妊治療を始め、体外受精で複数の受精卵を凍結保存した。女性は受精卵を順に移植し、11年に長男が生まれた。
 2人は13年秋から、関係が悪化して別居。女性は14年春以降、クリニックに凍結保存された残りの受精卵を数回にわたって移植したという。妊娠後に男性に打ち明け、15年4月に長女が誕生した。クリニックは2人が治療を始めた10年に一度だけ移植への同意を確認する書面を作ったが、以降はこの手続きを省いた。
 男性側は昨年12月、奈良家裁で開かれた第1回口頭弁論で「同意がない移植による出産を民法は想定しておらず、血縁を理由に親子関係を認めるべきではない」と主張。女性側は無断で移植したことを認める一方、「親子関係を否定する法律はない」として争う姿勢を示した。
 男性は今後、院長と女性に損害賠償を求める訴えも奈良地裁に起こす。

 体外受精を巡っては、国内に同意手続きを定めた法律はない。一方、日産婦は不妊治療を行う全医療機関に対し、倫理規定で移植ごとに夫婦の同意を確認するよう求めている
 元日産婦理事長の吉村泰典・慶応大名誉教授は、「受精卵は夫婦のもので、使用には双方の同意が不可欠だ。今回のケースが事実ならば、院長の行為は内規違反でお粗末だ」と語った。
 院長の代理人弁護士は取材に応じ、「男性の同意を得ていると思って施術したが、慎重に確認すべきだった」。妻は代理人を通じ「取材に答えられない」としている。【原田啓之、三上健太郎】

近ごろ何をやるにも毎回毎回同意書を取らされて面倒臭いとお嘆きの先生方も少なくないのでしょうが、こうした話を聞けばああした行為にもそれなりに意味があるのかと言う気がしますでしょうか。
同じような行為を一連の処置として繰り返す場合、初回の同意書のみで全てを代用してしまうと言うことはしばしばありそうな話ですし、通常であれば患者側にしても毎回同じような書類にサインさせられるのは面倒臭いと言うものですが、実際には途中で何かしら条件が変わってしまうと言うことは起こり得る話です。
その場合公文書であれば記載内容が事実と異なると言うことになれば当然その有効性を問われるはずですし、診療に関わる書類なども公文書に準じて扱われるべきなのは当然ではあるのですが、しかしお粗末で済ませてしまうと実臨床の場において大変な局面が少なからずありそうにも思われますから、なかなか難しそうには感じますね。

しかし今回の一連の経緯を見る限りでは元妻の側は故意にやっているとしか取れない話ですが、一体何をどう考えてこのような行為に及んだのかで、例えば資産の分与だとか養育費の支払いなどで有利な条件を得るために体外受精を繰り返したと言うのであれば、これはなかなか想像するにも怖い光景ですよね。
親子関係とは基本的に双方の同意に基づいた結果として認定されるものとは限らないのは、世の中に認知騒動と言うものがこれだけありふれていることからも判る話ですが、一般的には妊娠出産自体には同意がなかったにせよ、そうした結果を招く行為については同意があっただろうとは言えるわけです。
もし今回のように全くどの段階においても同意がないまま生まれた子が実子認定されるとなると影響がどうなのかですが、医療機関において行われる体外受精に限らずより広範な事例で応用が利くのかどうかで、例えば資産家を狙って何らかの方法で配偶子を得て事後に無断で受精を行ったと言った場合にも実子認定される可能性もあるのか等々、気になるケースは多そうです。

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コメント

「なるほど そういうのもアリやねえ」と思った私は2chにかなり毒されているのか…

投稿: | 2017年1月 5日 (木) 12時25分

ありなのかも知れませんが、なしと考える人も少なからずだと思います。

投稿: 管理人nobu | 2017年1月 5日 (木) 15時20分

…世の中って想像以上だ!

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2017年1月 7日 (土) 15時27分

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