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2016年12月16日 (金)

アメリカ人の死なせ方に対するこだわり

人間時に妙なことにこだわりを持つことがありますが、先日アメリカで起こったこういう議論もそうしたこだわりに由来するものの一つと言えるのでしょうか。

米の死刑執行で13分間苦しむ、薬物注射めぐる議論再燃(2016年12月10日AFP)

【AFP=時事】米アラバマ(Alabama)州で死刑を執行された死刑囚が、せきをしたりあえいだりして13分にわたって苦しんだことが立会人の話で明らかになった。これを受け、死刑執行に使われる薬物注射の有効性に関する議論が再燃している。

 ロナルド・スミス(Ronald Smith)死刑囚(45)は、1994年に犯したコンビニ店員殺害の罪で死刑判決を受けていた。

 死刑に立ち会ったメディアの一つAL.comのケント・フォーク(Kent Faulk)記者によると、スミス死刑囚の刑は8日夜、34分かけて執行された。その間スミス死刑囚は息をしようとしてもがいているように見えたという。

 アラバマ州矯正局のジェファーソン・ダン(Jefferson Dunn)局長によると、死刑執行の手順に何らかの不備がなかったかどうかを調べるため検死を行う予定だという。

 米国の死刑制度が存続している州では薬殺刑用の薬物が不足している。その一因として、一部の製薬会社が死刑執行用の薬物の提供を拒んでいることが挙げられ、こうした会社のほとんどは死刑制度が廃止された欧州に本拠を置いている。

 こうした薬物の不足に対処するため、アラバマ州をはじめとする一部の州は1つ目の薬物で死刑囚を眠らせ、2つ目でまひさせ、3つ目で心臓を止めるという3種の薬物を使う方法を採用している。

 アラバマ州は1つめの薬物として催眠鎮静剤のミダゾラム(Midazolam)を使用しているが、ミダゾラムを投与しても2つ目、3つ目の薬物が投与される前に深い無意識状態に入らないとの批判もある。

ミダゾラムが効かなければ他の薬を使えばいいんじゃないかと言う人もいるかも知れませんが、あまり妙な薬を容赦なく使っていると本番の薬を投与する前に呼吸が止まってしまうかも知れずで、この辺りは微妙に安全性との兼ね合いと言うこともあってのことなのでしょうか。
アメリカにおいても死刑制度のあり方は大きな社会的関心事であるようで、全米50州のうち19州は死刑制度が法的に廃止されているそうですが、死刑制度が残る州ではほとんどがチオペンタール、パンクロニウム、塩化カリウムの3種の薬品を使っているのだそうで、かつて死刑制度の代名詞だった電気椅子などは違憲判決が出たこともあって原則的に廃止されていると言います。
その背景には残虐な刑罰は人道的にケシカランと言う世論があると言えますが、特に電気椅子による刑執行の失敗が複数あるとの報道が出たことなども「残虐で異常な刑罰」廃止への契機となったのだそうで、かつて確実で苦痛の少ない人道的死刑法としてギロチンが開発されたように、死刑執行の方法もより改善され傍目に人道的と見えるものになってきていると言うことですね。
ただ確実で苦痛も少ない方法として開発されたこの薬殺法ですが、時に効果が乏しく死刑囚が長くもだえ苦しむ(ように見える)と言うケースも見られることが知られており、特に今回取り上げ荒れているミダゾラムなどは経験的に極めて効きが悪い人もいることが知られていますから、さらなる方法論の改善が望まれると言うことになるのでしょうか。

ところでこの薬物による死刑の一つの特徴として、ほとんどの場合その執行が医師によって行われると言うことが挙げられますが、当然ながら医学教育において如何に人を死なせるかと言うことを学び結果医師になったと言う人もまずいないでしょうから、極めて精神的な負担感の大きな作業であると言うことです。
この点に関連して興味深いケースとして薬物での刑執行に医師立ち会いを義務づけていたノースカロライナ州での事例がありますが、2006年に5人の医師による問題提起を契機に翌年州の医療監察委員会が医師が死刑執行に携わることは反倫理行為であり、関わった医師は免許剥奪など処罰の対象とすると表明した結果、以後は薬物による死刑執行が行えなくなったと言います。
近年では世界中で自動安楽死装置とでも言うべきものが実用化されており、別に医師でなくとも誰でも安全確実?に薬殺が行えるようになってきているわけで、実際問題として医師が立ち会う必要性はありませんけれども、より人道的な死刑をと凝りに凝った方法論を選ぶほど専門家を関与させる必要が高まり、結果として専門家から拒否されると言う別なリスクも増えてくると言うことになりかねない訳です。
ちなみに日本では今もかなり古いスタイルの刑罰とも言える絞首刑が執行されていて、これはこれで不確実性など様々な問題も指摘されているようですが、絞首台を作働させるボタンは本物に加えてそっくりな偽物のボタンも二つ用意されていて、3人で同時に押すことで誰が刑を執行したのか判らなくすると言う人道的な?工夫がされているそうですね。

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コメント

眠るように死ねるって犯罪抑止的にはどうなんだろう?

投稿: ぽん太 | 2016年12月16日 (金) 08時43分

>極めて精神的な負担感の大きな作業であると言うことです。
じゃあ死刑囚にボタンを押させるなり何なりさせてはどうでしょうか?
みんながみんなレクター氏って事もないでしょうし。。。

投稿: | 2016年12月16日 (金) 09時18分

ふつーに絞首刑でいいんじゃないですかねえ?シンプルだし、苦痛は殆どないそうだし。

>じゃあ死刑囚にボタンを押させるなり何なりさせてはどうでしょうか?

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1446846714
>懲役囚は「刑務所」で懲役刑の一環として刑務作業に就きますが、 死刑囚は文字通り「死」に処せられるのみの刑なので「拘置所」の独房で執行を待つのみの日々となります。ただし、本人が希望すれば独房内で可能な点訳などのボランティア的な作業は許されることがあります。

だ、そうで、無理強いは法律違反っぽいですが死刑囚が希望すれば可能?

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年12月16日 (金) 10時15分

囚人にさせなくても、そういうボタンを押したいと思っている一般人がおられるでしょうから、法律を改定した上でそういうボランティアを募ればいいと思います。
刑務官にさせるより安上がりかもしれません。

投稿: クマ | 2016年12月16日 (金) 11時22分

刑罰の場合建前的には個人に禁じられている行為を国家権力として例外的に行うのですから、公務員でない者に執行させると余計な面倒が発生するかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2016年12月16日 (金) 13時07分

ヤンキーどもがなぜ銃殺刑を採用しなかったのか

投稿: | 2016年12月16日 (金) 17時21分

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