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2016年12月28日 (水)

全国医師10万人の勤務実態調査の結果何がどうなるか?

ちょうど先日厚労省から医師10万人の勤務実態調査を行う旨の発表がありましたが、診療所の医師も含め無作為抽出で行われること、返信が病院経由ではなく個別に返送するようになっていることなどから、果たしてどのような結果が出るものかと注目する向きも少なくなかろうと思います。
一方で興味深いのがこうした実態調査に反発する声も出ていると言うことなのですが、こちらの記事から紹介してみましょう。

「異例かつ非礼」「異常事態」、医師需給推計の進め方に疑義(2016年12月8日医療維新)

 厚生労働省が12月8日の社会保障審議会医療部会(部会長:永井良三・自治医科大学学長)に対し、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の検討状況を説明したところ、「異例かつ非礼」「異常事態」など、医師需給推計の議論の進め方や、厚労省が現在実施中の「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」(以下、医師勤務実態調査)の内容について異論が続出した。
(略)
 さらに「異常事態だと思う」と切り出したのは、日本医師会副会長の中川俊男氏。「ビジョン検討会は、医師需給分科会に、屋上屋を重ねて、議論をしている。しかも、非公開であり、その結論を待てというのは、異常事態」と述べ、厚労省に経緯の詳しい説明を求めると同時に、医師勤務実態調査について、「どのようにも解釈できる調査」と指摘し、その調査結果の解析・評価に当たっては、恣意性の排除を求めた。
(略)
 医師勤務実態調査の内容に疑問を呈したのは、日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長の木戸道子氏。「この調査票の設計は、どのように行われているのか。作り方がずさんで、不適切な選択肢がたくさんある」とした。例として、「夜間・休日の勤務体制」として、「オンコール制」「交代勤務制」の二つの選択肢のみで、「当直制」がないことを挙げた。「育児を中心的に行った人」に「ベビーシッター」はあるが、「介護を中心的に行った人」には「ヘルパー」がないなど、選択肢に整合性がない点も問題視した。「正しい現状を把握できないまま、将来の施策に関係する制度設計が行われることに大変不安を覚える」(木戸氏)。
(略)
 中川氏は、医師勤務実態調査の結果の取り扱いを質問。
 武井医事課長は、「医師の働き方について、タイムスタディを行っており、今の勤務実態が明らかになってくる」と述べ、現状の勤務の課題や将来希望している働き方なども調査していることから、ビジョン検討会ではそれを踏まえて「医師の働き方改革」に資する議論ができると説明した。さらに調査結果は、「医師需給分科会」での医師需給推計の際に活用できるとした。
 この回答に納得せず、中川氏は「あの調査で、勤務実態が把握できると思っているのか」と問題視した。武井医事課長は、医師勤務実態調査のみで、すぐに医師需給推計ができるわけではなく、データの一つとして活用すると繰り返し説明。
 それでもなお中川氏は、「ものすごく時間をかけて議論し、限りなく結論を遅くしようとしているのか」と質し、厚労省幹部に「異常事態ではなく、正常事態に戻すよう、努力してもらいたい」と求めた。

分科会で議論しましょうと言っていたものを、突然別の組織で議論することになったからと分科会を中断して結論を待つと言うことにしたのは確かにどうなのかと言う話ですが、しかし偉い先生方にこれだけ批判されると言うくらいですからさぞや医師勤務実態調査には問題があると言うことなのでしょうね。
ちなみに厚労省のHPによれば「各診療科等で当直体制を敷いている場合は、交代制勤務に含みます」等々、今回出てきた疑問に答えるような注釈も記載されているのですが、時系列を見るとまさにこの医療部会での批判殺到を受けて急遽用意しましたと言う印象があり、そもそも実際に回答する先生方がどこまでこうした注釈に目を通して回答出来たのかです。
ただ全国的にこれだけ大規模な調査が行われるのは初めてのことだと言うことで、ともかくもまずは実態がどのようなものなのかと言う議論の叩き台としての価値はあるのかなと思うのですが、問題はその結果に対して厚労省としてどのようなリアクションをするべきなのかと言うことで、厚労省のうちの「労」の部分からは先日こんな発表があったそうです。

残業「80時間超」で企業名を公表、基準厳しく(2016年12月27日読売新聞)

 大手広告会社・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)の過労自殺問題を受け、厚生労働省は26日、違法な長時間労働があった大企業に対し、行政指導段階での企業名の公表基準を引き下げることなどを盛り込んだ緊急対策を公表した。

 現行の月100時間超の違法な長時間労働を、月80時間超に見直す。早ければ来年1月に各労働局に通達し、適用する。

 行政指導段階での企業名の公表について、昨年5月に導入された現行の基準は、1年間に3事業所で、10人以上または4分の1の従業員に月100時間超の違法な長時間労働があった場合としている。しかし、過労による労災認定についての基準はなく、これまでに公表されたのは1社だけだった。

 今回の見直しでは、長時間労働の基準を月80時間超に引き下げ、事業所数も年間2か所とした。また、複数の事業所で過労が原因の労災が認定された場合も、新たに公表の対象に加えた。

医師であれば超勤が月80時間を超えている人間など別に珍しくもなんともないのでしょうが、しかしこの場合全国の医療機関を片っ端から公表するものなのか、それとも医療機関においては特例として何らかの手心を加えるものなのかが注目されるところですよね。
一応の言い訳としてここで問題視されているのはあくまでも違法な長時間労働に関してであって、いわゆる三六協定によって違法ではないとされているものに関しては対象外であるとも言えるかと思いますが、医師ユニオンによる調査では全国病院のうち三六協定が締結・開示されている施設が7割、さらにそこに医師が含まれていると確認出来た施設は6割弱だったと言います。
また当直やオンコールを労働時間にするのか、会議やカンファレンスの時間はどうなのか等々、幾らでも解釈の余地がある話はあるのですが、この辺りを厳しく突っ込みすぎると厚労省の「厚」の部分にとっては困ったことになるのかも知れずで、厚労省内部でどのような摺り合わせが行われるものなのかにも注目していきたいですね。

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コメント

「各診療科等で当直体制を敷いている場合は、交代制勤務に含みます」
などという調査は、予め想定された結果が出ることを意図したものと考えられるべきでしょう。

投稿: JSJ | 2016年12月28日 (水) 10時44分

これどういう方向の結論狙ってんだろ?

投稿: | 2016年12月28日 (水) 11時50分

厚労行政の目指すところを把握する意味でも、ここは生暖かくレポートを見守るのも一手かと思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年12月28日 (水) 14時28分

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