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2016年11月 8日 (火)

歯科不正請求問題で厚労官僚の意外なセカンドキャリアが話題に

ある意味では仕事熱心で優秀なコンサルだったと言えるのかも知れませんが、先日こんな一件が報じられていました。

<診療報酬資料改ざん>元厚生官僚が歯科医に指南(2016年11月4日毎日新聞)

 診療報酬の不正請求を調べる厚生労働省の「個別指導」を巡り、東京都内でコンサルタント会社を営む元厚生官僚(65)が、指導対象となった大阪市内の歯科医に不正が発覚しないよう資料の改ざんを指南していたことが分かった。元官僚は現役時、「医療Gメン」と呼ばれる医療指導監査官で、現在は全国の歯科医に行政対応を助言。厚労省は「指導逃れ」に当たるとみて、この歯科医を再調査する方針だ。

 ◇国の不正調査時

 厚労省などによると、元官僚は歯科大で博士号を取得し、1980年に旧厚生省入り。歯科衛生課長補佐などを務め、97年に退職後、2000年にコンサル会社を設立。現在約40カ所の歯科医への助言のほか、東京や大阪で定期的にセミナーを行っている。大阪市内の歯科医院の院長は14年11月に厚労省近畿厚生局の個別指導を受けた際、元官僚に対応を相談した。
 個別指導では、厚生局が指定した患者30人分のカルテやレントゲン写真、歯にかぶせる金属や義歯(入れ歯)を業者に発注する際の「技工指示書」などの資料を歯科医が持参。厚生局は診療報酬の請求内容と矛盾がないかを調べる。
 複数の関係者によると、元官僚は資料の不備や不正請求が疑われないように広範な書き換えを指示。義歯に安い金属を使っているのに高い金属で診療報酬を請求したケースでは技工指示書を作り直したり、納品書を業者に書き換えてもらったりするよう助言した。偽装資料はコーヒーに漬けた後に乾燥させ、古びて見せる手口なども示していた。

 院長は「(元官僚は指導の)裏を知っている人だから、言うことを聞けば確実だろうとその時は思った」と証言。院長によると、高齢者施設などに出向く「訪問診療」での請求を巡る意見の食い違いから途中で相談をやめ、今年3月まで続いた個別指導では訪問診療での不正請求など数百万円を返還したという。関係者は「元官僚の指南がなければ(他の診療の不正も指摘され)更に重い処分を受けた可能性がある」と話す。
 元官僚は「書き換えをしないと歯科医がクビ(資格取り消し)になる。応急処置をせざるを得なかった。書類の不備がないよう助言しており、不正請求を助長しているつもりはない」と話した。【藤田剛】


偽装指南、微に細に コーヒーに浸して古さ装う/レントゲンを色鉛筆で修正(2016年11月4日毎日新聞)

 偽装した書類をコーヒーに浸して古びたように見せ、レントゲン写真は色鉛筆で修正。診療報酬の不正請求を調べる厚生労働省の「個別指導」を巡り、元厚生官僚(65)が歯科医に指南した「偽装工作」の詳細な手口が、内部資料や関係者の証言で分かった。現役時には「医療Gメン」と呼ばれ、指導を取り仕切っていた元官僚。歯科医は助言に従い資料改ざんに手を染めたが、最後は「医師の名義借り」まで指南され「ひどいことになる」と考え相談をやめたという。【藤田剛】

 2014年11月10日、元官僚が経営する神奈川県のコンサルタント会社(現在は東京都に移転)から大阪市内の歯科医院に1枚のファクスが届いた。歯科医院は10日後に厚労省近畿厚生局の個別指導を受ける予定で、元官僚に相談。ファクスはその事前準備を細かく指示していた。「伝票の照合作業を行い、不一致が生じた場合には訂正依頼をする」「訂正分カルテを業者に依頼し18日までに新カルテの入力作業を行う」
 元官僚が泊まりがけで来院すると作業は本格化した。歯の治療を装うためレントゲン写真の上から銀の色鉛筆で着色し、2年以上前の書類を作り直す際は水で割ったコーヒーに漬け、ドライヤーで乾燥。指示内容をまとめた内部資料にはこんな記載もあった。「検査の数字はいろいろな太さで書く。同じ日に全部書いたのではないことをアピールする」「技工所(義歯などの加工業者)には納品書の書き換えなど協力を要請しておく。1枚5000円が謝礼の相場」
 個別指導は翌年以降も続き、厚労省から特に不正が疑われたのは高齢者施設などに出向く「訪問診療」関連の請求だった。訪問診療は20分未満なら報酬が大幅に下がるが、実際は20分未満なのに20分以上と装い請求していた。個別指導でつじつまを合わせるには医師の数が足りなかった。

 院長によると、元官僚から「他院のドクターから名義を借りる」「20分以上と証明するには『認知症で治療開始まで時間がかかる』などのストーリーメークが必要」と助言され、一時は虚偽の資料作成を始めた。別の歯科医院の協力も得られる見通しだったという。
 院長は「言う通りにやっていたら、運が良ければウソを貫き通せるかもしれないが、少しでもつじつまが合わないとめちゃくちゃひどいことになる。『これは丸わかりやん、あかんな』と思った」と話す。結局、名義借りをあきらめて元官僚への相談もやめ、元官僚に支払った謝礼は約50万円だったという。
(略)
歯科医院>コンビニ 20年で1万カ所増

 厚生労働省調査(2015年)では歯科医院は全国に約6万8700カ所で、20年前より約1万カ所増えた。コンビニエンスストア(今年9月時で5万4400店余)より多く「経営は厳しい」(ある開業医)という。厚労省は新規開設医を含めて年間約3000件の歯科に個別指導を行い、10~14年度に保険医登録の取り消し処分(取り消し相当含む)を受けた歯科医師は88人。医師の46人や薬剤師の18人を上回る。
 保険医登録を取り消されると原則5年間、保険診療ができないため、インターネット上では「個別指導対応」をうたうコンサルタントなどのホームページが増えている。ただ、現状でコンサル業を規制する法律はない

元官僚側のコメントも載っていて、興味深いことにこちらでは歯科医の言い分とは逆に「悪いのは書き換えではなく、実際と違い高めの金属で請求している歯科医」「そんなにひどいと思わなかった。だから途中で手を引いた」とむしろ自分から手を切ったとのことですが、歯科医は行政処分になるとして元官僚はどうなるのでしょうか。
泊まり込みで作業指示をするほど働いて50万円ならむしろ安かったと言うべきなのかも知れませんが、しかし不正請求と言われるものの中にも色々なレベルがあってそれは切る方がどうよ?と思われるものも多いのですが、今回の場合は記事から読む限り確かにそもそもの診療内容にも相当な問題があったようにも見えますね。
この辺りは個人経営の小さな歯科クリニックなどではなかなかレセプトチェックまで手が回りきらないと言う部分もあるのかも知れませんが、ここまで大々的な改変作業をしなければならないとなれば元官僚も頭を抱えたのではないかとも思われ、院長先生も普段の診療からもう少し何とかならなかったのかと言う気もします。
記事では歯科医院の林立による過当競争によって経営悪化から不正に走ったのでは、と言うシナリオを匂わせる内容になっていますが、国や保険者としてもこうまで歯科医過剰が言われるようになると敢えて経営的な配慮など必要性を感じていないのでしょうか、今後歯科領域では悪貨は容赦なく駆逐すると言う方針でますます指導が厳しくなる可能性もありそうですね。

実際に医師に比べて数が少ないはずの歯科医師がこれだけ多くの保険医登録取り消しを食っていると言うことは、チェックの目線が厳しいことに加えなりふり構っていられない経営の厳しさもあるのでしょうが、個人でやっている小規模施設で働いている歯科医が多い点も関係しているのでしょうか。
医科の場合は歯科と比べれば高額な診療報酬を請求しているのは大規模施設に多く、そうした施設では事前のレセプトチェックなど事前の対応も相応に厳しくなっているはずですが、逆に言えば査定にかからない請求方法と言うことへの必要性も高いとも言え、今後はこうしたコンサルへの需要も増えていくのかも知れません。
官僚のセカンドキャリアとしても新たな分野を開拓出来るとも言えますが、当然ながらお金に関わるシビアな問題を扱うわけですから実績等によってコンサル業自体も今後その質を問われることになるでしょうし、今回のように犯罪的な改変作業に手を染めるだとか、表向きの業務以外の部分で政治的影響力を行使するともなれば社会的にも問題視されかねませんよね。
医療機関側としては偽装、捏造とも言われかねない犯罪的な行為には手を出さないのは当然ですが、近年では地域の基幹病院ですら保険診療の停止など重大なペナルティを受けるケースも見られることから、怪しげなコンサルに手を出さずとも済むよう普段からよほどに心がけておくことが必要な時代だと言えるでしょうか。

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コメント

こういうの何の罪になるんだろ

投稿: | 2016年11月 8日 (火) 08時18分

ざっと調べて見た限りですが、こうした場合コンサルタント業者の責任を問うのはなかなか難しいようですね。

投稿: 管理人nobu | 2016年11月 8日 (火) 13時25分

作成者 さま はじめまして


ブログ読んでいます。


誠に恐れいりますが

該当日記のURL

http://gurikenblog.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-87b2.html

この記事へのコメント 2013/08/20を削除してください。

よろしくお願いします。

投稿: 読者です | 2016年11月 9日 (水) 01時19分

削除しました。

投稿: 管理人nobu | 2016年11月 9日 (水) 13時02分

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