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2016年11月28日 (月)

医療費削減を目指して高齢者負担増が本格化

国政の場においても来年度の話が地道に進められている中で、長年の懸念となっていた問題がようやく実現しそうだと報じられていました。

高齢者負担拡大で国費圧縮 医療1千億、介護400億 所得に応じ、政府・与党 17年度、現役保険料増も(2016年11月24日共同通信)

 2017年度予算編成で政府、与党は23日、社会保障費の伸びを医療分野で1千億円程度、介護分野で400億円程度抑える方向で調整に入った。所得が比較的高い高齢者の負担軽減措置の縮小が柱。一方、大企業社員に介護保険料の負担増を求めるなどして、国民の理解を得たい考えだ。
 政府は財政健全化のため17年度、国費で賄う社会保障費を1400億円圧縮する目標を設定しており、達成に向け来月上旬にも具体的な実施時期や対象者数を固める。

 医療費の自己負担が高くなりすぎないように月ごとに上限を設けている「高額療養費制度」では、70歳以上で一定以上の所得がある人の上限額を引き上げる。高齢者は受診する頻度が高いとして、外来医療費の上限を現役世代より低額に抑える特例もあるが、低所得者を除き縮小。数百億円が抑制される見通しだ。
 75歳以上の後期高齢者医療制度では、専業主婦ら扶養家族だった人や低所得者の保険料を最大9割軽減している特例を、新たに75歳になる人から一部廃止する方針。既に軽減を受けている人についても数年間で段階的に保険料を引き上げ、17年度は200億~300億円の削減を見込む。
 療養病床に長期入院する患者のうち、医療の必要性が比較的低い人の光熱水費を現在の1日320円から370円に引き上げる。難病患者を除き、費用を徴収する範囲を医療の必要度が高い人にも広げる考えだ。
 超高額の抗がん剤「オプジーボ」は来年2月、薬価を半額に下げると既に決定。約180億円の削減効果がある。
 中小企業社員が入る協会けんぽへの国庫補助金は、財政に余裕があるとして300億~400億円減らす。
 介護保険では、40~64歳が支払う保険料の計算方法を見直し、収入に応じた「総報酬割」という仕組みを数年かけて段階的に導入する。17年度は数百億円の削減となる。
 介護サービスの利用者負担月額に上限を設ける「高額介護サービス費制度」で一般的な所得の人の上限額を引き上げる
(略)

現役並み収入の高齢者ら、医療費負担増へ 来年度から(2016年11月16日朝日新聞)

 厚生労働省が来年度から実施する医療や介護の負担増の大枠が固まった。現役世代並みの収入がある70歳以上の人は医療費の自己負担上限が上がり、新しく75歳になる人は保険料の軽減特例がなくなる。大企業の会社員らは介護保険料の負担が増える。さらに対象を広げるか財務省と調整し、年内に最終決定する。

 医療費では、年収に応じて自己負担月額の上限を定める「高額療養費制度」を見直す。年収が370万円以上で70歳以上の人は、上限を現役世代並みに引き上げる。年収370万円未満で住民税を払っている人も含めるかどうかは調整する。
 75歳以上の後期高齢者には年収が低い人を対象に保険料を軽減する特例があるが、来年度から新たに75歳になる人を対象に廃止する。すでに75歳以上の人は3年かけて段階的に廃止することも検討する。
 現役世代の介護保険料は、医療保険の被保険者の収入総額に応じて割り当てる「総報酬割」を来年度から数年かけて段階的に導入する方針。健保組合の約7割と共済組合のほぼすべてで保険料が上がる見通しだ。
 厚労省はこうした負担増などによって、来年度で約1400億円の社会保障費の抑制をめざす。
(略)

この高齢者の医療上の様々な特例に関してははるか以前から是正や廃止が言われていたにも関わらず、様々な要因から延び延びになっていたものですけれども、社会保障制度の財政的な負担増加がどうにもならない状況に陥りつつあることに加えて、このところ政府与党の政権運営基盤が安定していることが是正の推進力となっているようにも思われます。
昨今国も再び医療・介護領域での支出削減のため様々な対策を講じているところで、ひと頃の医療費削減政策が医療崩壊とも言われる現象につながった10数年前を思い出す向きもあるかも知れませんが、医療現場の側ではある程度対策や意識改革も進んでいる印象ですから、直接的にはそこまでの大きな影響はないのかも知れません。
一方で金銭的な負担の増加によって患者側の受診行動がどの程度変わるものなのかと言う点は気になるところで、自己負担が増えれば受診の手控えや金銭的制約による医療内容の制限なども起こり得ることですが、この点で特に今回高齢者の負担増が柱ともなっているように見える点が注目されるところですよね。
日本の診療報酬体系によればとにかく患者が医療機関を受診してくれないことには経営が成り立たないことから、医者が増えるだけ医療需要が喚起されると言う傾向があると以前から指摘されるところですが、国が本当に受診抑制をしたいのであれば単に自己負担増だけではなく、医療機関への診療報酬体系そのものへも抜本的な改革が必要になってくるのかも知れません。

個別の問題点はともかく、総論としては収入の伸び悩みが続きワープア化が続いている中で、年々社会保障制度を支えるための負担が増す一方の現役世代にこれ以上の負担を強いると言うのはさすがにどうなのかで、能力に応じた負担と考えても受益者負担の観点からも高齢者にも応分の負担と言う考えはやむなきところでしょう。
個人個人の属性によって差別的待遇をしてはならないと言うのが今の時代の基本的な考え方になってきているわけですから、ただ高齢者であると言うだけで特別な対応をすると言うのも本来的にはおかしな話だとも言え、少なくとも現役並みの収入もあり資産も少なくないだろう高齢者に負担を求めることは避けられない流れになってきているとも言えそうです。
一連の後期高齢者医療制度の見直しによって、最大で75歳以上の約6割に当たる900万人余りに影響があると言う試算もあるそうですが、近年では高齢者への医療給付自体ももっと絞ってもいいのではないかと言う考えも台頭してきていますから、将来的には診療報酬体系なども高齢者と現役世代とで差別化が図られていくことにもなるのかも知れません。
この点でで注目されるのが昨年春の原則要介護3以上と言う基準の厳格化に伴い、特養入所待機者が一気に4割以上も減ったと報じられていることですが、それが介護難民や介護離職増加など様々な問題を生んでくると言う懸念はさておき、目先のちょっとした線引きの調整でこれだけの効果があると言うのは国にとっては美味しい話に感じられることでしょうね。

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コメント

出せる人には分け隔てなく出してもらおう

投稿: | 2016年11月28日 (月) 08時17分

年金も引き下げられたらダブルパンチになりそうな。
実際に困る人がどんだけ出てくるかですかね。

投稿: ぽん太 | 2016年11月28日 (月) 09時17分

長期的に見れば現高齢者世代の資産を回収した後、次の世代はどうするかと言う大きな課題は先送りになっているとも言えます。

投稿: 管理人nobu | 2016年11月28日 (月) 15時39分

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