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2016年11月16日 (水)

飲酒運転で検問突破しても処分軽減される医師という職業

近年飲酒運転に対する世間の目線がどんどん厳しくなっている中で、珍しく処分を軽減されたと言うニュースが出ていましたが、元ネタとあわせて紹介してみましょう。。

患者が危篤に! 飲酒検問振り切って、医師逃走 対馬、酒気帯び運転疑い現行犯逮捕(2016年7月9日産経新聞)

 長崎県警対馬南署は9日、道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで長崎県対馬病院の医師(59)=同県対馬市厳原町=を現行犯逮捕した。署によると、医師は検問を振り切って逃げ、署員がパトカーで追い掛けて止めた。呼気検査で基準値を上回るアルコールを検出したため、逮捕した。

 病院を運営する長崎県病院企業団によると、所属の医師に対し、緊急呼出を受けて車を運転できない場合、原則タクシー利用を義務付けている。逮捕された医師は担当する患者が危篤状態に陥り、自宅から病院に向かう途中だった。患者は間もなく死亡。病院企業団は「当直医が代わりに対応し、影響はなかった」と説明している。

 逮捕された医師は対馬島内で唯一がんの放射線治療ができる医師で、病院企業団は今回の逮捕で患者が治療を受けられなくなる恐れがあるとして、対応を検討している。

 逮捕容疑は9日午前2時10分ごろ、同市厳原町の国道382号で酒気を帯びた状態で乗用車を運転した疑い。


酒気帯びの医師を停職7日 危篤患者に対応と軽減(2016年11月9日共同通信)

 長崎県は8日、酒気帯び運転をした県対馬病院(対馬市)の男性医師(59)=同市=を停職7日の懲戒処分とし、管理職から一般職に降格したと発表した。通例では免職に相当するが、危篤状態の患者の元に向かっていたことを考慮し、処分を軽くしたとしている。

 病院を運営する長崎県病院企業団によると、医師は7月9日未明、道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで現行犯逮捕された。自宅で発泡酒3本を飲んで眠り、約6時間後に病院から呼び出しを受けて乗用車を運転していた。企業団の聞き取りに「お酒は抜けていると思った」と説明したという。

 10月に厳原簡裁から罰金30万円の略式命令を受け、納付した。

今回の一件に関しては医師の特権云々と批判する声もないではないのですが、一方で飲酒後6時間の呼び出しで「酒は抜けていると思った」と言う弁解には一定の理解を示す声もある一方、検問を振り切って逃げていると言うことでやはり飲酒の自覚はあったか、あるいはそもそも冷静な判断力を喪失していた可能性はあるとの指摘もあるようですね。
こうした場合通常ならば少なくとも停職または免職に相当すると言うことであり、場合によっては学会による専門医剥奪や保険医指定を外されるなどの行政処分もあり得るケースで、地域内で特権的地位を所持しているからと軽々しく罪を減免していいものか、そもそもが医師として自覚に欠けるのではないかとむしろ同業者から批判も出ているようです。
他方では問題にするべきは飲酒運転で検問を振り切ったことよりも、飲酒状態で患者の診療に当たろうとしたことではないかと言う指摘もありもっともだとは思うのですが、法的には飲酒状態での診療に対する罰則と言うものはないそうなので、酒を飲んでいようがタクシーで出てくれば無問題と言う病院側のスタンスは問題視されていないようです。

しかしこの一連の経緯について、そもそも酒を飲んでいなければ良かったのだと言えば言えるのですが、当直勤務以外での医師の拘束と言うことを考えるとなかなか難しい問題が含まれていて、例えば休日に病院を離れて遠くまで外出は出来るのかと言ったことでさえ、特に今回のように代替する医師がいない場合何となく遠慮すべきだと言う空気も未だにあるようですね。
基本的には警察や消防などと同様医療も交替勤務制で行われるべきで、勤務日以外は待機の日と完全フリーの非番の日を設けられればいいと言う話ですが、都心部はともかく今回のような地方では人員の手当等様々な事情から全くもって実現の可能性の乏しい話で、今現在も全国で類似の事件は幾らでも起こっているのだろうと思います。
昔は田舎の住民などはのんびりしたもので、医師が酒を飲んでいる時に呼び出したりすればむしろ申し訳ないことをと声をかけるような文化もあったようですが、現状で医療現場の現実と法的社会的なルール、そして昨今何かと話題になる労働者の権利擁護と言う視点から、どの辺りを落としどころにすべきなのかは難しい話ではありますね。

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コメント

私も一人医長で終末期患者も診ていますが

「当直医が代わりに対応し、影響はなかった」
という状況なのに
「担当する患者が危篤状態に陥り、自宅から病院に向かう」
必要があったというのが不思議です.

僕は
「時間外は診てあげられません.診てあげられるとしても素面とは限りません.それでもよければどうぞ」
という態度なのですが,これはだめなのかしら? 

投稿: 耳鼻科医 | 2016年11月16日 (水) 08時27分

それで全然問題ないと思うのですが。

投稿: ぽん太 | 2016年11月16日 (水) 09時24分

このような事例では医道審議会で医業停止処分を受ける可能性があります。
それを待たずに病院がこのような処分をするのは勇み足ではないかと思われます。
医業停止処分中にも給料払わないといけないわけですから・・・

投稿: クマ | 2016年11月16日 (水) 09時56分

詳細な状況が判らないのですが、今回病院は当直対応で問題なしと言っているのですから、今後はそれでいいのではないかと思います。
本来何でも主治医任せでなくこうした場合の院内でのルールが決めてあるべきなのでしょうが、運用が徹底されるかどうかですね。

投稿: 管理人nobu | 2016年11月16日 (水) 11時40分

良かった.僕のやり方はおかしくないのですね.

僕が勤務している病院は「公立」ですが,内科系の先生方も
「時間外に死亡した場合は,当直医の先生ヨロシク」
ってのが当然なのです.

僕はマイナー科ですから,なかなか他科の先生にお願いできませんが
「時間外はまともな対応ができません.それが嫌なら隣町(クルマで1時間程度)の病院に行ってください」
という方針に同意できる方をメインに診療しています.
それで思ったのは
「自分が思っている以上には,患者は僕に期待していない」でした.
勤務医の皆様,正直にさらけだしたら楽になります.

投稿: 耳鼻科医 | 2016年11月16日 (水) 19時27分

田舎の病院に限った話ではないと思いますが、長くその患者さんを診ていると、相手との信頼関係が深まっていきます。入院中は、本人も、家族も、より病院や、特に主治医との繋がりが増えていきます。

そんな中、患者さんのご家族は、主治医の先生による看取りを希望される方もいらっしゃるでしょうし、逆に、医師自身も、この患者さんの最期を見届けたいという人情や、責任を感じるのは自然なことであると考えます。

なので、今回の件は「飲んだならタクシーで看取りに行けば良い」と個人的に思うですが、「当直医が居るから、受け持ち患者さんの看取りを任せる」かどうかは、患者さんやそのご家族の気持ちを慮ってから判断することではないかと考えます。

投稿: 田舎医師 | 2017年3月 5日 (日) 14時37分

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