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2016年11月21日 (月)

終末期の意志表示だけでは不十分

近年いわゆる終末期医療に関連した指針が各学会から発表されており、場合によっては延命的医療の中止や差し控えも考慮すべき状況になってきていますが、現場での実情に関してこんな報告が出ていたそうです。

救急搬送の延命中止36% 終末期患者で医師提案 8割は家族の意向通り(2016年11月15日共同通信)

 死期が迫った状態で救急搬送された患者について、日本救急医学会が過去5年半の間に医師から報告された159件を調べたところ、医師側が患者の家族に延命治療の中止を提案したケースが36%に当たる57件に上ることが15日、分かった。
 いずれも複数の医師らによる医療チームが、回復の見込みがない「終末期」に該当する患者かどうか判断した上で延命中止を提案しており、57件のうち48件(84%)でチームの中止方針と家族の意向が一致していた。残り9件では家族の意向は中止ではなかったが、積極的な回復治療は求めなかった。最終的な処置は57件の大半で医師側の提案通りになったという。
 調査を担当した国立病院機構大阪医療センターの木下順弘(きのした・よしひろ)・集中治療部長は「チームが丁寧に説明したことで家族の理解を得られやすかったのではないか」としている。

 調査は全国の救急医らに任意で報告を求め、2010年10月から今年4月までに集まった159件を分析した。
 救急医学会は07年に「終末期医療に関する指針」を策定。薬物注入などによる安楽死は禁じているが、人工呼吸器の取り外しや血圧を上昇させる昇圧剤の減量、人工透析停止といった延命中止行為を選択肢として認めている。57件の内訳は明らかになっていないが、こうした行為が含まれる。
 延命中止以外の102件は、治療レベルを固定して新たな投薬などをしない「差し控え」が59件、「心肺が停止しても蘇生措置を実施しない」が38件あった。5件はその他・不明。
 搬送された終末期患者の年齢は70歳以上が全体の64%を占めた。くも膜下出血や脳梗塞などの脳・神経疾患、肺炎などの呼吸器疾患が多かった。
 患者本人が延命治療に関し事前に意思表示する文書などを用意していたのは3件にとどまった。
(略)

心肺停止の高齢患者、書面のDNAR提示は18%(2016年11月18日日経メディカル)

 2011年度からの5年間に横浜市立市民病院救命救急センターに搬送された院外心肺機能停止(CPA)症例1783例を調べたところ、70歳以上の患者が68.0%を占め、このうちDNAR(Do not attempt resuscitation:心肺蘇生を試みない)の意思を書面で示していたのは17.9%に過ぎないことが明らかになった。同センター長の伊巻尚平氏らが11月17~19日に都内で開かれた第44回日本救急医学会総会・学術集会で発表した。

 対象となったCPA症例1783例を年齢別に見ると、70歳代が22.8%、80歳代が33.4%、90歳以上が12.2%で、70歳以上の症例が68.0%を占めていた。1783例のうち、CPAに備えて事前に何らかの形でDNARの意思を示していた症例は407例(22.8%)で、書面で意思表示がなされていたのは73例(17.9%)だった。DNARの意思が示されていた患者407例を年齢別に見ると、70歳代が16.6%、80歳代が29.2%、90歳以上が50.9%と、70歳以上が86.2%と大半を占めていた。
 搬送元の施設別では、高齢者施設から搬送されたCPA患者が275例(15.4%)で、このうち何らかのADL障害を認めたのは220例(80.0%)。施設からの搬送例のうち158例(57.4%)でDNARが示されており、これはDNARを示していたCPA患者全体の38.8%に相当する。これらの結果から伊巻氏は、「施設に入居しているかどうかがDNARの意思表示に関係していた可能性があるが、現実にはDNARの意思が表示されていても救急搬送が行われている」と説明した。

 伊巻氏は、CPA症例の約7割を70歳以上が占めていたにも関わらず、書面でDNARを表明していた割合が2割に満たなかった点に着目し、「DNARの意思表示は書面で行うことが原則。口頭での確認では不十分だ」と啓発。加えて、「意思表示をするだけではなく、高齢者診療に携わる医療者や患者、家族は搬送をするかどうかも含め、事前に議論をする必要があるだろう」と指摘した。そして伊巻氏は、「救急医療に携わる医療者だけではなく、施設、かかりつけ医、患者、患者家族を含め、社会全体として高齢患者のCPA時の対処法を考えていかなければならない」とコメントした。

大阪医療センターの報告にあるようにおよそ1/3の症例で医師側が延命治療中止を提案しており、その大部分が家族から受け入れられていると言うのが多いのか少ないのかですが、前提条件で死期が迫った状態と言うことですから意外に少ないとも言えますが、残る2/3にしても実際には延命的処置は控えていると言うことですから、終末期の延命処置の手控えについてはかなり広汎に広まってきているように思えます。
一方で終末期患者の多くが高齢者であるからこそこうした判断も行えたのではとも考えられるのですが、横浜市立市民病院の報告で見ますとあらかじめDNARの意志表示を行っていた患者の大部分が高齢者ではあったものの、高齢者であってもDNARの意志表示を行っていたケースは必ずしも多くはなく、きちんと書面で示していたのは少数派であったと言うことも注目されます。
特に施設からの搬送でもともと状態が良くない患者が大部分を占めているにも関わらず、半数近くではDNARの意志確認がされていなかったと言うのも問題なのですが、一方でDNARの施設入居者がこれだけ多数救急搬送されてくると言うのでは、そもそも意志確認の意味があるのかと言う話弐もなりかねませんよね。

こうした場合施設の非医療職スタッフや家族など医学的知識の乏しい方々が救急車を呼んでいるのか?と言う疑問もあるのでしょうが、ちょうど先日は在宅看取り希望の高齢者が主治医判断で救急搬送されそうになったと言うケースが紹介されていて、やはり誰がと言うよりも関係者各人の意志統一の不徹底や誤解が大きな要因になっているのかも知れません。
先日は岐阜で介護サービス等の介入を拒否した親子3人が自宅で亡くなっているのが発見されたと報じられていて、こうした話が出ると誰かがどこかで介入して何とか出来なかったのかと言う声も決まって出てくるのですが、極論すれば在宅や施設での看取りと言うのもこうした話と同じようなものとも言え、出来ることがある場合に敢えてそれを断る個人や家族に周囲がどこまで手を出すべきかと言う議論につながってきます。
「おしん」「おんな太閤記」「渡る世間は鬼ばかり」など数々の作品で知られる脚本家の橋田壽賀子は90歳を過ぎても現役で活動されているそうですが、昨年末に安楽死志望を公表し数年がかりで着々と終活に励んでいるそうで、終末期に自分の意志を貫こうと思うと書面一つサインするだけではなかなか難しく、周囲への根回しなどそれなりに周到な下準備が必要になるのかも知れませんね。

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コメント

家族の意思もですが、患者さん本人の意思がないがしろにされないことを望みます。
橋田壽賀子さんのようなケースはいいのですが、通常は医者などがフォローしないと患者さん本人がなかなか意向を伝えてくれません。

投稿: クマ | 2016年11月22日 (火) 11時51分

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