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2016年11月22日 (火)

AIの進化は単に人間の肩代わりに留まらず

ちょうどAIと人間の棋士とが将棋で争う電脳戦の日程が迫っているところですが、他方では中国でロボットが暴走し周囲を破壊、史上初めて人間を攻撃したと報じられていて、SFの世界で古来主要なテーマになってきた人間と人間の作り出した人工物との争いがいよいよ現実味を帯びてきたと言う声も出ているようですね。
とは言えロボットにしろAIにしろきちんと使えば極めて大きな役に立つことは明白で、特にこのところAIによる診療支援が多忙な医師の負担を軽減するのではないかと注目されていますが、このところ報じられた臨床応用のニュースを取り上げてみましょう。

AI使って診察支援 富士通、医師の負担軽減(2016年11月11日共同通信)

 富士通は10日、人工知能(AI)を用いて、医師の診察を支援する技術を開発したと発表した。AIが医師の代わりにカルテを分析して患者の抱えるリスクを指摘し、医師の診察の負担を軽減する。

 富士通によると、スペインの総合病院で精神科の患者を対象に実証実験した。3万6千人以上のカルテのほか、医療関係の論文や用語集などをデータベース化し、開発したAIに読み取らせた。
 AIと精神科医に患者のカルテを別々に分析させたところ、AIは自殺やアルコール依存症、薬物依存の危険性を85%以上の精度で判断し、精神科医が見落としがちなリスクも指摘したという。

 富士通は、技術的には外科や内科などほかの分野でも応用が可能としており、カルテを分析する時間を減らし、医師が患者と向き合う問診の時間の増加が期待できる


眼底の病気、AI画像診断 成功率8割超、早期発見へ光(2016年11月15日朝日新聞)

 目の底の病気を早期発見するために、名古屋市立大と情報システム会社「クレスコ」(東京都)が人工知能(AI)を使った画像診断システムを開発した。80%以上の確率で診断に成功し、人間ドックなどの健診での利用をめざしているという。

 AIが診断するのは「光干渉断層計(OCT)」と呼ばれる網膜の中心を撮影した画像。機器の前に座るだけで、数マイクロメートルの解像度で目の底の様子を撮影できる。必要な時間は数秒。自覚症状が無くても、老廃物がたまっていたり、異常な血管が生えていたりしないかなど病気の初期段階がわかるという。
 研究には、健康な目も含めた300人の両目のCT画像1200枚を使用。そのうち1100枚には、20年以上の臨床経験を持つ医師の診断をつけ、AIに学習させた。残り100枚の画像をAIに診断させ、1枚につき可能性の高い診断名を五つ挙げさせた。1番目に挙げた診断名が医師の診断と合致したのは83%、2番目までに合致したものを加えると90%だった。残り10%は症例数が少ない病気だったという。

 OCTはすでに普及しているものの、一つの病気でも多くの異常があり、複数の病気を併発していることも多いため、画像の診断には専門的な知識と経験が必要だ。研究チームの名市大大学院医学研究科、安川力(つとむ)准教授(視覚科学)は「すでにスクリーニングに使えるレベルは突破できている。人間ドックにOCT検査とAIによる診断を導入すれば早期発見、早期治療につながる」と期待する。検査機器を開発する企業と共同で、AIの診断システムを組み込んだOCT検査機器を開発中だという。

AIで介護計画作成研究 自立支援に最適な内容に プラン約10万件学習(2016年10月24日共同通信)

 高齢者らが介護保険サービスを使う際に必要な利用計画(ケアプラン)の作成に人工知能(AI)を活用しようという研究が、このほど始まった。実際の約10万件のケアプランなど大量の情報をAIが学習。質のばらつきをなくして自立支援に最適なプランの作成を目指し、過剰なサービスの防止や現場の負担軽減を図る
 厚生労働省の補助金による事業で、介護サービス大手のセントケア・ホールディング(本社・東京)が実施する。政府の成長戦略を策定する未来投資会議でも、実用化を検討する方向だ。

 ケアプランは要介護度や疾病、生活環境などに応じて、介護サービスの種類や頻度を決める。利用者からの依頼でケアマネジャーがつくるのが一般的だ。
 ただ、ケアマネが雇用元の事業者の利益のために過剰なサービスを盛り込んだり、利用者の要求に漫然と応じてしまったりする問題が指摘されている。AIの活用でプランの最適化や作成時間の短縮を図る。

 研究では、介護予防や自立支援で先進的な取り組みをしている複数の自治体のアドバイスを得て、高齢者の心身状態などのデータをAIに学習させる。AIが数十人分のプランを試験的につくり、老年医学やリハビリ、栄養学などの専門家が適当かどうか検討する。
 最終的には、要介護度を改善・維持できるプラン、家族の負担を軽減できるプランなど、1人の利用者に対し複数の選択肢を提案できるようにしたい考え。

 ただ、実際のプラン作成には、利用者が自宅で日常、どのように生活しているかの確認など対面によるきめ細かい対応が必要。セントケア・ホールディングの担当者は「AIはあくまでもケアマネを支援するツールと位置付けて実用化を目指す」と話している。

いずれも実用化されれば非常に便利になるだろうと期待される話ばかりなのですが、興味深いのが眼科の画像判定を自動化する技術で、眼科領域の非専門医が慣れない眼底写真を見ながら適当な所見をつけるよりはよほど真っ当な診断になるだろうし、専門外の勉強まで強いられる健診担当医のストレス軽減と言う意味でも有用そうですね。
この点では日頃こんな仕事面倒臭いと思うようなことはどんどん自動化出来ればそれに越したことはないので、毎月のレセプトチェックや薬剤等の併用禁忌のチェックなどは早速にも自動化していただきたいところなんですが、何がどのようになればより現場で有益なのかと言うフィードバックを、医療現場から開発側にきちんと返していく必要があります。
AIと言うほど高尚なものではないのでしょうが、すでに久しく以前から心電図の自動判定が末端臨床の場にまで行き渡っていて、特に心電図モニターなどにおいては異常を自動で拾い上げてくれることの有り難みは機械力様々と言うものですが、医師以外でもレントゲンやCTなどの位置合わせがボタン一つで出来たり、心電図の電極が勝手に装着されたりすればずいぶんと業務が効率化しそうな気もします。

医療の世界ではともすれば人の命に関わることで慎重な導入を期すべきだと言う反対意見もあり、特に日本においては医療現場に導入する新規機材の類は厳しいチェックを経た上でなければならないと言った規制がありますが、それ以前に機械がやることに命を預けられるものかと言う問題もありますよね。
先日はイギリスでAI裁判官が開発されたと言うニュースが出ていて、普通に考えれば人工知能から有罪宣告されると言うのでは受け入れ難いと反発も出そうですが、日本でも導入されている裁判員裁判などにおいて過去の同種事件でどのような判決が出ているのかと言ったことを参考にしたいとなれば、下手に主観が混じらないだけこうした機械の方が手助けになるのかも知れません。
非常に興味深いのが東大、JAXAおよび富士重工が協力して開発している飛行機の制御システムのニュースですが、機体の物理的損傷時の操縦を支援することで「片翼を失っても生還できる」システムを目指すのだそうで、一見すると戦闘機などに用いられる技術かと思うのですが、旅客機などに搭載されれば日航123便墜落事故のようなケースでも無事に着陸できるのかと期待したくなりますよね。
こうして見ると単純に人間のサポートや業務の肩代わりに留まらず、人間ではとても出来ないようなことがAIの進歩によって可能となる未来が近づいて来ていると言えますが、そうなれば人智を越えたAIのミスを人間がチェック出来るものなのかどうかと言う問題も出てくるもので、そのために新たなAIを開発しなければならないと言う堂々巡りすら予想されてきそうです。

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コメント

こういうものってお値段いくらになるんでしょうね?

投稿: ぽん太 | 2016年11月22日 (火) 08時57分

イギリスでAI裁判官が開発

中国では2004年に既に実現されているようですが?当時ネット上で「デカレンジャーの宇宙最高裁判所だ!」とのコメント多数w
http://musume80.exblog.jp/1005801/

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年11月22日 (火) 12時29分

中国の場合量刑決定に当たって、どのようなパラメータが入力されるものなのか興味深いですね。

投稿: 管理人nobu | 2016年11月22日 (火) 15時20分

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