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2016年10月31日 (月)

医師偏在対策、各方面からの提言が続々と

医師不足だ、いや医師偏在だと様々な議論もあるところですが、このところの医学部定員増加政策で医師総数が順調に増えてきているせいか医師偏在対策こそ急ぐべきだと言う論調が強くなっていて、問題はその方法論をどうすべきかと言うところになってきているようです。

「保険医の定数設定」なども可能に、国・県の権限強化を 財制審・財政制度分科会、医師偏在対策で提言(2016年10月28日医療維新)

 財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は10月27日、「経済・財政再生計画 改革工程表」に盛り込まれた社会保障分野の制度改革案を議論、医師の地域・診療科偏在については、特定地域・診療科での診療従事を医療機関の管理者の要件にしたり、保険医の配置・定数の設定などの規制的・実効的な是正策が講じられるよう、国と都道府県の権限を強化すべきと提言した(資料は、財務省のホームページ)。

 医療機関の管理者要件と絡めた医師の偏在対策は、NPO法人「全世代」がこの10月にまとめた提言にも盛り込まれた内容だ(『「医師不足地域での勤務」、保険医療機関の責任者の条件』を参照)。

 社会保障審議会医療部会をはじめ、厚生労働省の審議会・検討会でも、医師不足問題の中心的議題は、偏在対策(『「医学部定員、2020年度以降も増員」をけん制』などを参照)。本分科会は、2008年度以降、増員してきた医学部定員については、「医師需給の見直しを踏まえた精査・見直しを進めていくべき」と指摘しており、医師不足については、絶対数の問題から、地域・診療科偏在の問題に重点がシフトしている。
(略)

「医師不足地域での勤務」、保険医療機関の責任者の条件 NPO法人「全世代」私案、塩崎厚労相にも説明(2016年10月24日医療維新)

 NPO法人「全世代」は10月24日、医師の地理的遍在の対策として、専門研修を終えた後の一定の時期に、保険医療機関の責任者になる条件として、医師不足地域での勤務を一定期間義務付ける私案を公表した。本私案は10月14日に、塩崎恭久厚労相に説明済み(資料は、同NPO法人のホームページ)。
 医師免許取得時には「一種登録証」を、医師不足地域での勤務後に「二種登録証」をそれぞれ付与する。ただし、保険医登録証を現在保持する医師については、経過措置として「二種登録証」を交付する。
 この私案の実現には、「然るべき法律改正が必要」と思われるものの、(1)医師の地理的偏在が短期間に改善、(2)一部の医師だけに地域医療の負担を負わせる状態が改善――などの効果が期待できるという。
 NPO法人「全世代」は、2015年10月に発足。本私案は、地域医療機能推進機構理事長の尾身茂氏をはじめ、計26人の医療者から成る「医療分科会」で検討を重ねてきた。医師の診療科偏在は、日本専門医機構が議論しているとし、今回の私案は医師の地理的遍在に焦点を絞った内容。なお、尾身氏は厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」の「医師需給分科会」では、診療科偏在についても提言している(『診療科別の「専攻医研修枠」、JCHO尾身氏が提案』を参照)。

 「医師、社会的責務果たすことを期待」

 私案はまず前提条件して、(1)医療は保険料と税金で大部分が賄われている、(2)医学部教育には、国公私立を問わず、多額の税金が投入されている――ことから、「医療は国民共有の財産として運営されていることは明らか」「医師には、公共の福祉、地域のニーズに貢献する社会的責務を果たすことが期待されている」と指摘。
 その上で、基本的な考え方として、「若手医師のみならず、全ての世代の医師が可能な範囲で協力して行くことが求められている」ことを挙げている。

 地域医療構想圏、3つに区分

 私案は、(1)全国レベルの情報を集約、都道府県地域医療構想圏(2次医療圏)レベルでの医師不足地域を確定、(2)その後、どの医療機関に勤務してもらうか、いかなる支援体制を構築するかなど、具体的な取り組みは各医師不足地域が責任を持って行う――という2つのステージでの実施を提案。
 (1)では、地域医療構想圏をA 、B 、C(Cが最も医師不足が深刻)の3種に区分(都道府県は、これらの加え、島しょや過疎地域に限定した特殊地域Sを設ける)。その上で、保険医登録を全国共通に一本化、「一種登録証」は医師免許取得時に全員授与。「二種登録証」は、臨床研修修了後の医師不足地域での勤務実績(文末を参照)によって授与する。
 (2)の通り、医師不足地域内で、どの医療機関に勤務するかは、当該医師個人の考えを十分に尊重し、決定する。マッチング制の導入、複数医療機関のネットワーク化による受け入れなども想定されるが、都道府県地域医療構想圏の地域医療構想調整会議が、都道府県の地域医療協議会と連携して、責任を持って行う。
 「一種登録証」「二種登録証」の効力・定義については、「選択肢A」(一種登録証のままでも、通常の保険診療を継続的に行うことが可)、「選択肢B」(一種登録証のままで保険診療をできる期間を、例えば10年と規定し、更新を必要とする)という2つの選択肢があるとした。

【勤務実績の例】
地域医療構想圏A 新規の保険医登録の実績にならない
地域医療構想圏B 2年の勤務実績により二種登録証を授与
地域医療構想圏C 1年の勤務実績により二種登録証を授与
特殊地域 S 6カ月の勤務実績により二種登録証を授与

このNPO法人全世代なる組織については失礼ながら存じ上げなかったのですが、医療を中心に幅広い世代による議論を通じ、特に若い世代の生活支援を中心とした政策提言を行っていく方針であるようで、代表理事である尾身茂氏も自治医大一期生として離島診療の経験があり、西太平洋地域からポリオを根絶するなど感染症を中心とした公衆衛生学的領域を専門とされています。
実際のところ政府の政策決定にどの程度の影響力があるかと言えば良く言っても全く未知数と言うしかなさそうですが、この保健医療機関の責任者たる要件として僻地勤務実績を求めると言う考え自体は以前から各方面で提唱されていたものであり、今現在社会的権力のある年配の方々がいたずらに若い世代ばかりを人身御供として送り出すことへの一定の抑止力としても期待されるものです。
現実的には今現在施設管理者等の地位にある人間に僻地診療を強いると言うのも無理がありますから、やはり一定年代以下の世代にそれを強いると言うことにはなるのでしょうが、昨年出された日医の「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」においても全く同様の提言が盛り込まれていることは注目に値するところでしょう。

この辺りの話が実現すれば開業医や組織のトップを目指す先生方が先を争って僻地勤務に励むことになるのかどうかですが、現実的には将来の進路選択肢を狭めないためにも現在の専門医研修などと同様、若いうちに一定程度の僻地診療経験を積んで基準をクリアしておくと言うスタイルが主流になりそうにも思います。
ただこの医師偏在問題については冒頭の財務省財政制度等審議会財政制度分科会以外にも厚労省内部でも社会保障審議会医療部会や医療従事者の需給に関する検討会、医師・看護師等の働き方ビジョン検討会など様々な部署が議論をしていて、それぞれが打ち出した方針を今後どのようにすりあわせていくものなのか疑問も残るところですよね。
当然ながら現場医師にとっては何かしら新たな制約が追加されると言う話で反発も予想されるのですが、何が最も強い反発を呼びそうかと言えばいわゆる医師強制配置に関わる部分だろうと考えると、何らかのインセンティブなりによる誘導で医師が自主的に僻地勤務を希望するようなやり方が落としどころになりそうには思います。

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コメント

素朴な疑問でこういうの最後は誰が決定するんでしょうね?

投稿: ぽん太 | 2016年10月31日 (月) 08時52分

提言には「臨床研修修了後の医師不足地域での勤務実績」とありますので、もしこの通り実施するのであれば後期研修終了後もしくは専門医(新専門医制度の方)を取得してからと解釈するのが自然ではないかと思われます。
それはそれで揉めそうですが。
僻地勤務を忌避するデメリットは・・・最終的には診療報酬ですかねえ・・・

投稿: クマ | 2016年10月31日 (月) 09時04分

>保険医療機関の責任者になる条件として、医師不足地域での勤務を一定期間義務付ける

我が国には医師不足でない地域なんかないわけで、なんだ現状と変わらないではないですかw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年10月31日 (月) 09時15分

医師偏在に関する所轄省庁大臣の答弁によれば、徳島県などは医師過剰地域として認定されているものと記憶いたします。

投稿: 管理人nobu | 2016年10月31日 (月) 10時38分

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