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2016年10月24日 (月)

障害学童進学問題、受け入れ体制だけが問題か?

時折定期的に出る類の話なのですが、先日出たこちらの記事が話題になっていました。

たん吸引必要の幼稚園児 一人で行けるよ(2016年10月3日毎日新聞)

 気管を切開し、たんの吸引が必要な横浜市の幼稚園児、前田結大(ゆうだい)くん(5)とその両親が、来春の小学校入学に向け、親の付き添いなしでの普通学級への入学を市に要望している。横浜市は「医療的ケア」が必要となる結大くんが通学を望む普通学級を支援するため、看護師の配置の検討を始めたが、実現には予算面など課題が多い

 結大くんは鼻と口から呼吸ができずに生まれ、声帯まひで気道が狭まる「気道狭さく」と診断された。生後すぐに気管切開し、以後は喉に着けたカニューレと呼ばれる管からたんを吸引する医療的ケアを必要とする。
 現在は、看護師が常駐する川崎市の幼稚園に通園し、母直美さん(43)は付き添わずに園生活を送る。たんの吸引以外に障壁はなく、来春からは自宅近くの小学校に通い、兄昂大(こうだい)さん(10)とミニバスケットボールチームに入ることを楽しみにしているという。
 横浜市は現在、特別支援学校以外に看護師を配置していない。直美さんらが昨年、市に普通学級への付き添いなしの通学の可否を尋ねると、「前例がない」との理由で「親が付き添うか、特別支援学校に入学するか」との選択肢が示された
 付き添いには親の大きな負担が伴ううえ、直美さんは「親が隣にいて、友達と遊ぶことができるだろうか。のびのびと学校生活を送ってほしい」と考える。結大くんと両親らは6月、市教育委員会に要望書を提出した。学校生活に必要な医療的ケアを含む配慮を保障し、親の付き添いなしでの普通学級への入学を実現できるよう求めた。
 障害者差別解消法が施行されたこともあり、市教委は看護師配置の検討を始めた。ただ、市の担当者は「学校数も多く、予算措置は慎重にならざるを得ない。市内の全校に看護師を配置することは不可能に近く、どの程度の症状にケアが必要か、線引きも必要」と話す。【宇多川はるか】

■配置費用ネック

 文部科学省によると、新生児医療の発達を背景に、たん吸引や、管で栄養を送る経管栄養などが必要となる「医療的ケア児」は増える傾向にある。公立特別支援学校では2006年度の5901人から15年度は8143人に増えた。また公立小中学校は15年度、839人が通学する一方、ケアに携わる看護師の配置は350人にとどまっており、東京都でも6人に過ぎない。
 大阪府は、小中学校に看護師を配置する市町村に経費の一部を補助する事業を06年度に始め、15年度には108人の看護師が配置された。また、研修を受けた教員にたん吸引などの医療的ケアを認める国の制度を活用する大阪市は15年度、96人の教員を認定した。
 こうした取り組みの需要はあるとみられ、文科省は今年度、公立特別支援学校に限っていた看護師の配置補助事業の対象に公立小中学校を加え、7億円を計上した。ただ、「国の補助を受けてもかなりの費用がかかる。一度制度を作ると、補助がなくなってもやめられない」(横浜市)と慎重な声もある。
 東京都足立区で医療的ケア児の通園施設を運営する「全国医療的ケア児者支援協議会」役員の矢部弘司さんは、看護師がいないために地元の小中学校への入学をあきらめ、特別支援学校を選んだ児童も見てきた。「立って歩ける医療的ケア児は、濃密な支援が必要だが、体制が整っていない。新生児医療の発達で、日本は赤ちゃんが死なない国になったが、地域で暮らすのは難しい。就学は本人の気持ちが尊重されるべきだ」と話す。

周産期医療の発達でかつてであれば助けられなかった子供が助かるようになったと言い、その結果生まれつきの障害児も増えているのかとも思うかも知れませんが、内閣府の調査によれば障害者総数は年々増えているものの乳幼児世代の障害者の数は横ばいであり、3歳以下の乳幼児期から障害を持っている人の比率も全体の10%ほどに過ぎないのだそうです。
とは言え記事を見る限りでも障害児ケアの需要と供給のバランスが明らかに破綻している一方で、医療現場においても常に不足している看護師を一人二人の学童のためにいわば専属で貼り付けることも難しいでしょうから、大阪市のような有資格者を増やす取り組み方がもっとも現実的だと言えるのかも知れませんね。
医療介護の世界でもこの吸痰問題は昔からあって、特に介護施設入所者に対して看護師のいない夜間の吸痰をどうするかは長年の課題でしたが、近年では制度が改められ一定の研修を受けた介護スタッフが吸痰を行えるようになったのは、現場の深刻なマンパワー不足に国もようやく現実を受け入れたと言う形でしょうか。
ただこうした話が出るたびに様々な意見も当然ながらあって、コストやマンパワーを考えれば現実離れしている、親の見栄に過ぎないのではないか、親が付き添えば済む話だ、そもそも無理に普通学級に進ませたがる必要があるのかと言った意見もあるわけですが、やはり誰しも気になるのは万一のことがあった時にどうするのかと言う問題です。

給食喉につまらせ死亡=特別支援学校の女子生徒―大分(2016年10月12日時事通信)

 大分県教育委員会は12日、同県別府市の県立南石垣支援学校で、高等部生活教養科3年の林郁香さん(17)が給食を喉に詰まらせ、2日に搬送先の病院で死亡したと発表した。

 県教委によると、林さんは9月15日、食堂で担任教諭に見守られながら昼食を取っていたが、担任が食事を終えた別の生徒を教室に連れて行くため食堂を離れた数分後、床にうつぶせに倒れた
 別の教諭が気付いて応急処置したが、林さんは呼び掛けに反応しなかった。病院で、気管支から給食のメニューにあった卵焼きらしき物が取り出されたという。

 林さんはてんかんと重度の知的障害を持ち、林さんを含む同じクラスの生徒4人の食事には、養護教諭ら4人が付き添うことになっていたが、この日は1人が出張で不在だった。
 中園大統校長の話 おわびしてもしきれない。今後は教員の連携を含めた安全体制の強化に努め、事故の未然防止を図る。 

大変に悲劇的な事故であることが間違いないのですが、注目していただきたいのはこの事故が必ずしも障害者であるから起きたと言うわけではないと言うことで、先日も紹介しましたように全国の学校現場で白玉団子を喉に詰めて窒息する事故が頻発し社会問題化していると言った話もあるわけです。
ただそれでも健常児が団子を喉に詰めて亡くなった際に団子を給食で出すことの是非は問われても、現場にいた教師個人のケアが不十分だったと責められることはまずないだろうと思うのですが、障害者児童が同様の事故を起こした場合周囲の教員や介護スタッフの責任が問われないかと言えば微妙なところでしょう。
この辺りは近年たびたび重大事故が発生していることで問題になっている組体操の問題とも通じるところがあって、一定のリスクを許容出来ないのであればそもそもやらないと言う選択肢がある一方で、リスクを許容出来る人間だけでやると言う選択肢もまたあるわけで、学校側に万全の体制整備を求めるばかりではいたずらにハードルを高くするばかりと言うことになるのかも知れませんね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

これ自分で吸痰させたらいいんじゃ?

投稿: | 2016年10月24日 (月) 08時05分

人並みに勉強するのも友達を作るのも特別支援学校で可能だと思うのですけれどもね。
個人的には、特別支援学校という形で分離するのではなく、一般の学校に「視覚障害支援科」「聴覚障害支援科」などを併設したほうがいいんじゃないかとは思いますが。

投稿: クマ | 2016年10月24日 (月) 08時45分

子供では責任が取れないからってことなのかな?>吸引
でも1型糖尿の子なんてどうやってんだろと新たな疑問が。

投稿: ぽん太 | 2016年10月24日 (月) 08時51分

平時なら自分で吸引することは可能でしょうけれど、万一のことを考えるのでしょうね。
学校管理者としては。
緊急時に教師がエピペン使うのにこれといった資格を要しないなら、緊急時に吸引するのも可能だと思うのですが。

投稿: JSJ | 2016年10月24日 (月) 09時12分

気管カニューレからの痰吸引はチョー簡単、というのが前提の話ね。
知らない人のため、為レ念。

投稿: JSJ | 2016年10月24日 (月) 09時19分

この場合技術的な改善によって、自動ないし誰でも安全確実に吸引できる状態を用意できれば皆が幸せになりそうな気がしますが、責任の所在の曖昧化でもありますね。

投稿: 管理人nobu | 2016年10月24日 (月) 13時11分

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