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2016年10月12日 (水)

医療費削減の方法論としてかかりつけ医権限強化が議論される

先日も皮膚癌に対して新規の抗癌剤が承認されたと報じられており、非常に高額な治療薬が続々と登場することで医療費高騰が懸念されていますが、こうした抗癌剤が予想よりも多く使用されていることに対して財務省が財政を圧迫するとして、通常の薬価改定サイクルを待たずに値下げを断行するよう求めていると報じられています。
薬剤コストの高騰はこのところ医療費増大の主要要因の一つとも目されるようになってきただけあって、今後も継続的に何らかの対策が講じられることは確実でしょうが、先日も紹介しましたように医療費高騰が続く背景には薬価の高騰だけではなく、高齢化の進展など医療の本体部分も大きな影響を与えていると言うことで、薬価と同時進行でこちらの対策も進められています。

財政審、薬価の期中改定や高齢者の負担増を求める「スモールリスクは自助努力の余地を拡大」(2016年10月5日医療維新)

 財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は10月4日、2017年度予算編成への建議に盛り込む社会保障分野の「改革の方向性」を大筋で合意した。医療分野では高額薬剤の速やかな薬価改定やかかりつけ医以外を受診した場合の定額負担、「高額療養費制度」の高齢者優遇措置の見直しなどを求めた(資料は、財務省のホームページ)。改革項目の多くは、中央社会保険医療協議会や社会保障審議会で既に議論が始まっている内容だ。
 政府は社会保障費の自然増分を2016年度からの3年間で1兆5000億円(年5000億円)程度に抑える方針で、2017年度予算でも、厚生労働省の概算要求での6400億円から1400億円の削減を目指している。分科会後に会見した審議会長の吉川洋氏(立正大学経済学部教授)は「ビッグリスクは共助で支える、スモールリスクはある程度以上の経済力を持つ人の自助努力の余地を広げるべきというのが財政審の基本的な考え方」と説明。スモールリスクの例示として風邪や軽度者向けの介護サービスを挙げた。
(略)
 かかりつけ医の普及については、「かかりつけ医の普及や外来の機能分化は十分に進展していない。諸外国と比較して、我が国の外来受診頻度は高く、多くは少額受診。限られた医療資源の中で医療保険制度を維持していく観点からも、比較的軽微な受診について一定の追加負担は必要なのではないか」と提案した。

「かかりつけ医の」イメージ
◆他の医療機関を含めた受診状況等の把握、必要に応じた専門医療機関の紹介・連携、継続的かつ全人的な医療の提供(1)など、一定の要件を満たす診療所等(2)について、患者が「かかりつけ医」として指定(保険者に登録)。

 (1)については、総合診療医の養成・定着が進むまでの経過措置として、耳鼻科や眼科など特定の診療科については、あらかじめ「かかりつけ医」と相談の上、指定する他の医療機関での診療を可能とする(定額負担も免除)。 (2)では、特定疾病の有無・年齢要件は問わず、24時間対応等も求めないなど、診療報酬で評価される地域包括診療料等とは異なり、「かかりつけ医の要件は緩やかに設定」と提案している。
 かかりつけ以外を受診した場合の定額負担の金額についても、他の診療所を受診した場合は低額、病院はより高額で、規模に応じて金額を増やすことを求めている。
(略)
 吉川氏は委員からの意見として「かかりつけ医制度の定着には質の向上が望まれ、そのためには健全な競争が必要。自由に選択する権利を担保する必要がある」「かかりつけ医を持たない場合はフランスのように自己負担割合を3割から4割に増やすなどの方法も考えられる」「国民全体で健康を保つためには、スポーツ医学も有効である。オリンピック選手はドーピングの関係もあり、薬を使わず健康を維持している。スポーツ医学の医師は3万人ぐらいいるので、こうした方にも地域医療に貢献していただくのがいいのでは」などと紹介した。
(略)

注目頂きたいのは「スモールリスクは」云々の部分かなと感じるのですが、こうした考え方が基本として据えられているとなると今までの日医等が主張してきた日本の医療のあるべき姿とはかなり異なったもの言うしかなく、さて厚労省などはどのように考えているのかも気になりますよね。
このかかりつけ医制度なるものの代表的なものとして同じ国民皆保険制度を採用するイギリスのNHSがありますが、この制度においては病院など専門医療機関を受診するためにはかかりつけ医を受診しなければならないと言う、かなり強いアクセス面での縛りがあり、日医などが断固としてフリーアクセス堅持を主張する日本とはかなり異なった趣がありますよね。
ただ興味深いのは専門医に紹介されても実際に手術を受けられるのは何週間、下手すれば何ヶ月も待たされるだとか、それが嫌なら公費負担外の私立医療機関をお金を払って受診しなければならないと言った面があるにも関わらず、このNHSへの国民満足度は極めて高いことが知られており、各種調査によればおよろ9割の国民が制度に満足していると答えていると言います。
こうしたかかりつけ医の機能強化と言うことに関しては様々な意見もあって、特にフリーアクセスと言う現行の大原則との絡みから今のところ受診規制としての役割導入には否定的な意見も多いようですが、大病院の外来を指して3時間待ちの3分診療などと揶揄するならアクセス制限は避けられないのは当然であり、そのゲートキーパーとして何かしら医療専門家による選別が必要と言う考え自体は妥当なものだと思います。

一方で当然ながらかかりつけ医以外を勝手に受診すれば自己負担が発生するとなれば、特に眼科や耳鼻科などマイナー診療科の開業医の方々にとっては死活問題にもなりかねないと言う話なんですが、しかし一般的な大方針としては今後は総合診療など様々な名目で全人的な医療を推進する過程で、軽微なマイナー科領域の疾患はかかりつけ医なら誰でも診られるようになっていくはずですよね。
逆に今までは言ってみれば専門○○だったマイナー科の先生であっても、今後はローテート研修で風邪など一般的な疾患については一通り診られると言う建前になっているわけですから、要するに大きな問題となるのはこうした今風の研修を受けていない世代の先生方の既得権益をどうするのかと言うことであり、そうであるからこその緩和措置が議論されているということなのでしょう。
将来的には自由開業制や標榜診療科など今とは制度的にもかなり異なった医療となっていく可能性も否定出来ず、かかりつけ医と言うものの捉え方も今とは違ったものになっていく可能性もありますが、専門医資格の更新厳格化などを考えてみても、今後は特にマイナー診療科では単科での開業と言うやり方は次第に難しいものになっていくのかも知れませんね。

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コメント

かかりつけ医相手の医療訴訟が頻発したりして

投稿: | 2016年10月12日 (水) 07時39分

フリーアクセスってもう限界に来てるんですかねえ?
飛び込みじゃなくて自分で予約とって来てくれればいいんですけど。

投稿: ぽん太 | 2016年10月12日 (水) 08時46分

 経営上薬価差益に縛られなくなっても、皆保険による青天井で薬の使い過ぎ???に歯止めかかからない、薬剤師によるチェック(大笑い)も機能などしない。
 医者は昔から国の金のことなど頓着していない。我慢しなきゃいけないのは、結局、患者なのだが、その引導を渡す汚れ役に誰もなりたくないわけだ。

>総合診療など様々な名目で全人的な医療を推進する過程で、軽微なマイナー科領域の疾患はかかりつけ医なら誰でも診られるようになっていくはずですよね。 
 軽微でない専門性の高い部分は、歯科のように、保険で給付される水準を下げたうえで 混合診療にするか。
 

投稿: | 2016年10月12日 (水) 10時17分

かかりつけ医にゲートキーパーを期待するのであれば、正しい手順でこれを通過した専門的疾患の患者には自己負担を軽減する方向で考えた方が道筋が判りやすいかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年10月12日 (水) 11時34分

>およそ9割の国民が制度に満足していると答えていると言います。

このあたりの感覚が、一番、現代日本とズレています。
「国民性の違い」といったらそれまでですので、この辺の分析を専門家にはきちんとやってもらいたいです。

投稿: ふぉれすと | 2016年10月13日 (木) 09時33分

単にこれまでフリーアクセスだったことがないとか?

投稿: | 2016年10月13日 (木) 11時03分

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