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2016年10月17日 (月)

海外での移植患者、大学病院での診療を拒否される

そういうこともあるだろうとは思うのですが、なかなか興味深い事例だなと感じさせられたのが先日報じられたこちらのニュースです。

「診療拒否は違法」と提訴 中国で腎移植の男性(2016年10月14日共同通信)

 「海外で臓器移植した患者は受け入れない」との内規に基づき浜松医大病院(浜松市)が診療を拒んだのは、正当な理由がない限り診療を拒んではならないと定めた医師法に違反するとして、中国で腎移植を受けた静岡県掛川市の男性(66)が、大学に慰謝料など約190万円を求める訴えを静岡地裁に起こしていたことが13日、分かった。

 医療関係者によると、海外で移植を受ける患者は年間数十人に上り同様の診療拒否も相次ぐが、訴訟に至ったのは初とみられる。各地での拒否の背景には「こうした患者を診療すると罰せられる」との誤解が一部にあると指摘する専門家もいる。

浜松医大と言えば腎臓移植も手がけているようで、移植患者の術後管理が出来ないと言うわけでもなかっただろうと思いますが、興味深いのは診療拒否をしたと言う背景として医師と患者の個人的な関係などに湯賄するものではなく、病院の内規に基づいて決めたと言う点です。
今回の件に関してちょいと検索をかけておりましたら今から30年近くも前のバブルの時代、浜松医大の医師が株取引絡みで資金をだまし取ろうと知人から腎移植を餌に金を出させた挙げ句殺害したと言う事件のニュースが出ていて、まさかこんな大昔の事件が原因で内規が出来たと言うわけでもないのでしょうが、記事を見ると同様の診療拒否は決して珍しい話ではないと言うことですね。
2007年4月頃から全国各地でフィリピンなどで臓器移植を受けた患者の診療拒否が報じられていて、その理由として当時話題になった臓器売買に絡んで臓器売買をした患者を保険診療すると診療報酬返還を求められる、警察に通報する義務があると言った噂が出回ったことも一因だと言います。
何故2007年4月からなのかと言うはっきりした理由も、診療報酬返還云々も全く根拠はないらしいのですが、中には同年3月以前で移植を受けた患者には保険診療をしても4月以降の移植患者は自費診療と言うケースもあるようで、まあちょっと常識的に考えてもどうなのかですよね。

これまた興味深いと思ったのはこうした経緯の中で、当然ながら応召義務違反ではないかと言う批判の声があったわけですが、当時の移植学会は「学会や医者では、この問題に判断を下せない」と言い、厚労省でさえ「個別事例をみないと判断できない」と言うなど、妙に歯切れが悪かったことです。
事実関係として日本の臓器移植法では国内外を問わず臓器提供の対価をドナーに支払うことは売買であるとして禁止している一方で、海外でこれだけ臓器売買が行われていると言われる中でも実際に患者が逮捕されたと言うケースはないのだそうで、実際上は黙認と言うことになるのでしょうか。
他方で臓器移植法で犯罪行為だとされているのは臓器売買そのものやその斡旋行為であって、移植が終わった時点で犯罪としては終了しているのですから、その後の診療に関与してもいわば逃亡中の犯罪者の怪我を治療しても逮捕されないのと同じようなことだと言えそうですね。
もちろん法的な背景事情がそうしたものであるとすれば組織として診療拒否はさすがにどうなのかですが、違法な臓器売買ともなればきちんとした手術を受けたのかどうかも判らず、まともな診療情報もないだろうとすればハイリスクな患者だとは言え、個人の感情としては面倒には関わり合いたくないと言う気持ちになることは仕方が無いことかなとも思います。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

その内規とやらをみてみたい

投稿: | 2016年10月17日 (月) 08時11分

>診療報酬返還云々も全く根拠はないらしい
根拠は厚生省&厚生労働省がうン十年間培ってきた信頼性でしょう。
浜松医大としては、むしろ司法判断が示されることになってホッとしているのではないでしょうか。
診療報酬返還に較べれば190万なんて安いもので、争わないんじゃないかな。

投稿: JSJ | 2016年10月17日 (月) 09時01分

JSJさまへ

>診療報酬返還に較べれば190万なんて安いもので
全く同感です。
ただ、争わないと和解勧告がでて終わりになりそうなので、徹底的に争う必要があると思われます。

投稿: クマ | 2016年10月17日 (月) 09時10分

クマさん
ご指摘ありがとうございます。
>ただ、争わないと和解勧告がでて終わりになりそうなので、徹底的に争う必要があると思われます。

投稿: JSJ | 2016年10月17日 (月) 11時23分

その辺りの行動のあり方で組織としての考え方がうかがわれることになるのだろうと思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年10月17日 (月) 13時09分

>拒否の背景には「こうした患者を診療すると罰せられる」との誤解が一部にあると指摘する専門家
 医者がそんな低レベルの誤解をしているとは、正直思いたくないが。

投稿: | 2016年10月17日 (月) 14時27分

無保険治療の後始末を保険ですることについては問題ない? 保険で受診できないことについては争わないのだろうか。 

投稿: | 2016年10月17日 (月) 14時31分

海外で移植を受けた人は、ちょっと怪しい職業の人が多いような印象です(あくまで個人的に関わった人)。患者本人は移植後も免疫抑制剤を服用し続け、医師の指示もきちんと守る、よい患者、ですが、周囲の人がちょっと、という意味で。
こういう人が変な感染症になってしまうと、いろいろな疾患が鑑別にあがって、苦労します。

投稿: oldDr | 2016年10月18日 (火) 00時22分

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