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2016年10月 7日 (金)

今どきの若い者だから起こる現象ではなかったかも知れない変化

大学医局の支配から離れ研修医の権利を重視する新臨床研修制度導入からなのか、それともいわゆるゆとり世代の進出の影響なのかは諸説あるところだと思いますが、このところ若手医師の気質の変化を指摘する先輩医師の声がすっかり定着した感があります。
はるか昔から繰り返されてきた「俺達の若い頃は」式の年長者の繰り言が今の時代の医療業界にも厳然として存在しているだけだと言う可能性ももちろんあるのですが、先日は医学部学生の意識変化に関するこんな興味深い記事が出ていたことを紹介してみましょう。

滅私奉公なんてクールじゃない 効率最優先のイマドキ医学生(2016年9月29日AERA)

(略)
 では、医学生が勉強一辺倒かというと違うようだ。部活やサークルの所属者が9割近く、アルバイトをする学生も5割超いる。医学部に入る勉強を始めたのは、8割超が高校生以降だ。前出のAさんも、高校時代は野球部の部活や文化祭を思う存分楽しんだ。大学でも野球部に入り、現在は研究室での活動に熱中している。
 そうした背景からか、将来は仕事と私生活のバランスを重視する層も多い。今回の調査でも私生活重視型がやや勝り、希望する診療科を聞くと、人気、不人気にくっきり表れた
 1番人気は小児科。現役医師アンケートで将来性が低いとされた科だけに意外だが、「子どもを助けたい」といった、熱い思いが目立った。人を包括的に診るとして、国が進める総合診療医の人気も高かった
 最も敬遠されたのは外科。「体力的にハード」(宮崎大6年)、「腰痛持ちには立ちっぱなしはつらい」(埼玉医科大6年)などの声があがった。

 そんな彼らは、人生設計でも現実的だ。ある都内私大に通う5年生の女性Bさん(23)は、周囲の医学生カップルが別れのラッシュを迎えている。
「付き合っていれば結婚が視野に入るし、先がないなら別れる。卒業や初期研修を待たず、5、6年生で結婚して、出産する人もいます」
 別れるのも、早々に結婚や出産を選ぶのも、これからのキャリアを見据えるがゆえだ。
 地方私大の5年生女性Cさん(23)は、温かい家庭を築きたいから、安定した職業として医師を選択した。卒業後はまず結婚し、子育てをしてから、3、4年後に初期研修をと考えている。
バリバリ働きたい人は、私のまわりではまれ。結婚して子どもがほしいという人が多い」
 医学生の多くは目標に対し、合理的に考える傾向があるようだ。
(略)
 医学生の将来を大きく左右するのが、卒業後の研修をどこで受けるか。その選び方にも、今どきの医学生像が透けて見える。
 神戸大学医学部6年生の永江真也さん(23)はこの夏、研修先に仙台厚生病院を選んだ。地方の拠点病院とはいえ、地元でもない東北をなぜ選んだのか。
 永江さんは実は当初、東京での研修を考えていた。診療科がそろう都内の総合病院を2、3カ所ピックアップしていたという。患者も多く、バランスよく研修を受けられると思っていたからだ。
 しかし、先輩医師に相談すると、「有名病院だから、経験を積めるとは限らないよ」。

 そこで、日本内科学会の「教育病院・大学病院年報」を使い、内科医1人当たりの年間受け持ち患者数と、年間救急入院患者受け入れ数を自分で計算してみた。
「驚きました。研修先として人気の有名病院が、必ずしも受け持ち患者数や救急患者数が多いわけではなかったからです」
 例えば、東京の国立国際医療研究センター病院は受け持ち患者数は150人足らず、救急患者数が二十数人。一方、仙台厚生病院や千葉県の民間総合病院などは受け持ち患者数がともに300人以上、救急患者も数倍、受け入れていた。
 できるだけ経験を積みたいと考えていた永江さんは結局、仙台の地を選んだ。「将来は消化器内科に進み、胃カメラの技術を身につけたい」と話す。

 以前は、学んだ大学の病院や系列病院での研修が一般的だったが、2004年に制度が変わり、医学生は希望する研修先を病院側とマッチングして選べるようになっている。
 アンケート結果では、研修先の病院を選ぶ基準は、「研修に力を入れている」が39%を占め、「忙しく、経験を積める」(20%)、「忙しくなく、ゆとりがある」(15%)と続いた。
 病院により専門分野や得意分野は異なる。学生間での研修先の人気は、研修医らの口コミによるところも大きかったが、「積める経験」の根拠を精査して進路を決める医学生が増えそうだ。

しかし永江さんなどのケースもそうですが、今どきの学生や若手の先生は自分の将来に関して実に真剣に情報を集め検討していると感心するばかりで、とりあえず先輩後輩の伝手を頼りに適当な医局に所属し、「先生来月から○○病院行って」式の研修生活と言うのは完全に過去の遺物になったと言うことでしょうかね。
希望する進路として総合診療科が2位と言うのが何とも時代を反映している一方で、やはり外科系が忌避されていると言う現実も見えてくると言うのが面白いと思うのですが、記事を読んでいて非常に興味深く思ったのが末尾にあるように多忙であるからこそ選択すると言う声もあれば、多忙でアルカラこそ忌避すると言う声も決して少なくないと言う、言わば両極端の意見が混在している点です。
この辺りは一昔前までであれば医局に所属し同学年横並びで研修を受け、順次経験を積んで専門医等の資格を取得していく中では、やはりどうしても同期や先輩後輩と我が身を比べての競争意識が自然発生しやすかったのだと思いますが、今は臨床研修のスタイルも変わって卒後何年ならこれくらいと言うことがなかなか単純に言い切れなくなっているように思いますね。
もちろん末は大学教授を目指すと言った明確な目標があれば別でしょうが、総合診療科がこれだけ支持される状況を見ても幅広く様々な経験を積んでいきたいと言う需要が相当あるのだろうと思われ、以前のように卒後何年目ならこの辺りの仕事をと言う単純な一次元的話ではなくなってきているのかも知れません。

ただこうした学生や若手の意識変化が彼らの世代だけの特性なのかと言えば実のところ必ずしもそうではないだろうとも思うのですが、より年長の世代であっても急性期の病院を転々とし専門的技能や資格を取得していくと言った「ごく普通」のコースを辿らず、全く別の道に転じていく人と言うのは以前から少なからずいたわけです。
ただ昔は急性期を辞めて慢性期に転じたとなればドロップアウトなどと言われ、医師としてのキャリアを捨てて楽をする道に走ったように言われていたものですが、激務の急性期で勤務していてもしんどい、もう辞めたいとこぼしていたり、場合によっては過労死や体調を崩すと言った先生方も決して珍しくはなかったのですから、潜在的な需要としては決して少数派に留まるものではなかったんだろうと思いますね。
勤務医は忙しいから開業しましたと言えば何か情けないことをしたようにも聞こえますが、市中のかかりつけ医として活躍するとか総合診療医として全人的医療を行うと言えば需要もあれば時代の流れにも乗っていると言うもので、人それぞれの希望や適正に応じた医療人としての生き方がより自由に選べるようになったと考えると悪くない時代だと言えるのではないでしょうかね。

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コメント

>勤務医は忙しいから開業しましたと言えば何か情けないことをしたようにも聞こえますが、

そういう感性自体が既にオールドタイプかとw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年10月 7日 (金) 09時20分

>勤務医は忙しいから開業しましたと言えば何か情けないことをしたようにも聞こえますが、

「すでに落下傘式では開業してもやってけない時代」であると考えれば
それを解っていないのは情弱ってことになりますな。
そうすると1周まわって 正しいのかも

投稿: | 2016年10月 7日 (金) 11時31分

昔ならドロップアウトと言われたような行為も、今では必ずしもネガティブには語られなくなった空気は感じますね。

投稿: 管理人nobu | 2016年10月 7日 (金) 13時16分

「フリー」になるって、ほとんどの業界ではポジティブネタとして語られますよ。
ネガティブでなくなったって、何周遅れているのでしょうか?

投稿: 麻酔フリーター | 2016年10月 7日 (金) 16時52分

つかマイナーは常勤いらん

投稿: | 2016年10月 7日 (金) 19時06分

フリーターが前向きだった時代もあったね

投稿: | 2016年10月 9日 (日) 12時36分

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