« 今日のぐり:「瑞穂」 | トップページ | 日本の医療費支出が本当に世界最高水準であるとしたら »

2016年10月 3日 (月)

医療費40兆円突破の責任の所在

2015年の医療費が史上初めて40兆円を突破し記録を更新したと報じられていましたが、その医療費増大の原因についてこんな記事がd亭真下。

ソバルディとハーボニー、2015年度の医療費増の主要因(2016年9月28日医療維新)

 厚生労働省は9月28日の中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)に、2015年度の「医療費の動向」を公表、同年の医療費は41.5兆円で初めて40兆円を突破、2014年度と比べ、3.8%増となったと説明した(資料は、厚労省のホームページ)。
 過去数年に比べて高い医療費の伸びになったのは、調剤医療費の増加が要因だ。中でもC型肝炎治療薬である、ソバルディ(一般名ソホスブビル)とハーボニー配合錠(レジパスビル/ソホスブビルの配合錠)の薬剤料の伸びの影響が大きい。
 同省によると「約40兆円の概算医療費に対して、おおむね0.7~0.8%が、昨年秋以降に使用が増えた、C型肝炎治療薬を含む抗ウイルス薬の薬剤料の増加が要因」(保険局調査課長の山内孝一郎氏)。ただし、「0.7~0.8%」は院外処方分であり、「院内処方される場合も含めると、もう少し大きいのではないか」と山内課長は説明した。2016年度薬価改定で、両剤とも「特例拡大再算定」の対象になり、31.7%の大幅な薬価引き下げとなったため、「2016年度以降、どのように推移していくかを見て行くことが必要」(山内課長)。

 これらの医療費の分析に対し、さまざまな視点から問題提起したのが、日本医師会副会長の中川俊男氏。まず3.8%の医療費増について、診療報酬改定がなかった2011年度(対前年度比3.1%増)や2013年度(同2.2%増)と比較しても高いと指摘。その上で、山内課長が言及したように、薬剤料の分析は院外処方に限った場合であり、日医が分析中のデータでは、院内処方を含めると、抗ウイルス薬の増加は1%程度になると述べ、薬剤料の伸びを問題視した。
 その上で中川氏は、ソバルディとハーボニー配合錠の売上を質問。厚労省は、IMSのデータを説明。薬価ベースで四半期ごとに、ソバルディ(2015年5月薬価収載)は、433億円(2015年7-9月)、643億円(同10-12月)、391億円(2016年1-3月)、246億円(同4-6月)、ハーボニー配合錠(2015年9月薬価収載)は、1101億円(2015年10-12月)、1517億円(2016年1-3月)、698億円(同4-6月)とそれぞれ推移している。
 「(売上の)ピークは過ぎたと考えていいのか」との中川氏の質問に対し、厚労省保険局医療課薬剤管理官の中山 智紀氏は、ソバルディとハーボニー配合錠の薬剤料は、2016年度薬価改定の31.7%の引き下げを上回るペースで減少、つまり薬価だけでなく数量も減少しているとし、引き続き2016年7月以降のデータを見て行くとした。

 中川氏は、「高額薬剤が、公的医療保険制度を翻弄していると以前言っていたが、こうしたデータをリアルタイムに把握、公表して、拙速な議論に走らないようにやっていくことが必要ではないか」と厚労省に求めた。さらに現在、中医協で議論が進む抗PD-1抗体製剤のオプジーボ(一般名ニボルブマブ)についても、年間医療費が「1兆7500億円」に達するとの推計もある中、「この金額がいまだに独り歩きをしている。この数字は過大であるという明確なメッセージを発するべきではないか。これにより議論がおかしな方向に行っている」と中川氏はコメントした(『オプジーボ、「緊急的な対応」で薬価引き下げか』を参照)。
 中山薬剤管理官は、「重大な問題だと思っている」とし、オプジーボの販売元である小野薬品工業の公表データなども踏まえ、分析していくと答えた。
 さらに中川氏は、「医療費の伸びの大半は、薬剤費であることが明らかになったのではないか。今の中医協の最大の懸案は、薬価の在り方であり、原価計算方式と類似薬効比較方式などの見直しを早急にやる根拠が明らかになった」とも指摘し、政府の方針として社会保障費の自然増が年5000億円に抑制される中、薬剤料の問題が中医協の重点課題であると提起した。
(略)
 厚労省が9月15日の経済財政諮問会議の経済・財政一体改革推進委員会 「社会保障ワーキング・グループ」に提出した資料「医療費の伸びの要因分析」では、2015年度の医療費の伸び3.8%について、「人口増の影響」がマイナス0.1%、「高齢化の影響」が1.2%増、「その他」が2.7%と説明。2.7%のうち、薬剤料が1.4%、「抗ウイルス薬を含む化学療法剤」が0.77%となっている。

抗ウイルス薬に関してはすでにピークを過ぎた印象もあり、もともと一生に一回使用するだけのものですから今後はむしろ肝硬変や肝癌患者の減少で医療費削減への好影響も期待出来るかも知れませんが、短期的にとは言え特定薬剤がこれだけ大きな影響を与えると言うことは非常に大きな教訓であり、今後の新薬承認の過程に何らかの影響を与えそうな気もします。
しかし記事の最後に付け足しのように書かれている通り、高額な新薬に負けず劣らず高齢化の影響が医療費増への影響は大きいだろうと言う推計が出ているのですが、日医としてはまさか高齢者医療費削減を云々するわけにもいかないと言うことなのでしょう、せっかく医薬分業を薬科が推進してくれている以上は安心して薬価絡みの報酬に切り込めると言う心境なのでしょうかね。
そうしたしがらみのない世間の方では当然ながら、史上空前の医療費高騰の原因は高齢者医療費の増大であると報じられているわけですが、医療費もさることながらかねて高齢者の特権として認められている諸制度についてもようやく是正が実現しそうだと言う、こんなニュースも出ていました。

75歳以上、保険料上げ検討 後期高齢者医療の特例廃止(2016年9月28日共同通信)

 厚生労働省は27日、75歳以上の後期高齢者医療制度で、低所得者ら916万人の保険料を最大9割軽減している特例を廃止し、2017年度から段階的に保険料を引き上げる方向で検討に入った。法令で定める軽減幅は最大7割で、現在は税金を使ってさらに安くしているが、本来の規定通りにする。増え続ける医療費を賄うため高齢者にも負担を求め、世代間での公平性を高めるのが狙い。
 政府は17年度から特例軽減を原則的に廃止すると15年にいったん決定していたが、消費税増税の再延期のあおりで扱いが宙に浮いていた。厚労省は年末の予算編成に向け、詰めの議論に入りたい考えだ。ただ保険料負担が約5倍に増える人もいることから、高齢者の反発を懸念する与党から異論が出る可能性もあり、調整は難航しそうだ。

 厚労省は29日に開く審議会で「激変緩和措置を設けつつ、原則的に(法令上の)本則に戻していくべきではないか」と提案し、議論を求める。
 特例軽減の対象は75歳以上の約1600万人のうち所得が低い747万人と、74歳まで会社員らに扶養されていた169万人。国費945億円と地方負担159億円を投じ負担を軽くしている。
 扶養家族だった人の場合、現在月380円の保険料が特例廃止により最大で1890円と5倍増となる。ただ、所得に関係なく特例が適用される上、1人暮らしを続けてきた人らは対象外で不公平との指摘もある。
 特例廃止は、消費税増税に伴い実施予定だった介護保険料の軽減拡充や年金生活者支援給付金とセットで実現することになっていた。しかし、これらの低所得者対策は実施の見通しが立っておらず、負担を和らげる代替策も検討する。
 厚労省はこのほか、毎月の患者負担に上限を設ける「高額療養費制度」についても、高齢者の優遇措置を見直したい考えだ。70歳以上の大半が現役世代より負担が軽く、高所得者を中心に負担上限引き上げを議論する。

 ※後期高齢者医療の特例軽減

 75歳以上の医療保険料は現在、全国平均で月5659円(見込み)。低所得者については保険料の定額部分を2~7割軽減すると法令で規定されているが、予算措置で最大9割引きにする特例がある。また、74歳まで会社員や公務員の扶養家族だった人は75歳から2年間だけ5割軽減のはずが、特例により無期限で9割軽減されている。2008年度に後期高齢者医療制度がスタートした際、高齢者の反発をかわそうと自公政権が特例軽減を導入した。特例に充てた国費は16年度までの累計で7243億円

この高齢者特権の是正ははるか以前から言われながら一向に進む気配もなく放置されてきた問題でもあり、今回も近く総選挙もありそうだと言う話もありますからまたぞろ先送りにされる気配も濃厚なのですが、一方では低所得者に対する年金保険料強制徴収をさらに拡大すると言った話も出ているわけですから、バランス良く国民に負担を求めると言う意味もあるのでしょう。
基本的には本来あるべきところに戻すと言うだけで特別の話でもないのですが、保険料負担引き上げもさることながら高額療養費の優遇是正の方が現場への影響も大きいのかも知れずで、場合によっては長期入院高齢者の行動に影響を与える可能性もありそうですね。
日本の医療介護制度の問題点として高齢者は病院に入れておくことが一番安上がりで手厚く面倒を見てもらえることから、ともなく何かあれば入院したがる、させたがると言う傾向があることは否定出来ませんが、将来的にはこと慢性期に関しては受けられるサービスの程度によって料金に妥当な格差を設け、患者や家族が自ら選択すると言うことになっていくのかも知れません。

|

« 今日のぐり:「瑞穂」 | トップページ | 日本の医療費支出が本当に世界最高水準であるとしたら »

心と体」カテゴリの記事

コメント

国が薬価を決めてるんだからそこは責任も取ってくれないと。
効く薬が出てるのに使わないってわけにはいかないですから。

投稿: ぽん太 | 2016年10月 3日 (月) 08時24分

薬価を引き下げて製薬会社の開発意欲等にどれくらいの影響が出るものなのかですが、今後はTPPとの絡みで薬価の決め方も面倒になるのでしょうかね。

投稿: 管理人nobu | 2016年10月 3日 (月) 14時52分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/64288847

この記事へのトラックバック一覧です: 医療費40兆円突破の責任の所在:

« 今日のぐり:「瑞穂」 | トップページ | 日本の医療費支出が本当に世界最高水準であるとしたら »