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2016年9月 8日 (木)

不妊治療保険がついに登場!?

裁判としての妥当性はともかく、人の命や健康に関わるケースが多いだけに医療訴訟と言えばそれはお気の毒だったとしか言いようのない事例も多いものですが、本日まずはこちらも当事者としてはかなりがっかりな結果だったろうことは想像に難くない裁判を紹介してみましょう。

「減数手術」で夫婦が提訴 医院側争う姿勢(2016年9月5日毎日新聞)

 三つ子以上を妊娠した際に子宮内で一部の胎児を減らす「減数手術」の失敗により、不妊治療で妊娠した五つ子を一人も出産できなかったとして、大阪府内の30代の夫婦が、大阪市内で産婦人科医院を運営する医療法人と主治医だった院長に約2300万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。5日に第1回口頭弁論があり、医院側は争う姿勢を示した。
 訴状によると、妻は医院で不妊治療を受け、五つ子を妊娠した。昨年6月、院長の勧めで双子まで減らす手術を行ったが、失敗して四つ子の状態になった。3日後の再手術で2人まで胎児は減ったが、妻は2カ月半後にいずれも流産した。
 妻が流産の前に体調を崩して別のクリニックを受診した際、超音波検査などから妊娠時に2組の一卵性の双子が含まれていた可能性が高いことが分かったという。
 減数手術は多胎妊娠のリスクから母子を守ることが目的で、カリウムの注入などで一部の胎児を減らす。
 一卵性の双子の片方を減らすともう一方も亡くす危険があるとされ、夫婦は「主治医の院長が術前の超音波検査で見落として減らす対象を誤った」と主張。その対象を区別できないまま再手術を行うなどした注意義務違反があるとしている。
 妻は毎日新聞の取材に、「院長から『五つ子は産めない』と言われ、尊い命を減らすことに同意した自責の念は消えない」と語った。今も流産した子供の遺骨を納骨できず、自宅で毎日手を合わせているという。

ルール整備遅れ

 減数手術は母体保護法で定められた一般の中絶と異なり、法律やガイドラインの整備が進んでいない。夫婦の代理人は「排卵誘発剤を使った不妊治療では多胎妊娠が多いとみられ、減数手術の必要性は高い。訴訟で手術のあり方を問いたい」と訴える。
 厚生労働省の生殖補助医療部会は2003年の報告書で、母子の生命健康保護の観点から、多胎妊娠を回避する十分な予防措置を取った上で三つ子以上になった状況を「やむを得ない場合」として容認する見解を示した。
 一方で「性別診断などで減らす胎児の選別を行ってはならない」などの条件を付け、早急なルール作りの必要性も指摘されたが、議論は進んでいない。厚労省母子保健課は「医学界などの検討状況を見極め、必要に応じて検討していく」と説明している。

子供の減少が社会問題化している時代に五人も一度に持てるなら大変良いことのように聞こえるのですが、例えば早産率は胎児一人の場合の10%に対して双子では60%、三つ子では90%と急上昇するそうですし、脳性麻痺の発症率もそれぞれ5倍、16倍と高まるそうですから、産科学会からもなるべく多胎妊娠を避けるべく対策を取るようにと推奨されています。
ただ記事にもあるように減数手術と言うものもそれなりに議論のあるものですから、「訴訟で手術のあり方を問いたい」と言われればまことにごもっともと言うしかないのですが、一方で減数手術のリスクを取らないと言うことは同時に多胎妊娠のリスクも取れないと言うことでもありますから、手術のあり方の行方によっては生殖医療と言う観点においては非常に大きな後退となる可能性もありそうですよね。
昨今話題になっている健康な未婚女性が将来に備えて卵子を凍結保存することに対して、倫理的に問題がないと考える「肯定派」医療機関が2012年の6割から4年間で2割にまで急降下したと言うニュースが報じられていましたが、社会的には非常に需要が高まっているこの種の行為に対して学会にしろ現場医療機関にしろどんどん及び腰になってきているようにも見えるのも、こうしたトラブルも関係しているのかも知れません。
かくも不妊治療と言えば何かと大変なものなのですが、先日国が不妊治療保険を解禁したものの各保険会社が及び腰であると言う当然とも言えるニュースをご紹介したばかりのところ、先日日本初の不妊治療保険が登場したと言うニュースが出ていました。

不妊治療保険、来月2日発売 国内で初(2016年9月6日毎日新聞)

 日本生命保険は5日、不妊治療費の一部を保障する女性向け医療保険「シュシュ」を10月2日に発売すると発表した。不妊治療が必要な女性でも加入可能で、加入2年後から不妊治療費を保障し、1回当たり5万〜10万円の給付金を最大で12回まで支払う。不妊治療費を保障する民間保険は4月に解禁され、国内での発売は初めて。

 日本生命の新商品は、がん、急性心筋梗塞(こうそく)、脳卒中の3大疾病にかかるか死亡した際に一時金300万円を給付。出産時や不妊治療を受けた場合にも所定の給付金が出る。加入対象は16〜40歳の女性で保険期間は10〜20年。毎月の保険料は1万円前後で、契約満了時に加入者は最大200万円の一時金を得る。

 不妊治療費の保障対象は、体外受精と、卵子に精子を直接注入する「顕微授精」。いずれも健康保険の対象外で、治療費は1回約30万〜40万円かかる。公的助成制度で治療1回当たり15万円(初回のみ30万円)が支給されるが、治療回数が増えると患者負担が重くなるため、民間保険の登場が期待されていた

 新商品は、採卵か授精1回につき、6回目までは5万円、12回目までは10万円を支払う。契約者は最大90万円の給付金を受けられる。出産と不妊治療の給付金を受け取った場合、満期一時金から差し引かれるため、契約者は3大疾病や死亡のリスクに備えながら、不妊治療を受ける場合の費用の一部を積み立てる形となる。【中井正裕】

さすがに不妊治療単独で取り扱うのは無謀と判断したのかどうかは判りませんが、保険会社の売り文句にも「3大疾病(がん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中)や死亡の保障に加え、出産時の給付や特定不妊治療の保障、満期まで継続された場合の一時金を組込んだ商品」とあるように、女性向けニーズを満たす総合的な保険商品としての扱いであるように見えます。
不妊治療の給付金を受け取れば満期時の一時金から差し引かれると言うことですから、単純に考えて不妊治療対策としてはあまりお得な気分にはなりそうにありませんが、どうせ生命保険をかけるならこうした付加価値のあるものを選んだ方がお得だと考える需要は一定程度あるのだろうし、今後この種の付加サービスが女性向けの特約として広まってくるのかも知れませんね。
国としてもこうした保険商品を解禁したと言うことは不妊治療に対する支援と言う意味合いがあるはずですが、一方で産まれてくる子供の障害リスクなども含めて考えると特に高齢出産希望者の不妊治療に高いコストをかけることは国にとっては持ち出しだと言う厳しい意見もあり、本音としては少子化対策の一環として手厚く支援しましょうとも言いたくないのではないかと言う考えも出来ます。
その点で学会が医学的な見地や各種リスクから不妊治療のいわばリミッターを決めることは国としては渡りに船なのかも知れずですが、将来技術面で進歩し医学的リスクが解消した場合生命倫理だけを根拠に制限を続けるのも難しいはずで、産めよ増やせよのかけ声をかけている国としてはどこかで全面支援に転じることを余儀なくされるのかも知れないですね。

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コメント

これ自分で積み立てといたほうがお得なのでは?

投稿: | 2016年9月 8日 (木) 08時07分

保険の目的として突然の大きな出費のリスクに備えると言う点があると思いますが、不妊治療の性質上予想外の出費と言うものはなく、一回の金額も自己負担可能な範囲と言う点で保険と言う商品に向かない気もします。

投稿: 管理人nobu | 2016年9月 8日 (木) 11時28分

この保険、20年で40万を支払い、3大疾病死亡時の300万の保証を買うだけものもです。(20年で240万支払い、満期時200万返還)
それ以外の不妊や出産の一時金は、使わなかったらかえってくるはずの200万からの棒引きですので、たんに貯金を引き下ろすだけの話です。

とんでもない詐欺商品だと思います。

投稿: おちゃ | 2016年9月 8日 (木) 20時19分

でも保険ってもうかるもんじゃないでしょ?
そんなもんじゃないの?

投稿: | 2016年9月 8日 (木) 22時27分

>たんに貯金を引き下ろすだけの話です。

保険って名前で貯金すれば税金の控除とかあるから利用するだけの話だろうに
詐欺とか馬鹿じゃない?

投稿: | 2016年9月10日 (土) 13時17分

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