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2016年9月21日 (水)

医師偏在対策に必須の強制力のあり方とその主体

先日の社保審医療部会では医師不足解消のための医師養成数増員をいつまで継続するかと言う議論があり、その前提として医師偏在対策をまず強力に推進すべきだと言う声が上がったことをお伝えしましたが、その具体的な内容についても様々に議論されているようです。

専門医制度、都道府県の権限の法規定検討へ- 厚労省が分科会に論点提示(2016年9月16日CBニュース)

厚生労働省は15日、医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会に対し、医師偏在対策の論点を提示した。新たな専門医制度と医師の地域・診療科の偏在対策を一体的に取り扱い、専門研修プログラムなどに関する都道府県や日本専門医機構(機構)の権限を法律で明確に規定することについて議論を促した。都道府県の医師確保策の検討事項に関しては、医師不足・過剰な地域における医療機関の開設や管理なども論点に含めた。【新井哉】

医師の需給をめぐっては、同分科会が6月に中間とりまとめを公表しており、医師偏在の解消を図るため、専門医の募集定員で地域枠の設定を行うことや、都道府県が策定する医療計画で、医師不足の診療科や地域の医師数の目標値を設定する必要性などを挙げていた。
この日の会合で、厚労省は、医師の偏在対策のとりまとめに向けたスケジュール案と分科会で検討すべき論点を提示。10月から12月にかけて計5回の会合を開き、分科会がとりまとめたものを社会保障審議会医療部会で検討する見通しを示した。

厚労省は、2018年度から始まる新たな専門医制度に関して日本医師会と四病院団体協議会が研修プログラム作成や病院群の設定で都道府県などの関与を求めたことや、全国知事会が都道府県や関係機関、機構の役割や権限を法令などで明確に規定することを要望していたことなどを説明。その上で、委員に対し、「法律に明確に規定することをどう考えるか」といった論点を示した。
都道府県の医師確保対策についても、厚労省は、▽医療計画と地域医療対策の関係▽医師数の指標を定める際の留意点▽医療機関の開設・管理などの関連付け▽地域医療支援センターの強化―などの論点を提示。医学部(地域枠)に関しても、卒業後の地域定着に必要な方策を考えるよう求めた。
厚労省の論点の提案に対し、委員からは、「(地域ごとの専門医の数は)国の方で関与し設定してもらう必要がある」といった意見が出たほか、分科会での議論を深める観点から、機構関係者のヒアリングを求める声も上がった。委員の意見を踏まえ、厚労省は、次回会合で機構の関係者を参考人として招く見通し。

「専攻医の定員、専門医機構や県の権限法制化」を検討(2016年9月16日医療維新)

 厚生労働省の「医師需給分科会」(座長:片峰茂・長崎大学学長)は9月15日に第7回会議を開催、専攻医の地域別・診療科別の定員を設定したり、日本専門医機構や都道府県の専門医の偏在対策に関する役割・権限を法律上、明記するなどの「医師養成過程を通じた医師偏在対策」と、「都道府県における医師確保対策」を今年末にかけて優先的に議論する方針を了承した(資料は、厚労省のホームページ)。

 「医師養成過程を通じた医師偏在対策」では、医学部定員の「地域枠」の卒業生が地域に確実に定着する方策の検討、臨床研修における研修医の募集定員の倍率設定なども検討課題。都道府県における医師確保対策については、医療計画における医師確保の目標を必ず定め、目標達成に実効性のある施策を講じることが課題。そのために医師数の指標を定め、医師の不足あるいは過剰な区域が分かるようにしたり、医師に関する全国的なデータベースを構築する。地域医療支援センターの役割強化なども検討する。

 もっとも、医師偏在対策の一つとして、専攻医の定員などを設定することには、やや賛否が分かれた。臨床研修制度は、医師法で定められた制度であり、国の関与は可能。一方、新専門医制度はそれと異なり、日本専門医機構と各学会が、プロフェッショナルオートノミーとして運営する制度であり、どの程度、国や都道府県が関与できるかという問題が残る。今後の在り方について、まさに日本専門医機構が議論している最中という事情もある。

 「医師需給分科会」は今年6月に、医学部定員を2019年度までは現行の9262人を最低でも維持するほか、医師の偏在対策を今年末に向けて検討することを骨子とした「中間取りまとめ」を了承した(『偏在対策「強力」に、「医師の働き方ビジョン」も策定』を参照)。その中で、「自主性を尊重した対策だけではなく、一定の規制を含めた対策を行っていく観点から、さらに強力な医師偏在対策について議論し、年内の取りまとめを目指す」と明記、「医師の配置に係る対策」(直接的な対策)が計10、「医師の就労環境改善等に関する対策」(間接的な対策)が計4、合計で14の医師偏在対策を検討項目として掲げた。
(略)
 日本医師会副会長の今村聡氏は、「規制的な手法」の取り扱いについて質問。「規制という言葉が独り歩きするのは非常に危険。規制という言葉があまりに広く使われている」と指摘し、まず何らかの対策を実施してそれでも駄目な場合に規制するのか、あるいは最初から規制するのかなど、整理が必要だとした。全日本病協会副会長の神野正博氏も、「医師偏在対策を検討した上で、医師養成数の話になるのだろう」と述べた上で、次のようにコメント。「規制が強ければ医師養成数は少なくて済み、規制が弱ければ医師養成数の増加は必要。ただし、どんな規制なのか、医療法、あるいは健康保険法の規制なのか、あるいはインセンティブを付けるのかなどについて整理が必要」。

 片峰座長は、「規制の在り方についても、議論が必要」と回答。慶應義塾大学商学部教授の権丈善一氏からは、「医師偏在対策については、研究レベルではもう結論が出ている。その方法を規制と呼ぶのかどうかという議論はあまり建設的ではない」との指摘も出た。その上で、権丈氏は、医師偏在が生じた要因にも触れ、バブル経済の崩壊以降、不安定になった日本の社会において、日本のエリート層の子供たちが医学部を目指すようになったことが挙げられるとした。都市部の進学校の高学生が地方大学の医学部に行き、卒業後はまた都市部に戻ってくる図式があり、その結果、地方の高校生の地元医学部への進学が難しくなっていることが、地方の医師不足を招いているという論理だ。

 そのほか、今村氏は、「フリーランス医師への対応」についても質問。厚労省医政局医事課は、同課のみで議論が完結する問題ではなく、他部署と調整中であり、報告すべき事項があれば報告すると答えた。
(略)

偏在対策と言えば聞こえはいいですが要するに以前から言われているところの医師強制配置そのものであり、医師の意に反してその勤務先を規制しようと言うのですから反発も出そうなのですが、偏在対策における強制力をどう発揮するのかと言うことも問題で与党内で発足した研究会では大学医局の権限を復活させればいいと言う声が数多く出たと言いますから、先祖返りのような話ですよね。
注目されるところとして一つには記事にもある新専門医制度との絡みで、専門医の取得、維持の方法に関して関与することで結果的に医師偏在対策になるのではないかと言う意見があることですが、これも新専門医制度は独立した新組織が手がけることであって、国を始めとする外部の公権力が表立って介入したのでは独立性が保てないと言う反対意見も根強いようです。
そうなると唯一公的に関与可能なものが臨床研修システムと言うことになりますが、さすがに初期研修医をどうこうするのも実用性が低いとは言え、例えば研修の拘束期間を5年なり10年なりに設定しておけばその間は定数配分等々の形で公的に介入しやすくはなる理屈ですが、他方でやはり地方では若手医師よりは専門医をと望む声が根強いようですよね。

どのように行うのかと言うこともさることながら、どんな目標を目指して誰がそれを行うのかと言うことも問題で、具体的に偏在していない理想的な医師分布と言うものはどのようなものなのかと言うビジョンを示してもらわないことには議論の叩き台にもなりませんが、こうした目標設定の部分が一番異論が多そうなところでもあります。
首都圏に関して言うだけでも東京は日本一の医師数を誇ることに対して、千葉や埼玉は医師不足が顕著ですが、では東京からこれら医師不足の周辺県に医師を移動させるのがいいのかと言えば、いざと言う時に東京都内の病院に搬送することも出来なくなったと言うのであればかえって医療面での弊害の方が大きそうにも思えます。
地方などは基本的に一県一大学ですが、自分達の地元で養成した医師達を何故隣の県に送らなければならないのかと感情的反発も出ることは必至でしょうし、少なくとも医師を引き抜かれる側にすれば今まで以上に医療に悪い影響が出そうなのも確かですから、かえって状況を悪くすることにどの程度納得が得られるのかは今後の国民への説明次第なのかも知れません。
いずれにしてもこんなことは誰にせよ話を進めた人間は後々まで恨まれたり文句を言われるだろうことは容易に想像出来ることで、それだけにまずは国に定数なりを決めて欲しいと言うのが関係者一同の本音でしょうが、その結果妙な定数なり目標値なりが設定されてしまえば皆が困ることにはなりそうですよね。

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コメント

言い出しっぺの偉い先生が真っ先に田舎に行けば?

投稿: | 2016年9月21日 (水) 08時43分

いつも気になりますが、具体的に、どこに医者が余っているのでしょうかね?

投稿: クマ | 2016年9月21日 (水) 09時55分

と、徳島とか…?

投稿: | 2016年9月21日 (水) 10時08分

地域差の評価は難しいところですが、施設間で見ると明らかに勤務強度の格差が見られる一方で、必ずしも仕事が少なく楽な施設に行きたがる者が多いわけでもないと言う点も難しいところですね。
理想的には地域医療構想推進の中で病院間でリソースと業務量の再配分が出来ればいいのかも知れませんが、医師らスタッフにも個人差がある以上全ての施設で同じような業務を求めるのは無理でしょう。

投稿: 管理人nobu | 2016年9月21日 (水) 13時24分

>医師「確保」対策
相変わらずの言葉選びのセンスですね、行政。
いっそ『捕縛』とか『お縄』とか使ったら良いのに(笑)

投稿: kawakawa | 2016年9月21日 (水) 15時21分

人材確保って奴隷用語?

投稿: | 2016年9月21日 (水) 15時40分

ちゃんと給料もらってるくせに何言ってるんだ

投稿: | 2016年9月21日 (水) 22時24分

>ちゃんと給料もらってるくせに
12Cの農奴も、ちゃんと死なない程度に食料を貰ってたけどな

投稿: | 2016年9月23日 (金) 06時37分

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