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2016年9月 6日 (火)

本来残業時間には上限があるのですが

朝一番早いのはパン屋のおじさんと昔から決まっているそうですが、朝早いだけではなく夜も遅かったと言う事実が発覚したそうです。

残業180時間「事故死原因」遺族がパン店提訴へ(2016年9月4日神戸新聞)

 兵庫県明石市の男性=当時(28)=が勤務後に車で帰宅中、居眠りで交通事故死したのは、長時間労働を放置し安全配慮義務を怠ったためだとして、家族が近く、勤務先のパン製造販売店の経営会社「NAGASAWA」(姫路市)などに対し、約1億1700万円の損害賠償を求めて神戸地裁姫路支部に提訴する。
 NAGASAWAは兵庫県内を中心にパン製造販売店「ヤキタテイ」を展開している。

 訴状によると、男性は2015年2月2日深夜、勤務を終えて単身赴任先の宝塚市から車で帰宅中、稲美町内で居眠りをしてガードレールに衝突する事故を起こし、死亡した。
 男性は、宝塚市内の店舗でパンの製造や材料の発注、売上管理など幅広く担当し、タイムカード上の就業時間は1日当たり11~16時間。亡くなる前の1年間の時間外労働は毎月130時間を超え、最も多い月で180時間に達し、疲労の蓄積が顕著だったとする。
 店長に次ぐ役割を担い、売り上げのノルマにも苦悩。「忙しすぎる」「疲れた」と周囲に漏らし、約70キロあった体重は事故直前には53キロだったという。

 家族側は「一家の大黒柱を失い、残された幼い娘にとっても精神的な動揺は極めて甚大」とし、「会社は勤務状況を把握し、社員を守る義務がある」と訴える。妻(26)は「娘に会うため赴任先から帰宅中だった。命と引き換えにしていい仕事なんてない」と話す。
 会社側は「タイムカード上の時間全てが労働時間とは言えず、長時間労働を強制したこともない。事故との因果関係はない」としている。(宮本万里子)

さすがにこのご時世で「タイムカード上の時間全てが労働時間とは言えず、長時間労働を強制したこともない」は通用しない言い訳と言うのでしょうか、客商売としては世間的な印象が一気に悪化しそうなコメントですけれども、パン屋と言うどちらかと言えばのんびりしたイメージのある商売においてもこうした過酷な労働が行われている実態に驚いた人も少なくないのではないでしょうか。
先日は安倍総理自らが働き方改革実現推進室開所式で「『モーレツ社員』の考え方が否定される日本にしていきたい」「長時間労働を自慢する社会を変えていく」と訓示したと報じられていて、ごもっともなのですが世間の多くの労働者が自ら望んでモーレツ社員をやっていると思っているのか、感覚がずれているのではないかと言う批判も少なからずあったようです。
その働き方改革なる政策に関して、先日加藤担当相が残業時間の上限制を導入したいと発言したことが話題になっていましたが、冒頭の記事のように現状でも別に無制限に残業が認められているわけでもないにも関わらず無視する事案が頻発している状況を考えると、雇用者側にどのようにルールを遵守させるかが問題なのは誰にでも判りますよね。

加藤働き方改革相 残業時間の上限規制導入検討(2016年8月28日毎日新聞)

 加藤勝信働き方改革担当相は28日のNHK番組で、9月にも発足する「働き方改革実現会議」(座長・安倍晋三首相)で、長時間労働を是正するため残業時間の上限規制導入を検討する考えを示した。

 現行の労働基準法は労使協定を結べば、法定時間を超える残業を認めている。これについて加藤氏は、「(労働時間の)上限は実質的にないような状況だ」と指摘。そのうえで「時間外の労働規制のあり方について検討していきたい。各業種で違いがあるが来年3月までには方向性を出したい」と語った。

 また、正社員と非正規労働者の賃金差を縮める「同一労働同一賃金」の実現について、「欧州では仕事の中身だけでなく、キャリアなどを加味して賃金差が合理的か判断している。どのような賃金差が合理的ではないのかコンセンサスを図っていくことが大事だ」と指摘した。【田中裕之】

小泉政権時代に非資格労働者にも非正規雇用を拡大した弊害が出ている云々の指摘は今さらな話で、現状では一回りして非正規雇用拡大による購買力低下が社会問題化している時代ですからいずれ制度的見直しは必須になりそうなのですが、渡り職人などの歴史を見ても日本でも手に職のある人間は非正規雇用で高い給料を取っていたのですから、やはり資格職と非資格職では事情が違うのは事実なのでしょうね。
医療の世界などはまさにその資格職の世界であり、正規雇用のスタッフよりも非正規雇用のスタッフの方が時給が高いのがむしろ当たり前なのが逆差別だと問題視されかねない勢いですが、今回の残業時間上限制ではその正規雇用スタッフの労働環境改善には結びつきそうな話ではあるものの、その実効性がどうなのかと言うことにはやはり疑問符がつきます。
先日以来各地で労基署の認可もないまま医師に宿直をさせると言う、労基法違反の状態が長年続いていたことが報じられていましたが、明確な法律違反であることを知っていながら平然と行っており、発覚したところで「早急な解決は難しい(千葉県医療局)」「許可がないのは好ましい状況ではないが、医療サービスの質は低下させない(埼玉県病院局)」で済むと言うのでは何の為の法律かでしょう。
国がどの程度本気で労働改革に取り組むつもりなのかは今後の議論の進み方を見ていきながら判断していくことになりますが、雇用者側から見て低賃金労働者を死ぬまで使い倒すのが一番人件費が安上がりであると言うことを考えると、ルールに基づいて実効性のある規制を行わなければ問題の自然な解消は難しいように思えます。

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コメント

イヤなら辞めろ(以下略

投稿: | 2016年9月 6日 (火) 07時50分

残念ながら当院の残業時間は制限なしのようです。

投稿: ぽん太 | 2016年9月 6日 (火) 09時09分

厳密な労基法通りの勤務を望まない医師も一定数いるように感じますが、この場合は社畜と言うよりもワーカホリックと言う表現の方が妥当なのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2016年9月 6日 (火) 11時55分

↑日本人民最大の敵、でよろしいかとw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年9月 6日 (火) 15時15分

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