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2016年9月20日 (火)

医師数はいつまで増やし続けるべきなのか

先日の社保審医療部会でこんな興味深いやり取りがあったと報じられています。

医師増やすべき? 医療部会で委員が応酬(2016年9月15日CBニュース)

 医師の養成数を増やすべきか否か―。14日に開催された社会保障審議会医療部会の会合で、その在り方をめぐって委員が応酬する場面があった。将来の医学部定員の在り方は今後、医師の診療科や勤務地の偏在対策を強化させた上で検討される予定だが、意見の相違が表面化したことから、医療界での早期の意見集約が求められそうだ。【佐藤貴彦】

 医師不足が深刻な地域があるため、国は医学部定員を増やすさまざまな施策を講じてきた。ただ、施策はいずれも期間が限定され、約300人分の増員を認める措置が来年度に終了することから、厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」の下にある分科会が、今後の医学部定員の在り方を議論。今年6月に中間取りまとめを行い、約300人分の増員を当面延長するといった方針を示した。
 一方、都道府県ごとに毎年10人まで定員を増やすことを認める施策については、増員の要望があった場合に「慎重に精査」するとしたほか、2020年度以降の定員については、今後、医師の偏在対策を講じて効果を検証した上で結論を得ることとした。
 同分科会は、14項目の偏在対策について検討し、年末にも取りまとめを行う。14日の医療部会の会合で厚労省は、同部会でも偏在対策について、来年1月ごろまで議論することになると説明した。

 これを受けて委員から、医師の養成数などをめぐってさまざまな意見が出た。全日本病院協会の西澤寛俊会長は、養成数をめぐり「医療界においては両論がある」と指摘。その上で、病院で働く医師の労働時間が長いという問題があり、「私たちが減らそうと頑張っても、医師が足りないから減らせない」と述べ、養成数を増やすべきだと主張した。
 また、日本医療法人協会の加納繁照会長も、急性期病院などで働く医師の勤務時間を短くする必要性を指摘した。
 これに対し、日本医師会の中川俊男副会長は、養成数を増やした場合に「医師が頑張って医療をやっていくインセンティブになるような人件費が確保できるか」と問題提起。「数だけ増やせばいくらでも楽になる。しかし、それは現実的ではない」と断じた。その上で、「偏在対策が、すべてに近いくらい大事だ」と主張した。
 日本精神科病院協会の山崎學会長も、偏在対策が必要だと指摘。「病院の勤務医師が足りない。開業医は、私の周りは飽和状態だ」と述べた上で、「自由開業制を含めて、どうするかという検証が喫緊の課題だ」と訴えた。

医師養成数を増やすべきか否かと言われても、すでに医師養成数は増えているしまだ増えることになっていると言うしかないのですが、要するに望ましい医師の数とはどれくらいであるかと言う古くからある議論の延長線上にある話と考えていいのでしょう、国に呼ばれる方々の中でも意見の相違が大きいと言うことですね。
増やした定員を現状で削減すると言う空気にはないし、当面は現状維持で続けていくしかないのですが、先行する歯学部や法科大学院の状況を見てもいずれ養成数が過剰になってくる未来絵図は見えているわけですから、それではどのタイミングで減らして行くべきかと言う基準がなければ困る理屈です。
この点で記事にもある通り業界内外に様々な意見があり、外部における代表的な意見としては日本全国どこでも同じ医療を受けられるくらい医師を増やすべきだと言う主張に対して、医師は存在したいが医療需要を喚起するため増やしすぎると医療費増につながると言う根強い反対意見もあります。
この辺りは国民皆保険制度では日本全国どこでも受けられる医療は同じ内容であると言う建前になっていることがそもそも問題であり、近隣にろくな医療機関のない地方や僻地では専門機関の充実した都市部よりも保険料や支払いを安くすべきだと言う考えもありそうなのですが、医師一人の招致コストから考えると実は僻地の方が都市部より何倍も高いと言う現実もあり厄介ですよね。

業界内部の立場としては雇用する側とされる側とで立場に違いもあり、当然ながら雇用する側としてはより安くより多くの医師を抱えたいと言う点で相場が値崩れするほど医師数が増えて欲しいのでしょうが、昨今多いフリーター医師などの立場に立って見ればこうした状況になれば生活そのものが成り立たなくなる可能性もあるわけです。
勤務医にしても激務を何とかするために少しでも医師数を増やしてくれと言う立場もあれば、自分の取り分が減るなら増やして欲しくはないと言う立場もありで一定しませんが、今回興味深いのは総数よりも偏在対策を優先すべきだと言う総論が示されていること、特に記事の最後にあるように不足しているのは病院勤務医であり開業医はむしろ飽和状態であると言う現状認識が示されている点でしょう。
日本では開業の自由や標榜診療科の自由が担保されていて、特に勤務医としての激務に耐えられなくなった先生方にとっての逃散先として開業が機能してきた側面もありますが、今後都道府県が主導して地域医療の大枠を決めていく中でこの開業医と言うものをどう扱うべきなのかと言うことは非常に注目されますよね。
この点では未だに開業医と強いつながりを持つ医師会が主導権を発揮出来る可能性もあると言えそうなんですが、医師会が地域の開業医総枠を決めるなどと言い出したところで「それじゃ医師会入りませんから」と言う先生が多いのが今の時代で、本当の競争状態になったとき誰が生き残るかを決めるにあたって、開業医の先生も相応に頑張っていかなければならない時代がやってくるのかも知れません。

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コメント

給料もさることながらいずれ一斉に首切りが始まりそうな気が。
特に給料だけ高くて何もできない大ベテランって危なそうです。

投稿: ぽん太 | 2016年9月20日 (火) 08時43分

フリーの友人曰く
「医師数を増やせばいいと言ってる人は、一回フリーになってみればいい。替わりがきくという状況が、いかに不安定で辛いかが分かる」
とのこと。確かにそうだなと思います。

投稿: ふぉれすと | 2016年9月20日 (火) 10時49分

歯科医院過剰でサービスが良くなったと評価する声もある一方で、高い治療を受けることになったと言う声もあり、基本的に保険診療である医科がどうなるものか注目しています。

投稿: 管理人nobu | 2016年9月20日 (火) 11時08分

開業医だと楽に食えて
勤務医だと激務でないと成り立たないってんなら
保険の制度が歪んでるってことだよね

投稿: | 2016年9月20日 (火) 12時10分

exactly

投稿: | 2016年9月20日 (火) 12時38分

現時点、より高密度、高度医療、高リスク、高ストレスな長時間労働を強いられる、全身管理系科目と、より相対的低負荷科目、いわゆるマイナー科目が、大学では、横並び、全く給与変わらず。ならば、医師を増員したところで、救急科、小児、産婦人科、外科系諸々が増えるわけがない。
開業医と勤務医給与格差はまた、別問題。つまりは、修行に時間がかかる寿司職人になり、銀座久兵衛で、雇われるより、マクドナルドチェーンの社長になるほうが、薄利多売で、おいしいから、最終的キャリアポイントになるしかないのだ。次いで、開業医の二世、三世は、自身のスキルより、血の継承にて、経営者となり、平民出身はスキルがあっても永遠に勝てない。

医師を増員するだけでは、法科学院、歯科医師の二の舞になるだけ。
それだけは、確定路線。

投稿: Striker | 2016年9月20日 (火) 21時47分

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