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2016年9月29日 (木)

そうしたものにハマりやすい方々への対処法

先日は週刊現代が「ダマされるな! 医者に出されても飲み続けてはいけない薬」なる記事を掲載し、ごく当たり前に日常臨床に使用されている薬を決して飲むなとネガキャンを張っていたことを紹介しましたが、この記事に関して臨床現場では影響がかなり大きかったようです。

医師3587人に聞く「週刊誌報道による日常診療への影響」 週刊誌のネガティブキャンペーンをどう思う?(2016年9月27日日経メディカル)

 今年上半期、一部週刊誌が「医者に言われても受けてはいけない手術・飲み続けてはいけない薬」といった大きなネガティブキャンペーンを張った。今回の「医師1000人に聞きました」では、そのキャンペーンで日常診療にどのような影響があったかを聞いた。日経メディカルOnlineの会員医師3587人が回答した(アンケート期間:8月19日~29日)。

問1●一部週刊誌で「医者に言われても受けてはいけない手術・飲み続けてはいけない薬」といったキャンペーンが続き、話題となっています。先生の診療では、この一連の報道による影響がありますか

 まず、日常診療でこのキャンペーンによる影響があるかを尋ねたところ、「大いにある」が7.2%(254人)、「若干はある」が29.3%(1037人)と、計3分の1以上(36.4%)を占めた(右図)。その一方、「ない」との回答も42.5%(1506人)に上り、影響があるとした回答の合計と拮抗した。「どちらともいえない」は21.0%(745人)だった。なお、百分率は「現在、診療はしていない」と回答した45人を除外して算出した。
 次に、具体的にどのような影響があったか、自由記述方式で尋ねた。書き込まれた内容は多岐にわたり一般化は難しいが、「説明すれば患者は納得し、実際に薬を中断した患者は少なかったが、そのためにかなりの時間を要し、ただでさえ多忙な日常診療がさらに圧迫された」というのが多数意見と感じた。
 実際に自己判断で薬をやめた患者がいて検査値が悪化したとか、手術を勧めても拒否されたとの回答は、数は少ないもののいくつか寄せられた。これに対して、「自己判断で患者が降圧薬を中止したが、その後も血圧は安定していて、本当に薬は不要だったのかもしれないケースを経験した」との回答も1件あった。
 このような自己判断による休薬に対して、「最後は患者が自分で判断すること」と半ば突き放す意見が散見されたが、「自分に相談してくれず、偏った情報から自己判断して治療を放棄してしまった患者がいるはず」と、去ってしまった患者の存在を心配する指摘も多かった。
(略)
 最後に、今回のキャンペーンに対して、どのような印象を持っているかを聞いた。偏った情報を一方的に流す週刊誌に対する憤りが圧倒的だったが、アンジオテンシン2受容体拮抗薬を使った大規模臨床試験で指摘された一連の不正や腹腔鏡手術での事故などを例に、医療側としても襟を正すところがあり、反面教師として捉えるべきという意見も多かった。また、今回の騒動をきっかけに、患者が自分の治療にもっと関心を持ってくれるとありがたいという意見もあった。
(略)

個別の経験や意見に関しては元記事を参照いただければと思うのですが、一読した印象ではもちろん迷惑、ケシカランと言ったネガティブな反応も多いものの、説明しても判らないなら仕方ない、最終的には自己責任であると言うコメントも決して少なくないようだと言う印象でしょうか。
医療とは必ずしも受けなければならないものではなく、本人希望を前提に利用される任意のサービスと考えれば、むしろ本人が希望してもいないものを無理に説得し「正しい道」に導こうとする考えこそ傲慢だとも言えるかも知れませんが、今の時代ある程度は説得しましたと言う事実を残しておかなければ後でトラブルに巻き込まれるかも知れませんし、それが故にヒートアップしてしまった先生方も多かったのでしょう。
他方ではこうした記事で容易に扇動され、専門家の意見よりも素人の見解を優先するような方々は言ってみればハイリスクであるわけで、定期的にこうした記事を出していただくことでむしろ選別となっていいのではないかと言う考え方もあるようですが、先日少し興味深い記事がアメリカから発信されていたことも併せて紹介しておきましょう。

予防接種拒否の親「放置」医師2倍に AAPの学会員向け調査で判明(2016年9月26日米国学会短信)

 米国小児科学会(AAP)が例年行っている調査で子供への予防接種を遅らせたり、接種を拒否したりする親が増えていることが分かった。一方、予防接種を拒否する保護者を放置すると答えた小児科医の割合も前回調査から約2倍に増えているとの結果も示されている。同研究は「ワクチン接種の遅れ、拒否、および患者放置:小児科医への調査(Vaccine Delays, Refusals, and Patient Dismissals: A Survey of Pediatricians)」というタイトルで、Pediatrics誌の9月号(8月29日オンライン版公開)に掲載。

 研究グループは、2006年と2013年にAAPが実施した学会員の定期調査のデータを比較。この調査は、ランダムに抽出した会員に調査書を送付し、日常診療でワクチン接種を行っている小児科医(2006年は計629人、2013年は計627人)から回答を得た。

 調査の結果、「保護者による子供の予防接種を拒否する場面を経験したことがある」と回答した割合は2006年の75%から2013年には87%に増加していた。

 回答した小児科医らは、保護者が子供の予防接種を遅らせる理由と、予防接種を拒否する理由は異なると認識していることも分かった。2013年の調査では、保護者が予防接種を遅らせるのは子供が接種を嫌がることや免疫系への負担への懸念が多いと考えているのに対し、予防接種を拒否する保護者は主にワクチンを不要と考えていることが理由だろうと回答。「“保護者が予防接種は不要と判断している”との理由で接種を拒否している」と考える割合は、2006年から2013年の間に10%増加していた。ただし、予防接種拒否の主な理由の6項目のうち、自閉症やチメロサールへの懸念を含む3項目を選んだ割合は2006年の74%から13年には64%と有意に低下していた。
(略)

日本のみならずアメリカでもこうした傾向があると言うことは興味深いことですが、こちらでも拒否する相手に無理強いすることはないと回答している医師が次第に増えてきていると言うのは近年の日本におけるものと同様の傾向と言え、医学的な妥当性とはまた別に自己決定権と言うものが尊重される時代になっていると言うことでしょうか。
臨床現場ではワクチンを思想信条として拒否していると言う親が一定数存在していると認識されていて、そうした方々に対して説得等の余計な労力を払うことが次第に減ってきているとも言えますが、これに関連して興味深いのが2年ほど前に出ていた同じくAAPからの報告で、新生児へのビタミンK投与を拒否した親は拒否しなかった親の約15倍もの高確率でワクチン接種も拒否したそうです。
このビタミンKを巡っては日本でも数年前に大きな騒動になったことは記憶に新しいところで、これまた専門家の意見よりも素人の見解を優先する方々に発生した事例と言え、もちろん最終的には自己責任であると言う言い方は出来るのですが、投薬拒否とは違ってビタミンKにせよワクチンにせよ不利益を被るのは拒否した親ではなく、何の罪もない子供である点が少しばかり引っかかりますよね。

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コメント

ほっとけや

投稿: | 2016年9月29日 (木) 08時02分

十分な説明と同意を得た上での診療が正しいとされている以上、同意が得られない場合の対応についても考慮しておく必要はあると言うことでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2016年9月29日 (木) 11時29分

医療者の方も「○○してはいけない」に対抗して「○○しなかったらこうなる」ってリストを作成して患者に同意して貰うってのはどうでしょう?
どうせ、自分で考えず「週刊誌に書いてある」って拒否するような相手なら同じようにFUDで対抗するのが楽そうです。
ただ、週刊誌がやると「情報を提供した」なのに医療者がやると「脅された」ってなる危険はありますが。

投稿: | 2016年9月29日 (木) 11時53分

うーん
1990年の北見赤十字病院の肝硬変・肝がん患者さんの訴訟の件・・・。
同意が得られないなら得られるまで説得しろ、できないのは医師が悪い!・・・という司法判断に見えるのは私だけでしょうか?

投稿: | 2016年9月29日 (木) 12時32分

 医師に医療パターナリスムを放棄させておいて、国家権力も人権を守ることについてパタ-ナリズムを放棄するとかなりやばいことになるんですが、それをどうこうするのは国民が選挙で選んだ先生方です。 ところがこれがどうにもならんと、官僚も匙を投げた様子が見て取れる。
 Skyteam先生とPooh先生がツイートした記事 https://dot.asahi.com/aera/2016092700244.html
 
 「官僚も国民も壊れてしまってからできることをするつもり」のように見えるのは、終戦直前の日本にかさなってみえますね。あれほど酷いことにはならないだろう、と嵩を括っているようにも。
   

投稿: | 2016年9月29日 (木) 16時11分

日本の国民性として一度壊した方が結果的にいいという可能性も否定できないのでは?

投稿: | 2016年9月29日 (木) 16時37分

同一条件でやりなおすことができないことについて 
 「可能性が否定できない」は、無意味。
なんか言ったつもりになって、 安心したいだけでしょ。

破綻する前提で、それまでタカっておこうという輩がうじゃうじゃいるし(東京都w)、
破綻したらしたで、牛○君ばりに嵌めて掠め取る仕込みを始める奴もいる。TPPなんて最たるものなのだがなぁ。

おバカは手をこまねいてみているばかり。

投稿: | 2016年10月 1日 (土) 11時25分

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